070 輝け! モンテマニーの紋章
ボクたちは、宿泊先の旅館の女将の娘さんに案内されて、観光を楽しもうとしていた。
町娘
「山風山と言ったら、渡日橋を歩かないとね。」
ボクたちは長い橋を渡ろうとしていた。
町娘
「では、トイレ休憩を済ませましょう。 そして、飲料水も用意しましょう。 渡日橋の長さを甘く見たらダメですよ。」
ボクたちは言われた通りにした。
買い物のお金は、青兵衛が出してくれた。 町娘さんの分も買ってくるなんて、気が利くなあと思った。
町娘
「ありがとうございます。うれしいですわ。」
ボクたちは、橋の真ん中くらいまで歩いたが疲れてきてしまった。
町娘
「少し休みましょうか? お疲れでしょう。」
ルナ
「よく分かったね。 その通りだよ。」
町娘
「この橋を渡った先は、ワイダー公爵様の領地です。 【ギルドプレート製造工場】で働くために来る人は多いのです。 最初のうちは、熱心に働く人たちで良い印象だったのですが・・・」
紅丸
「なにかあったのか?」
町娘
「あったと言うよりは、無くなったというか減ったと言うべきでしょうか? 中立の騎士様と良太郎様が指揮されていたころは、多くの仕事が来ていて、昼も夜も働くひとで工場は儲かっていました。 しかし、今は、仕事が減って、昼の3時ごろまでしか動いていません。 それからは、わたしたちに迫ってくる男性が増えたのです。 昔は、色街のお姉さま方のところに通っていたようなのですが。」
青兵衛
「色街に通う金が無くなったということですね。」
黄庵
「小人閑居して不善を為す
品性の劣った小人物は、とかく暇になるとよくない行いをしますからね。」
【出典】 会話で使えることわざ辞典
https://imidas.jp/proverb/detail/X-02-C-12-8-0041.html
ルナ
「衣食足りて礼節を知る
生活にゆとりができてこそ、礼儀や節度をわきまえるようになる。とも言うよ。」
【出典】 三省堂辞書編集部
https://dictionary.sanseido-publ.co.jp/column/kotowaza06
町娘
「その通りです。 良太郎という方がいらっしゃったころは、なにか問題が起きても原因を見つけて直すことで、お客様の信用を保つことが出来ていたのです。 しかし、正義の瓦版様が良太郎さんをイジメて追い出してしまったのです。 そして、中立の騎士様は、ワシは中立だと我関せずの姿勢を貫かれた結果、新しい注文が来なくなってしまいました。
最後には、買い手を騙すことしか考えていないのか? いつまでもダマされると思うなよ。と縁を切られてしまったのです。 手間が掛かる割に価値が低い【低ランクのギルドプレート】しか注文がこなくなったのです。」
青兵衛
「あー、それは客が戻ることはないですね。 無駄に争う時間がもったいないから、損しない限り騙されておきますが。 取引先の信用を失うような商品は取り扱えませんからね。 開けてびっくり玉手箱は、浦島太郎しか受け取らないです。」
ルナ
「それで、あなたは先日、3人の男たちに迫られていたとのことですね。」
町娘
「そうなんです。 わたしが美しく身だしなみを整えているのは、いつの日か紅丸様のような素敵な殿方に出会うときのためであって、引き際をわきまえない男どものためではないのです。」
黄庵
「わかるわ。 今度会ったら、くるみ割りしましょうね。 どこかで金槌をお借りして。」
町娘
「黄庵様、どうされたのですか? 急に、女性のような声を出されて?」
黄庵
「いや、つい感情移入をしてしまったようだ。 患者の気持ちになって考える癖が出てしまったのです。」
町娘
「ああ、それで、納得しました。 では、橋の向こうまで行きましょう。 と言いたいところですが、引き返しましょう。 ワイダー公爵様の領地に踏み入れるとタダでは帰れないそうです。 入場料かも知れませんが、同じお金を払うなら、なにかを食べた方がマシです。
という訳で、わたしの友人がいる食堂に行きましょう。」
ボクたちは、橋の真ん中から引き返して、食堂に向かった。
◇
食堂にて
町娘
「ここは私の友達が給仕、ウエイトレス? メイドをしている店です。」
