058 わたしの前に連れてきてくれ
メクバール執事
「謙遜とは、どういうことでしょうか?」
モンテマニー公爵
「まだ、ワシを試し足りないようだな。 メクバール。」
モンテマニー公爵は、ルナたちの顔を順番に見てから言った。
モンテマニー公爵
「いや、見苦しいところを見せてしまった。 つい、感情的になってしまった。
なにを話しているか分からないだろうから、説明しよう。
実は、ルナ殿、紅丸殿、黄庵殿、青兵衛殿に、【2位興国大学】の調査を依頼する前に、メクバールから話を聞いていたのだ。 前も言ったが、メクバールは本当に目配りができるというか、思いあがった権力者が知られたくないことに気付いてしまう運が悪い者なのだ。」
青兵衛
「ああ、確かに運悪く消される可能性が高いですね。」
モンテマニー公爵
「わしは気付けない方なので、いや、鈍感ではないぞ、メクバールがすごすぎるのだ。 だから、メクバールが気付いたことについては情報をもらっているのだ。 ただ、そのまま信じてしまうことは良くないのでな。 ワシは、かならず2つ以上の情報源を持つようにしているのだ。」
黄庵
「2つ目の情報源が、わたしたちですか?」
モンテマニー公爵
「その通りだ。 生きる活力を無くした老人は信頼する部下に裏切られて滅びるからな。 だから、わしは信じることは、怠惰、なまけることだと思っている。 もちろん、わしはまだ年寄りではないぞ、若くもないがな。」
青兵衛
「ええ、そうですね。 公爵様からは、活力を感じます。」
ルナ、紅丸、黄庵 こころの声
『さすが、青兵衛。 上手い返事をする。』
モンテマニー公爵
「メクバール、解説を頼むぞ。」
メクバール執事
「かしこまりました。
ルナ様たちが報告書に書かれたことは、わたしが知っていることと同じです。 いえ、実地で潜入してくださったおかげで、私よりも詳しいです。 さすがに、研修と試験にまで、手の者を送ることが出来ませんでしたので、推測の域を出なかったのです。
ルナ様たちが不合格でしたら、【2位興国大学】に言い逃れをする余地を残してしまう所でしたが、4人とも合格してくださったので、追い詰めることが出来ます。」
モンテマニー公爵
「その通りだ。 【2位興国大学】の責任者は、良太郎の精神を異常になるまで追い詰めた【熱血教師】だ。 使って悪いが、【熱血教師】を、私の前に連れてきてくれ。」
紅丸
「【2位興国大学】は、モンテマニー公爵領内に有ります。 公爵様は、【熱血教師】の御主君に当たられるわけですから、呼出し命令を掛ければ済むことではないのですか?」
モンテマニー公爵
「良い質問だ。 メクバール、説明を頼む。」
メクバール執事
「雑草は見えている部分だけではなく、根こそぎ抜かなければ駄目です。 第2第3の【熱血教師】を生まないためにも、芋づる式に掘り出したいのです。」
ルナ
「つまり、ワタシたちが現地から連行しようとすれば、【熱血教師】の息がかかったものが邪魔立てしてくるということですね。」
メクバール執事
「そういうことです。 死人に口なしとばかりに、本来隠れているべきものまで、憂さ晴らしができると物陰から湧いて出てくるでしょう。 そこを一網打尽にして欲しいのです。」
黄庵
「もしかして、公爵様が使者を差し向けたら、表面的には従順の意を示すから捕まえることが出来ないのですか?」
メクバール執事
「おっしゃる通りです。 表玄関から入って解決するなら、とっくの昔に私がやっています。」
紅丸
「悪人は、どこも同じなのですね。 逃げることが上手い。」
モンテマニー公爵
「その通りだ。 ただし、【モンテマニーの紋章】を見せることは忘れないでくれ! 大義名分を保つために必要な手順だからな。」
メクバール執事
「悪人たちが引き返す選択肢を与えたという事実が欲しいのです。」
青兵衛
「でも、そのような正義の味方のような立ち居振る舞いをしたら、火に油を注ぐように悪人どもの怒りを買うのではありませんか?」
メクバール執事
「燃えてくれたら、水をかけて消せば良いのです。 もっとも、そうできる武力がある場合の話ですが、紅丸殿に勝てる剣士はいないでしょう。」
紅丸
「上には上がいるので、買いかぶられても困るのだがな。」
モンテマニー公爵
「本当の強者は、紅丸殿のように油断しない者だと考えている。 だから、ワシは安心している。 では、ルナ殿、紅丸殿、黄庵殿、青兵衛殿。 もう一度、お願いする。
【熱血教師】をワシの前に連れてきてくれ!」
つづく




