タマコとデート3
「テメーは何ものだ!」
尻もちをついた片方が怒鳴り散らしていたが、取るに取らない存在だったので無視してタマコの前で直立する。
俺が現れてキョトンとするタマコの口がパクパクと開いたり閉じたりしている。
「へ、ヘルメスさん!やっと会えた!」
「ああ、昨日はすまなかった。共通の友達に凄く怒られた。学校で会ったら私の代わりに謝ってくれないか?」
目の前に現れた存在がヘルメスさんだと気づいたタマコに機械音染みた声で語り掛ける。
「共通の友達?まひ、わかりました。彼女に伝えておきます。それで今日は私の為に時間を割いてくださってありがとうございます。ああん」
タマコの目が一瞬嫉妬深く光ったように見えたが、気のせいでだったようで無邪気な眼を輝かせて、俺がつけているヘルメットに触れようとしたので念力でタマコの手を止めた。
「これは大切なものなんだ。あんまり他人に触れてほしくないんだ」
「ごめんなさい。でも、せめて顔を見せてほしいのです。ヘルメスさんのご尊顔を」
いつもよりも変なタマコがそんなことを口走る。
顔を見せてほしいと懇願するタマコにどうこたえるか考えようとしたが、それよりも前に手が乱暴に引っ張られる。
「テメー、無視してんじゃあねえぞ!」
「そうだ!ヘルペスだか、ヘルオスだか、知らねえがよぉ。悪趣味なヘルメットを被りやがって。急に現れやがって転んじまったぁじゃあねえか!この落とし前どうするんだ」
無視していた二人組が立ち上がって俺に肩パンをしたり、脛を蹴ったりする。念力でガードをしているからまったく痛みはない。うるさいだけしか感想しか思い浮かばない。
タマコにナンパが邪魔されて怒っているようだが、そもそもタマコに約束がある時点で諦めて欲しいものだ。
このままタマコを連れてテレポートでどこかに移動するかと考えたが、俺と別れた後タマコがこの二人と遭遇するかもしれない。そしたら悲しい出来事に発展する可能性はなくはない。
はて、どうすればいいか。
「なんだコイツ。殴っているのに殴った感触がしないぞ」
「当たっているが、虚無を殴っているようだ。気持ちわりぃ」
「もう満足したかな?満足したなら去ってくれないか」
と諭すように提案するが、殴り続ける二人は引く様子はない。
二人の腹部から何かが生えてきた。それは人の手のように見えた。
二人の向こう側に目を向けるとビニール袋を被ったアキラがいた。
ビニール袋を被ってるのは素顔を隠しているとして、何故にアキラがいるのかは知らないが、声をかけてみよう。
「おいおい、それをやったら死ぬぞ?人が穏便に済ませようとしているのに」
「はぁはぁ、一体何を言って、腹?うわあああああ腹から手がぁ!」
俺を殴る二人は何故か腹から生える手に気づいていないので自分の腹部を指して手が生えているのを伝える。
「俺達の腹に手が生えているぞ。これはお前の仕業か?」
「いや、俺だよ。さっさと逃げないとこの手を引き抜くけどいいのかな?」
アキラの脅しが効いたのか二人組は「なんだ。アイツら化け物だ」と叫びながら逃げていった。
「少し騒ぎ過ぎたようだ」
公園にいた奥様方やその子供、散歩していた老人達の注目を集めてしまった。中にはスマホを片手に持っている人もいる。
警察に通報されそうな雰囲気だ。絡んできたのあっちなのに。いや、全部アキラのせいだ。アキラが勝手に脅したのが悪いから俺は悪くない。
でもアキラに助けられたのは事実だ。
「助けてもらったな。ありがとう」
「どうもいたしまして。っと君はヘルメスさんで会っているかな?」
「そう名乗った覚えはないがネット上ではそう呼ばれている。何か用があるか?」
アキラに礼を言うと俺がヘルメスさんかどうか確認を取ってきた。俺からはヘルメスさんモードだろうが、女の姿だろうが、アキラには用はないが、向こうは何か用があるような口ぶりだ。アキラの能力は知っているから対策ができる。
ただ、助けてもらっといてこのまま立ち去るのは悪い気がする。
このまま立ち去ってくれるとありがたい。
「君に用はないけど、今日はとある女の子に会いに行くんだ」
言葉の裏腹にうんざりしたかのように言う。ビニール袋の顔には嫌な表情にしているに違いない。
アキラが合いに行くという女の子は女の姿の俺に違いない。
アキラが家に行くのをやめさせるべく、ここは先にいないことを伝えよう。会いに行く相手が目の前にいるのだから。
顔はヘルメットで隠れているし、気づくわけはないけども。
「そこは今日もじゃないのか?それにその子は家にいない。どこかに出かけているぞ?たぶん」
「もしかして知り合いだった?それと昨日の話を聞いたのかい?」
「昨日の話?少しだけ聞いたが、連れ去って行くのを見ていた。ただそれだけだ。それに一昨日お前からあの子を逃がしたのは俺だからな」
牽制するみたいにずっと見ていたと伝える。今の俺は正体不明な奇人でずっと監視されていたと知ったら、少しだけ警戒されるはずだ。それと金曜日の放課後、アキラの前から逃げきったのは女の姿の俺だけの能力ではないヘルメスさんという奇人の能力で逃げ切ったのなら女の姿の俺の能力は身体の形を変形させられる能力だけと思わせれるはずだ。
それで西村達の興味を女の姿の俺からヘルメスさんへ移せればいい。これで昨日みたいに無理やり連れていかれることもなくなるだろう。
ヘルメスさんは神出鬼没で、正体不明な奇人だ。昨日みたいにヘルメスさんの姿で車に乗せられても能力を制限をかけずに自力で脱出できる。
「もういいか?こっちには約束があるから」
後ろで大人しくしているタマコを指した。




