087 激突 カニング対モンテマニー
カニング公爵は、物資の流通を止められて弱り切ったモンテマニー公爵の領地に攻め入るように軍隊に指示した。
カニング公爵領の大将軍 千の理岩は、部下の将軍4人ともに、カニング公爵へのあいさつをしていた。
大将軍 千の理岩
「カニング公爵様の偉大さを、モンテマニー公爵領の愚民どもに思い知らせてやりますぞ。」
カニング公爵
「あのハ、いやいや、お頭が寂しく、五段腹の、いやいや、ゆったりとした服装がお似合いのモンテマニー公爵に、正しさとは何か?を教えてやってくれ!」
大将軍 千の理岩
「ご期待くださいませ。」
大将軍 千の理岩は、カニング公爵に一礼した後で4人の将軍の方に振り返った。
大将軍 千の理岩
「出兵。」
カニング公爵は、満足そうに軍隊が出兵する様子を見送ったのだった。
◇
モンテマニー公爵領が見えてきた。
大将軍 千の理岩
「もう一度、言っておくぞ。
1つ目 モンテマニー公爵領の民たちには指1本触れるな。 略奪もダメだ。
2つ目 モンテマニー公爵が任命した【監察官するな】※と仲間たちの姿が見えたら、すぐに退却する。
3つ目 カニング公爵の領内の奥まで、モンテマニー公爵領の軍隊を入れたら、すぐに降伏する。
いいな。」
将軍A、B、C、D
「はい」x4
領内に入ると、モンテマニー公爵の軍隊が待ち構えていた。
大将軍 千の理岩
「【監察官するな】※と仲間たちの姿を探せ!」
◇
モンテマニー公爵領の軍隊の奥で。
メクバール執事
「公爵様、良い知らせです。
敵軍の将軍は、大将軍 千の理岩です。」
モンテマニー公爵
「千里眼を持って、先の未来を見通すというあの理岩か?」
メクバール執事
「おっしゃる通りです。
公爵様、もしかしたら、一瞬で勝負がつくかもしれません。
いえ、着いたことにしてくれるでしょう。
そのためにも、ルナ様が【モンテマニーの紋章】を天高くかざして頂く必要があります。」
ルナ
「どういうことですか?」
メクバール執事
「1つ 兵たちの不安を取り除くため。
2つ ルナ様たちがいることを敵に知らせるため。
3つ 大将軍 千の理岩は、ルナ様を知っている可能性が高いからです。
つまり、退却するための口実にしてくれるはずです。」
ルナ
「そんなに上手く行くのですか?」
青兵衛
「商売や戦いは、引き際が大事です。
賢い者ほど、早く引いてくれます。
ただ笑えることに、
「引き際を間違ったな!」とか
「引き際をわきまえろ!」とか言う
賢いつもりのバカほど、すでに負けていることに気付かずに すっからかん になるまで続けるのです。」
黄庵
「ああ、分かります。
博打がやめられないひとや、自分が正しいと思っている人ほど、取り返しがつかないところまで続けますね。 仕方ないから荒療治で行きましたけれど。」
紅丸
「荒療治とは、しばらく剣を持つ気になれないくらいまで稽古をさせることか?」
黄庵
「紅丸、世の中には知らない方が良いことがあるのです。 分かりますね。」
青兵衛
「紅丸、ちょっとこちらへ。」
青兵衛が紅丸を部屋の隅に招いて、小声で耳打ちしている。
紅丸
「そ、そんなことが。 そう言えば、あの博打がやめられない若者や口が悪い子供を見なくなった。」
黄庵
「紅丸、もう一度、教えてあげましょう。
世の中には、」
紅丸
「知らない方が良いことがあります。」
黄庵
「その通りです。 青兵衛も良いですね。」
青兵衛
「はい、大丈夫です。」
ルナ こころの声
『関わらない方が良さそうだ。』
ルナ
「では、ボクたちがいつも通り、【モンテマニーの紋章】を掲げて、名乗りをします。
じゃあ、みんな、頼むよ。」
紅丸、黄庵、青兵衛
「はい」x3
◇
ボクたちが敵軍の前に行って、【モンテマニーの紋章】を掲げて名乗りを済ませたら、敵軍はあっさりと引いてくれた。
しかし、モンテマニー公爵の軍隊は止まらなかった。
メクバール執事
「深追いする必要はありません。 追い返したら良いだけです。」
軍人たち
「二度と攻めこもうという気が起きないように、追撃だ~!」
モンテマニー公爵
「とまれ、止まるんだ。 カニング公爵の領地に入ってはいかん。」
軍人たち
「心配要りません。 我々は負けませんから。」