ウェイター
「ご注文は?」
町娘
「木の葉どんぶりセットを赤だし味噌汁で、5つお願いします。」
ウェイター
「かしこまりました。30分ほどお待ちください。できた分ずつお持ちします。誰から食べるかジャンケンをしてお待ちください。」
ルナ
「面白い話を思い出したよ。」
町娘
「なんでしょう。」
ルナ
「ふたりの子供を連れた母親に、あるひとが言ったんだ。
緊急事態が起こったとき、どちらの子供を助けるか決めておいてください。 両方の子供を助けようとしたら、どちらも助けられなくなります。」
町娘
「うーん、笑えませんね。 でも、考えておくことが大事ですね。 母親が離婚するとき、自分でトイレにも行けない小さいほう、つまり、弟や妹を連れていくことに似ていますね。」
黄庵
「ルナさん、今の話はしない方が良かったわ。 彼女が賢いひとだから良かったけれど、他の人に言っていたら、無駄に嫌われたところね。」
ルナ
「ごめんさない。」
町娘
「いえ、構いません。」
ウェイター
「1つ目ができました。」
ルナ
「どうぞ、先に食べてください。 レディーファーストです。」
町娘
「れでふぁって、なにですか?」
ルナ
「おなごから先に食べるがよかろう。」
町娘
「まあ、うれしいですわ。 いただきます。」
ウェイター
「2つ目ができました。」
紅丸
「ルナ様、どうぞ。 れでふぁです。」
ルナ
「えっ? いいのかなあ。」
黄庵
「冷めるまえに食べきってください。」
ウェイター
「3つ目ができました。」
青紫
「紅丸、どうぞ。」
紅丸
「えっ? いいのか? では、遠慮なく。」
黄庵
「いざというときに戦えるように、紅丸が食べ終わるのが早い方がいいわ。」
ウェイター
「4つ目ができました。」
青紫
「黄庵、どうぞ。」
黄庵
「あら、ありがとう。 うれしいわ。」
青紫
「ゆっくり食べてください。 わたしと食べ終わるタイミングが同じでもいいですよ。」
黄庵
「そうね、ゆっくりと味わって食べるわ。」
ウェイター
「5つ目ができました。」
青兵衛
「いただきます。」
町娘
「青兵衛さん、待っててくれてありがとう。 あせらなくていいからね。 ルナさんと話をするから聞く方に集中してね。」
青兵衛
「おおきに、ありがとう。」
◇
5人は食べ終わって、外に出た。
町娘
「今日は、友達の姿を見なかったなあ。 いつもなら働いているのだけどなあ?」
紅丸
「なにか用事があったのではないでしょうか?」
町娘
「そうかもね。」
町の様子がなんだか騒がしかった。
町の人A
「【ギルドプレート製造工場】で騒ぎが起こっているぞ!」
町の人B
「5人くらいの娘が連れ込まれたらしいぞ。」
町娘
「ルナ様、皆さま、行きましょう。」
お断りする前に走って行ってしまったので、ボクたちは追いかけるしかなかった。
◇
ボクたちが、【ギルドプレート製造工場】に着くと、人だかりができていた。
町の人たち
「俺の娘を返せ!」
「俺の恋人を返せ!」
「町に迷惑をかけるなら、出て言ってくれ!」
工場の中から責任者らしい人物が出てきた。
正義の瓦版
「なんの騒ぎですか? ここを、【ギルドプレート製造工場】と知らないのですか?」
町の人たち
「それがどうした。 連れ込んだ娘たちを返せ!」
「おまえたちの我がままには、もううんざりだ。」
正義の瓦版
「ここは、【モンテツワモ公爵】に守られた【特別地域】です。 出ていきなさい。」
町の警備隊が到着していたが、オロオロするだけだった。
正義の瓦版
「【ギルドプレート製造工場】に不法侵入しようとする輩を逮捕してください。」
町の人たち
「警備隊なら、娘たちを助け出してくれ。」
町の警備隊は、どちらの味方もできずに、オロオロするだけだった。
青兵衛
「2つの矛盾する、相反する決まり事を作ったからですね。 特権、特別な権利は百害あって一利なしですね。 まあ、本来は、1つ以上の利点、得する点があるはずなのですがね。」
町娘
「ルナ様、町の娘たちを助けてください。」
ルナ
「お断りする。」
町娘
「どうしてですか?」
ルナ
「あなたが困っていたときには、誰も助けようとしなかったからだ。
