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ヨルノ下(閑話)

「明日の午前中、ヨルノちゃん家に遊びに行っていい?」

「私も行きたい。古文の宿題でわからないところがあったから教えてほしい。それとヨルノちゃんのお兄さんを見てみたい」


 と同じクラスのナオちゃんが無邪気そうに言い。続けてイズミちゃんが言う。

 ナオちゃんは中学に上がってから友達になった子だ。イズミちゃんは小学校からの友達だ。

 友達を家に招いて遊ぶのはいいけどこんなに無邪気でかわいい友達に変な兄を見せたくない。というよりもクラスメイトに自分の兄を見られるのはものすごく恥ずかしい。


「え?遊びに来るのはいいけど午後からにしてほしい。たぶん兄は出かけると思うから会えないと思うよ」


 明日の時間を十時に来るようにお願いした。

 ナオちゃん達が来るまでに兄を追い出さなくちゃ。あの変人を極まれている兄を私の数少ない友達に見られないように。追い出したら兄は怒るだろうか?でもあの兄を見られたら恥ずかしくて見せられない。

 でも明日は土曜日。あの兄なら出かけてくれるだろう。いつも家にいることが少ない兄は九時くらいにフラーと出かけて、十九時あたりに幽霊の如く現れるのだ。明日に限って惰眠を貪ることはないだろう。

 私はそう願う。


「おはよう」

「お兄ちゃんおはよう。お父さん達は今日も仕事だよ。冷蔵庫にご飯があるから温めて食べてだって」


 次の日、私がイズミちゃんに教える部分の宿題をリビングでしているとノソノソと眠たそうに自室から兄が降りてきた。昨日は珍しく私よりも早く帰ってきていて、疲れた様子でソファーの上で寝ていた。学校で何かあったみたいだけど、私が聞いても兄はたぶん答えてくれないだろう。

 兄は私が言ったお母さんが作り置きしてくれた焼きそばを電子レンジに入れて、数秒ほど温めて平らげてから私の宿題を覗いて自室へと戻っていった。

 私の予想は外れて惰眠を貪りに戻ったのだろうか?

 あんなに疲れてる兄は初めて見た。とても出かけろとは言えない。ゴールデンウィークの時、イズミちゃんを家に招き入れる為に追い出しちゃって、その日の夜は帰ってこなかったけど次の日ケロッとした顔で帰ってきたから気にしていないだろう。だけど今回は違う。

 気だるそうに部屋へ戻る兄の背中は一週間の残業をしてきたお父さんと同じに見えた。あんな兄を見て流石の私も何も言えない。

 友達が来ても兄が降りてこないように祈ろうと思っていたら、数分後に兄が降りてきた。


「どっか行くの?」

「ああ、ちょっと散歩に行ってくる」


 兄は私の問いに軽く答えて家を後にした。予想道理出かけて行ったが、あの調子だと数時間ぐらいには帰ってきそうだ。

 今日のところは友達に見られても諦めよう。


 兄が出て行ってから一時間くらい経って廊下から電子音が聞こえた。

 電子音を確かめるために廊下を覗いて見ると兄のスマホが落ちていた。スマホのディスプレイにはタマコと表示されていた。

 心の中で悪いと思いつつ兄のスマホを操作して着信の履歴を見た。ほとんどがミキミちゃんだったけど兄はミキミちゃんの着信をほとんど無視しているようだった。

 ミキミちゃんいいお嫁さんになると思うから付き合えばいいのにと思いながらもさらに着信の履歴を見る。次に多いのはタマコとルカの名前だった。

 女の子名前だろうか?兄は三股をしているのかと思ったが、二人の着信も無視しているようだ。

 あの兄だ。友達が一人もいないのに女の子と付き合っているはずがない。

 これ以上兄のプライバシーを侵害しないために兄の部屋にスマホを投げ入れた。

 リビングに戻るとインターフォンが鳴った。続けて何回もインターフォンが鳴り続けた。


「ナオちゃん達かな?思ったより早いな。そんなに連打しなくてもすぐに行くのに」


 ナオちゃん達は公園で待ち合わせしてから来るみたいなことを昨日言っていたから予定よりも早くついてしまったのだろう。

 玄関を開けたらそこにいたのはナオちゃん達ではなく。知らない綺麗な女の人がそこに立っていた。


「マヒルはどこ?」


 短い声には怒りを帯びているだけが伝わり、不思議と汗が出てきた。


「さっき出かけました」


 ビビる私は短くそう言った。

 兄がいないことが伝わったのか彼女はそれ以上何も聞かずに引きかえしていった。

 兄を探しに行ったのだろうか。兄とはどんな関係なのだろうか。もしかして友達がいない兄の彼女だったのか。ミキミちゃんがいながらも彼女を作ったのか。ミキミちゃんと二股、いや三股していることをバレたのか。

 私には関係ないことでこれ以上兄のプライベートにかかわるのはやめておこう。でもあの兄に彼女がいたなんて驚いた。

 それからすぐにナオちゃん達が来た。


 兄が帰ってきた時間はいつもより遅い時間に帰ってきたので友達に兄に見られずに済んだ。

ネタが尽きた。


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