タマコとデート4
「その子は確か?マヒルちゃんと一緒にいた。まいい。今日はその子と約束があるのか。じゃあ、今度そこに行ってみてくれないか。君に会わせたい人がいるんだ」
アキラが昨日行ったマンションの住所が書かれたメモを差し出した。
「これは、西村のマンションか」
とあたかも知っているように装う。
昨日行ったばかりだし、当分行く必要はない。少しは楽しかったけども、面倒そうなことも多そうだしな。
でも借りたジャージは返さないと。服も置いてきたしな。
あのマンションに行く理由ができたな。
「気が向いたら行く。いや、近々行くと約束する」
女の姿で。
「君から西村さんの名前が出るとは思わなかった。もしかして西村さんって有名だったりするの?」
「有名かどうか知らん。向こうは会ったことは無いと言うと思うが、俺は会ったことがある。さあ行こう」
これを聞いてアキラはどう思うかは知らないが、てか、他人がどう思おうと俺にとってどうでもいいことだ。
遠くからパトカーの音が聞こえる。本当に誰かが通報したようだ。アキラも気づいている。
早くここから去らないと。
タマコの目の前に手を差し出した。タマコが差し出された手をぎゅうと握った。
「あの子の家に近いうちに会うことになるだろう。それまでさらば」
この後、アキラが俺の家に行かないように最後に念を押して、無人島へテレポートした。
アキラは能力を使えばパトカーくらいすぐに撒けるだろう。
「えっ?ここは海?私達さっきまで公園にいたはずなのに」
予想通りの反応をするタマコをよそに俺は近くの岩に腰を下ろした。
困惑した表情を見せるタマコは海水に触れ、砂浜の上で雲一つない大空を仰いだ。
さて、タマコを無人島に連れてきたのはいいが、ここから何も考えていない。
ヘルメスさんオタクと言うか、何故にタマコはここまでにヘルメスさんに執着するのか分からない。前にヘルメスさんに助けられたと言っていたが、俺にはタマコのことなんて全然覚えていない。
ただ助けられただけでここまで執着するのはドン引きだ。鬱陶しく感じるヘルメスさんの話は何時間も永遠に語るのはそれはそれで才能と言える。
会いたがっていたヘルメスさんを前にタマコは海で遊ぶつもりはないのだろう。
適当に話し相手になって一時間少しで元の場所に返そう。
「ヘルメスさん、ここはどこなの?ここに住んでいるの?」
「太平洋側の日本の無人島の一つ。俺の拠点で勝手に住み着いているだけだから俺が所有している島ではないから勘違いしないでほしい。俺はさっきの公園の近くに住んでいるからここにはたまに来る程度だ」
機械質な声で駆け寄ってきたタマコの疑問に答えていく。
この島を買う変人はいないだろう。島の回りには島すら何もない。船も一年に一度、地平線上で見かける程度で、誰も来ない無人島だ。
本島からも距離がある。
「もしかしてここに来たのって超能力なのかしら?」
「そうだとも。あとこんなこともできるぞ」
海水を念力で持ち上げて綺麗な球体を作り上げる。
球体の中には小魚達が自分達の状況を理解しないでのんきに泳いでいる。
「わぁ!」
球体状の海水を見た息を飲むタマコの反応を見る。
こんな感じで能力を見せて満足してくれれば凄く嬉しい。
「ヘルメスさんはすごいですね。水を触れないで浮かせるなんて」
海水の球体を見るのが飽きたのかタマコは俺の隣に腰を下ろした。それと同時に球体を海に戻した。
「まあな。最近は似たようなことができる人達と出会った」
「それってさっきの人のことですか?」
「そうだ。あのビニール袋を被った男もそうだが、バス事故の日マヒルを助けた人達の仲間だ」
タマコがアキラについて聞いてきたので軽くスーパーアルティメット団の話をした。
「目的は不明だが、しつこく勧誘してくるんだ。悪ければ彼らの拠点に拉致られる。あとこの話は誰にも話してはならない」
タマコに君の身が危なくなるからと思わせぶりなことを口にする。
勧誘は数えられる程度しかされなかったが、拉致られたのは本当だ。まさか、小学生の女の子に拉致られるとは夢にも思わなかったけども。
ぽつぽつとタマコに話した。タマコは俺の話しを目をキラつかせながら静かに聞いていた。まるで俺が話したことがテストにでも出ると思っているようだ。
話すネタが尽きて俺も黙り、沈黙が続く。
女子と話すのはなれない。幼馴染のミキミとも長く話が続かないのにヘルメスさんのことしか語らないタマコとなんて話す内容なんてない。
「ヘルメスさん」
数分ほど波の音が沈黙をかき消して、タマコの口が開いた。
「私、あなたにお礼が言いたくて今日まであなたに会う方法をこの三年間の間探し続けていました。そしてこの間のバスの事故の件であなたとやっと会えました。あなたと会う方法を知っている友人のおかげであなたと再び出会えた」
タマコが静かに語る。いつもみたいにマシンガンのように語るのではなく自分の気持ちを押さえて、感情を語っている。
その友人は俺と同一人物だが。
「あなたに言いたいお礼とは三年前私は交通事故で死にかけてました。もしかしたらあなたは忘れているかもしれませんが、それを助けてくれたのがあなた、ヘルメスさんが私の前に舞い降りて私の怪我を治療してくれました。あなたのおかげで私はこうして生きていることができます。ありがとうございます!」
ガバ!とタマコが頭を下げる。
やっぱり、三年前にタマコを助けたことは思い出せない。もしかしたら助けたのは西村の仲間が助けたのかもしれないな。怪我を治せる人がいると思うから。
「君の思いは俺に届いた。ただ気まぐれに助けたに過ぎない。これ以上感謝する必要はない。俺にとらわれず自由に生きると良い」
タマコがヘルメスさんにこだわらなければ、ヘルメスさん語りに何時間も付き合わなくて済むからだ。
でもここまでヘルメスさん執着しているならもっとヘルメスさん語りが酷くなるかもしれない。
「おっと時間だ」
ポケットに入れていたスマホが鳴った。この音は電話の着信音だ。
今はタマコから解放されたいからアラーム音にしておこう。
ポケットに手を突っ込んで着信を切る。
「送ろう」
タマコを連れて先ほどまでいた公園へテレポートした。