助けて欲しいときに助けてもらえない弱い者の気持ちを十分に味わった方がいい。」
町娘
「そんな? わたしと同じように助けてくれたらいいじゃないですか?」
紅丸
「私たちのような者が町を訪れることは、めったにありません。」
黄庵
「だから、本来、いない者として当てにして欲しくないわ。」
青兵衛
「ここは、町の人たちに目覚めてもらう良い機会です。 温かい目で見守りましょう。」
ルナ
「ちょっと、トイレへ行ってくるから、戻ってきたら、どうなったか教えてね。」
紅丸
「黄庵、ルナ様に付き添ってあげてくれ。」
黄庵
「ああ、そうしよう。」
町娘
「ああ、そんな、ルナ様たちなら助けられるのに・・・」
町娘はぼうぜんと立ち尽くしていた。
◇
トイレから出たルナは、壁に背を付けて、小さな盾バッジを取り出した。
黄庵
「ルナさんは、モンテマニー公爵と相談するおつもりだったのですね。」
ルナ
「さすがは、黄庵。よく気付いたね。」
黄庵
「紅丸と青兵衛も気付いています。」
ルナ
「そう、さすがだよ。 【モンテツワモ公爵】に守られた【特別地域】という言葉が気になってね。 モンテマニー公爵に確認を取りたいんだよ。」
黄庵
「お願いします。」
ルナは、小さな盾バッジで、モンテマニー公爵を呼び出した。
モンテマニー公爵
「おお、ルナか。 観光を楽しんでいるか?」
ルナ
「おや? メクバール執事が出ると思っていました。」
モンテマニー公爵
「悲しいな。 代ろうか? むすう。」
メクバール執事
「どうされました。 え? そうですか? ルナさんが公爵様の声をすぐに聞けてうれしいそうです。」
モンテマニー公爵
「おお、ルナ。 ワシの美声を好きになってくれたなら、ルナに歌を捧げようか?」
ルナ
「それは、今度お会いしたときに、目の前で聞かせてください。」
モンテマニー公爵
「では、そうしよう。 それで、なにがあった。」
ルナ
「観光地の山風山の近くにある【ギルドプレート製造工場】に連れ込まれた娘たちを助け出したいのですが、【モンテツワモ公爵】に守られた【特別地域】とのことです。 【モンテマニーの紋章】をかざして、乗り込んでも構いませんか?」
モンテマニー公爵
「そうか、では、【モンテマニーの紋章】をかざしてから、ワシの声を小さな盾バッジで皆に届けたい。 協力してくれるか?」
ルナ
「ありがとうございます。 では、いったん切ります。」
モンテマニー公爵
「いや、そのままにして、そちらの様子が聞こえるようにしてほしい。」
ルナ
「分かりました。 では、そのままにします。 黄庵、紅丸たちの所に戻ろう。」
黄庵
「はい、ルナさん。」
◇
正義の瓦版
「ええい、仕事をしない警備隊ですね。 者ども、町の奴らを追い払いなさい。」
カタナを持った男たちが10人ぐらい出てきて、町の人たちを追い払おうとしていた。
そのうちのひとりが丸腰の町の人に切りかかろうとしたので、紅丸がカタナで止めた。
紅丸
「丸腰の相手に切りかかろうなんて、剣士として恥ずかしくないのか?」
剣士
「丸腰でいる方が間違っているんだよ。」
青兵衛も町の人たちを逃がそうと努力していた。
しかし、町の人たちは、剣士たちと距離を取るだけで逃げようとはしなかった。
町娘
「みなさん、逃げてください。」
町の人たち
「お嬢ちゃん、あの時は悪かったな。 自分の娘が連れ込まれてやっとわかったよ。 明日は我が身だと。 対岸の火事だなんて思ったらいけなかったんだ。」
「そうだ、そうだ。 俺の恋人が手籠めにされる前に、この工場に押し入ってやる。」
正義の瓦版
「バカどもにもう一度だけ言ってやる。 ここは、【モンテツワモ公爵】に守られた【特別地域】だ。 【モンテツワモ公爵】に任命された俺に逆らうなら、タダでは済まさないぞ。」
ルナ
「紅丸、青兵衛、戻ってきて。」
紅丸
「ルナ様。」
青兵衛
「ルナ。」
黄庵
「いつものをしましょう。 今回は、おまけつきよ。」
ルナは、【モンテマニーの紋章】を天高くかざした。
ルナ
「輝け! 【モンテマニーの紋章】」
つづく
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