実家は普通?学校で有名人?
自室のベッドで横になりながら天井を眺めた。
「思っていたのと違った」
無人島で男の制服に着替えた俺は人気のない場所にテレポートした。そして家へと向かった。ここまではいい。その後が予想とは違うのが待っていた。
ドキドキしながら家に入ると両親が待っていた。両親は俺と目が合うと駆け寄り俺を力いっぱいに抱きしめた。両親は涙を流していた。俺は今日これほど両親に愛してもらっていたことを実感した。
両親は俺の為に仕事を休んで家で待っていたという。今までの両親とは思えない行動だった。
俺が能力に目覚めて以降、無断に外泊しても何も言わなかった両親が俺が誘拐されたと聞いてこれほど心配したことが無いほど心配してくれた。
怒られると思っていたのに泣かれるとは思わなかった。それと俺が心配していた俺が女になれることは両親にはバレていない。ミキミやヨルノは能力のことを黙っていてくれたようで感謝しかない。こんど何かご馳走してやろう。
俺はそんな両親にごめんとしか言えなかった。そんな俺の呟きのような声に両親は無事に帰ってきてよかったと泣きながら嗚咽を漏らすばかりで俺の声が届いているかわからない。
その後は送ってくれた警察のことを聞かれたので俺を近くのコンビニおいて東京に帰っていったと伝えた。名前とか根掘り葉掘り聞かれたが、両親の反応に困惑中だった俺は西村と知り合いの刑事の名前を口にした。
そして今、疲れたから部屋で休むと言って自室のベッドに身を投げて天井を眺めている最中だ。
そこに静かに扉が開く音が聞こえた。
「お前も今日休んだのか」
俺は扉が閉じる音を合図に女の姿に変えた。
部屋に侵入してきたヨルノに声をかけた。
「うん。帰ってきてよかったよ。お帰りお姉ちゃん」
「だからお姉ちゃん言うな。なんだ、ただいま。それとこの姿のこと言わなくてありがとう」
ヨルノはベッドに腰かけて嬉しそうに微笑んでいる。ヨルノも俺を心配していたみたいだ。ヨルノには迷惑と心配をかけたようでお姉ちゃん呼びを黙認しようと思ったが、ヨルノの雰囲気が言葉を詰まらせて素直に帰りを喜んでいる妹に向けていう言葉が思いつかなかった。
俺も素直になれないお年頃というヤツだ。
少しの間、ヨルノは愛おしそうに俺の髪を撫でて俺の横になった。
「ちょっと狭いんなけど、部屋に戻ってくれないか。俺は疲れているんだけど」
「マヌケに誘拐されたお姉ちゃんは妹にスキンシップを拒否する権利はありませーん。これは罰なのです。だからこのままにいさせて」
ヨルノは俺の腹に腕を回してガッチリホールドして離れないように俺の胸に顔を埋めた。
「お胸柔らかい」
「自分のがあるだろう。暑苦しいから離れろ」
「お姉ちゃんのだからいいんだよ」
両親が夕食に呼ぶ声がするまでヨルノはベッドの上から避けることはなかった。
次の日、いつもと変わりなく学校に登校した。家では思っていたような事態になっていなかったことで安心して気がれなく登校できた。
「マヒルちゃんよかったよー。今度誘拐されそうになったら、私がマヒルちゃんを守るからね」
今日はミキミが迎えに来る前に家から出ようと思ったが、登校途中でミキミとバッタリと出会ったので大人しく一緒に行くことになった。ちなみに今は女の姿だ。
「気持ちは十分わかったから離れてくれ」
「ダメ。学校に着くまでこうするの」
ミキミは俺が代わりに誘拐されたと思っているらしい。誘拐された理由は能力を持っていたから狙われたからで平凡なお嬢様なミキミの価値は身代金ぐらいだろう。あんな低レベルな拘束なら即座に逃げて帰ってこれたが、再び狙われたら今度はミキミやヨルノが狙われるかもしれない。
可愛く俺を守るからと宣言すると同時に俺の腕を抱きしめてべったりとくっついて離れない。
しょうがないのでこのまま登校することにした。
学校に近づけば近づくほど登校する生徒達からある噂というか話し声が聞こえた。
「昨日の全校集会で言われた誘拐された生徒って一年一組らしいよ」
「今年の一年って不運じゃね?ゴールデンウィーク後の遠足で事故に巻き込まれたのに誘拐されたんだよな。誘拐されたヤツ不幸マンじゃん」
「そういえばゴールデンウィークで一年が乗った観覧車のゴンドラが落ちたらしいよ。落ちた子が誘拐された生徒と友達らしいよ。疫病神だよね」
それぞれの生徒の口から俺がかかわった事件の話が出て俺を不幸マンとか疫病神とか不名誉な呼び名で呼ぶ。
そんな声に俺は無視をした。何も知らない奴らを気にする必要はどこにもないし、関わること自体無駄だ。俺はやりたいことをやるし、このまま流れに身を任せ続けるだろう。
それは他の人と変わらない。やりたいことの為にできるだけ力を注ぐし、嫌なことや避けられない出来事は時間に任せる。
それで俺は能力を使ってロールプレイを楽しみ、他者に潜んで緩やかに流れる日常を過ごすだけだ。そう目の前にある変わらない平和的な日常を過ごす。
多少トラブルが発生するかもしれないが、目を逸らせば変哲もない日常だ。
「マヒルちゃんどうしたの?」
「いいやなんでもない。何も変わらない日常だなって。うおお!」
誰かに顔を掴まれて首を捻られた。
ミキミに腕をつかまれているから体が固定されて首だけ向きを変えられただけだが、一歩間違えたら首の骨が外れるかもしれなかった。
そんな鬼の所業をする奴はタマコだった。
「マヒル。またヘルメスさんに助けられたって、詳しく教えて」
俺の緩やかになる日常はヘルメスさんスキーなタマコに詰め寄られるハメになった。




