体売りの女6
お姉さんと別れて自室に戻ってきた。
ヘルメットをパソコンの隣に置いて、パソコンの電源を入れた。
「さて次は誰にしようかな。おお?また増えてるって、これタマコのアカウントだよな。ムシムシっと」
パソコンのモニターに映し出されたSNSの通知にタマコのアカウントからDMが来ていた。きっとどうでもいいことなのだろう。正体がバレに繋がるからタマコのDMを読まずに削除した。
増えたDMを確認しながら次の依頼を吟味する。
お姉さんみたいな猫尻尾を生やしてほしいみたいな面白みがある依頼は特にない。依頼を曲解して依頼者に犬耳や鱗を生やすサービスでも始めようかな。
でも人が困ることをすると西村あたりが妨害してきそうだ。西村達の能力者の組織の構成人は何人いるのか、どんな能力を持っている人がいるのか不明だし、俺よりも強力な能力を持っている人がいるかもしれない。
今のうちは依頼者が言う通りに依頼をこなそう。
そういえばスマホゲームのログインをしていなかったな。今日のログインボーナスはレアチケだった。忘れないうちにログインしとくか。
スマホでゲームを起動して、ログインをしながらDMを確認していく。
「お兄ちゃんお風呂沸いたよ。次に入って、誰?」
ヨルノは困惑顔で扉を開けたまま固まった。当然、今の俺の姿は体売りの女の姿だ。ヘルメットを取っているが、頭がある場所に顔があるからすぐに俺だと気づくだろう。
クソ、俺がこんなことをしていることをこうもあっさり家族にバレるなんてな。
俺は警戒していなかった。我が妹ヨルノは風呂から上がりすぐに部屋に戻るし、いつもならスマホで「風呂に入って」とメッセージを送るのに今夜は直接声をかけてきた。
今日に限ってなぜに部屋に顔を出したのか。疑問だ。それよりも。
「待って、ヨルノこのことはお父さんとお母さんには内緒だ。いや、誰にも言うな。そうだ。これをくれてやるから黙ってくれ」
俺は急な出来事に脳の処理が追いつかなかったが、まずヨルノの口封じに頑張った。すでに両親は帰ってきているようだ。これ以上バレないようにヨルノを部屋の中に引き入れて、手元にあったお姉さんからもらった二万円の札をヨルノに押し付けた。
もし足りなかったら、押し入れに隠している百万円を渡せば当分は黙ってくれるだろう。
だが、俺がいました行動が最悪の一手だと悟った。
「え、二万円?アナタお兄ちゃんなの?肩から上でが生えて手が四本?このお金はどういうことなの?」
ヨルノはさらに困惑したみたいに俺に捲し立てる。
この反応なら別人として接したほうがよかったかもしれない。例えば別世界の俺だと言えばよかった。
「これには深いわけがあってな」
さてどう説明しようか。悩むな。
俺が超能力者っていうことは伏せておこう。ヨルノに言ったら、ここに住めなくなる気がする。
「まずどこから説明しようか」
思考をグルグル巡らせて、ふとSNS内の広告の文字が目に留まった。魔法少女。
ヨルノはたぶん信じないかもしれない。いや、実の兄が女体化しているんだ信じるはずだ。
「まず魔法少女になりました」
「は?」
「はい、言えないことが多いけど魔法少女になりました。そして女の子になれるようになって不思議な力を授かりました。それの証拠に」
着ていたワンピースや下着類を脱ぎ、我が妹に肌を晒す。
女の子の姿で裸を晒すのは銭湯で慣れたものでいくら妹に見せても恥ずかしくない。同性に裸を見せた気持ちに近い。
「お兄ちゃん本当に女の子になっている。しかもおっぱいは私よりも大きい。お兄ちゃんに負けた」
「もうわかっただろう。元に戻るから早くでてって」
ヨルノを追い出してさっさと男の姿に戻って、風呂に入って気持ちを落ち着かせた。
あと何軒か依頼をこなすつもりでいたが、なんか萎えた気がする。たかが妹に女の子になれることをバレただけだ。気にすることはない。口止め料だって渡したんだ。これ以上の情報は広がらないはずだ。きっと。妹の口の堅さを俺は信じている。
「さて、気を取り直して次の依頼は」
風呂に入ったおかげで頭がすっきりした。気持ちを切り替えて次の依頼を探した。
さほど変わらず面白みの欠ける依頼ばかりでつまらない。傷跡を消してとか、目の色を変えてとかそんなのばかりで詰まらない。空を自由に飛びたいから翼をつけてくれって言うくらいの面白みがある依頼は無いものか。
病院のニュースで有名になったはずのに病気だから治してほしいって依頼が全くないのも不感だ。二日目で依頼で傷跡を治せとか地毛の色をカラフルにしろとか金さえあればできるだろうが、俺は金があってもできないことを人にしたいんだ。地毛の色を変えるは金があっても無理だろうけども、そんな地味な依頼ばかりでうんざりだ。そんなくだらない依頼をこなしていられるか。どんだけ金を積まれてもそんな地味なことはやらねえ。
ヨルノに女の姿をバレたし、もう寝てしまうか。
「この依頼面白そうだ」
モニターの画面にいろんな色に光る魔法陣を肌に入れてほしいと依頼が来た。一見地味そうな依頼だけど、入れ墨を自由自在に光らせるという技術的に難しいそうなところが俺の気を引いた。