ルナ
「行ってしまいましたね。」
黄庵
「群集心理というやつね。」
紅丸
「ルナ様、追いかけますか?」
青兵衛
「今はダメでも、未来のお客様になるかもしれません。
追いかけて、略奪や暴行をしないようにだけでも抑えましょう。」
モンテマニー公爵
「仕方ない。 行くぞ、メクバール。」
ルナ
「ボクたちも乗り掛かった舟だから、あきらめて行こうか?」
◇
モンテマニー公爵の軍隊がカニング公爵の領地の奥まで十分に踏み込んだところで、カニング公爵の軍はあっさりと降伏してしまった。
メクバール執事
「こんな手を使うとは、さすがは千里眼の大将軍 千の理岩ですね。」
モンテマニー公爵
「いや、あきらめるのはまだ早いぞ。 カニング公爵を捕まえて、傘下に入れることにすれば、上納金を取るだけの関係でいられるはずだ。」
モンテマニー公爵は手勢を引き連れて、カニング公爵の玉座へ向かった。
しかし、もぬけの殻だった。
モンテマニー公爵
「なんというずる賢い奴だ。 好き勝手やった挙句に負債をひとに押し付けて逃げ去るとは・・・」
ルナ
「青兵衛、どういうことかな。」
青兵衛
「経営が傾いた店主が従業員に給料も払わずにお金を持って夜逃げした、という感じですね。」
ルナ
「あー、だから、公爵さまは悔しがっているんだね。」
広場では、大将軍 千の理岩を公開処刑する準備が整えられていた。
今回の戦争責任を負うべき、カニング公爵や奥方の猫美様は側近と共に逃げた後だった。
ただし、カニング公爵と奥方の猫美様は別々の方角へ逃げたとの目撃情報があった。
150年後、カニング公爵と奥方の猫美様の子孫たちは再会して、パーティを組んでいた。
子孫たちは、カンゼン、ジュエルという名前だった。
しかし、それは、別のお話・・・
☆ みんなの安全を守ってきた「神の代行者」、パーティを追い出されたから、自分の安全を優先します。
◇
メクバール執事
「残念ながら、敵国の責任者を処刑しなければ兵たちのおさまりがつきませんな。」
モンテマニー公爵
「仕方ない。 だが、死なせるものはひとりで良い。 苦しめずにひと思いに終わらせてやりたい。
紅丸殿、頼めるか?」
ルナ
「紅丸に、つらい役目を頼まないで。」
紅丸
「いえ、ひと思いに首を落とせるものなど、なかなかいません。
敵軍の大将軍とは言え、民に被害を出さないように軍隊を御した腕前は見事です。
それに敬意をはらってやりましょう。」
ルナ
「ありがとう。じゃあ、お願いするね。」
処刑場に紅丸が現れた。
紅丸
「大将軍 千の理岩殿、今回の首切りを受け持つことになった紅丸と申します。
なにか聞きたいことはありますか?」
大将軍 千の理岩
「おお、モンテマニー公爵が任命した【監察官するな】※の仲間の方ですな。 お噂は聞いております。」
紅丸
「それは、光栄です。 それと、ルナ様の名前は聞き慣れない御様子ですが、月の夜と書いて、月夜という意味です。」
大将軍 千の理岩
「そうでしたか? 今夜の月夜のようにお綺麗な方なのでしょうね。」
ルナ
「いや、それほどでも。 でも、ほめられるとうれしくなりますね。」
大将軍 千の理岩
「月夜様、ひとつお願いできますか?」
ルナ
「ボクに出来ることでしたら。」
大将軍 千の理岩
「月夜様がわたしの娘の理香に会うことがございましたら、どうかご慈悲をお願いします。
手先が器用で賢い娘です。」
ルナ
「理香さんですね。 分かりました。」
大将軍 千の理岩
「ありがとうございます。 月夜様。
紅丸様、お待たせした。
紅丸様のような優れた戦士に、あの世へ送られるとは地獄で閻魔大王様に自慢できますぞ。」
紅丸
「おさらば。」
斬!
紅丸は一瞬で首を切り落とした。
処刑を見守る群衆の中で、小さくつぶやいた声があった。
理香
「お父様。」
◇
処刑を終えての帰り道に、黄庵が星空を見上げて考え事をしているようだった。
黄庵 小声
「わたしの弟子に迎えなさいということですか?」
聞こえるか聞こえないかギリギリの小さい声だったので、ボクは聞こえないふりをすることにした。
つづく
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