体売りの女
タマコのデートから数日後の夜、俺はベッドの上で面白いことを思いついた。
思いついたらすぐ行動としてSNSで新たにアカウントを作成。アカウント名は体売りの女。
名前は一件性の商売をしているような感じだが、表紙で判断はやめてもらいたい。新たに作ったアカウントは身体に障害を負った人や尻尾を生やしたい人達に身体の部品を売るためのアカウントだ。
最初のつぶやきは「身体を売ります。腕や足から眼球、臓器まで売ります。オプションの追加として病気も治せます。用がある方このアカウントへDMお待ちしてます」と全世界へと送信した。
「作ったばかりのアカウントじゃあ今すぐに連絡は無いか」
出来立てほやほやなぽっと出の意味不明なアカウントに連絡をする物好きはいないか。面白いことをするためにレディースなフルフェイスヘルメットを買ったのにこれじゃあ当分使わないか。
パソコンの画面を閉じようとしたときポロンと気の抜けた可愛いらしい音が聞こえた。この音はSNSのDMの通知音だ。
早速のDMが届いたようで早速メッセージを確認したが、そのメッセージは俺が想像していたものと違かった。短く、単純に「本番いける?」と送られてきたメッセージに怒りを覚えたが、俺の初のお客さんになるかもしれない相手にそんな感情は抱いてはいけないと思い、返信を送った。
本番とは俺が思っているようなことではないかもしれないしな。
「どこにいますか。ご指定の時間と場所まで向かいます」
と返信するととある東京の公園で今すぐ来てほしいと相手からの返信が来た。
その公園はピンとこなかったが、ネットの力を借りて場所を特定した。東京に行った時、ぶらりと一人で練り歩いたことのある公園だったので着替え、買ったばかりのヘルメットを被り指定の場所の近くでテレポートをした。
夜の公園は薄暗く、人っ子一人もいない。
悪戯かと思い自室に戻ろうとしたが、公園の街灯に照らされた人影が見えた。自分を呼んだ相手と思い近づいて声をかけてみた。
もちろん声は変えてある。ヘルメスさんみたいな機械的な声ではなく、アニメ声みたいな甲高い声で話しかけた。
「こんばんわ。体売りの女です。○○さんですか?」
「おお!びっくりした!さっき返信したばかりなのにすぐに来た。ってええ?」
俺が声をかけたら、相手は振り向いた途端に驚愕な声をあげた。
「そうかされましたか?何かおかしいなことでもありましたか?」
「ば、ばば、化け物ーーー!」
相手は転びながらも必死の形相で逃げていった。
逃げていった相手は俺の今の姿を見て逃げていったのだ。
初見は予想通りの反応であるが、局面すると少し傷つく。今の俺の姿は顔が分からないようにフルフェイスヘルメットと着てきた服はノースリーブワンピース姿であった。ここまではただのヘルメットを被った少女だ。でも露出した両肩から一本づつ腕が生えている。
合計四本の腕を持つ俺の姿を見て逃げていったのだ。夜の公園で両肩から腕を生やした女が声をかけてきたらびっくりするだろう。
なんで肩から腕を生やしているのかは俺の趣味だ。今回の反省を生かす為に今度は休日の日の昼にやろう。
初めての客が逃げてしまったので自室に帰った。
戻ってつけっぱなしだったパソコンの画面を覗いたら、複数の通知がきていた。一つ一つ確認したが、ほとんどが性交渉の通知だった。俺は性商じゃあないつーの。だが、一つだけ他のメッセージとは違う物があった。
それは「病気を治せるのは本当ですか?」と書かれたメッセージがきていた。
それの返信で「はい。風邪からガンまで問題なく治せます。どこ行けばいいですか?」と送った。
今度は逃げない客がいいな。
俺がDMを送ってから数十分後、DMが返ってきた。その内容は「○○病院の二〇五室に私の子供がいます」と書かれていた。
今度の場所は病院だから期待できそうだ。
早速、指定された場所をスマホで調べてからテレポートで向かった。行ったことのない都市だったので到着するまで一時間も掛かった。
当然は今は夜だから夜間病棟以外の廊下は漆黒の闇に飲まれて、唯一明るいナースステーションには夜勤のおばちゃんナースがのんびりお茶をしていた。とても暇そうだ。
気づかれないように二〇五室に向かった。
「DMではこの部屋だよな?」
俺はノックも無しにそーと静かに部屋の中に忍び込んだ。
中は二人部屋らしく、二つのベッドがあり、それぞれのベッドから寝息が聞こえる。
しかし困ったな。二人部屋だと思わなかった。それにここは小児科医のフロアらしく寝息をたてているのは幼い子供だ。
俺は肝心なことにどっちが依頼の子なのかわからない。しかも依頼した人がいないから聞くこともできない。SNSで依頼を受けるとこういう不具合があるのを学習したが、SNS以外で自分の正体を隠しながら依頼を受ける方法が思い浮かばない。
当分は改善点を考えながらSNSで依頼を受けるしかないようだ。
さて病院にいることは身体のどこかが悪くて入院しているわけだからそれを治せばいいとは思う。でもどこが悪いのか医療の知識が皆無の俺にはどうすることもできない。
初仕事で積んだぞ。ナースステーションに忍びこんで二人のカルテを盗み見るしかないのか。
「ん?誰かいるの?」
俺がいつまで経っても行動しないから起きてしまったじゃないか。この際だから起きた子にどこが悪いか聞くか。




