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マンション4

「あの子。もっと素直になったらいいのに」


 アイちゃんがボソリと呟くように言った。


「マヒルちゃんはあの子と仲良くしてあげて、根はいい子なの。でも素直になれなくてね」

「あんなじゃあ、仲良くなろうとしてもなれないだろう」


 悲し気に言うアイちゃんはシズクと呼ばれた少女の本心を知っているようだ。アイちゃんの能力で彼女の心を読んだのだろう。

 本心を知ったのと心を読んだ負い目なのかは知らないが、アイちゃんはシズクをここに馴染んでほしいと思っているようだ。

 もう来ない俺にとっては関係ないから、シズクとはもう会うことはないだろう。


「さっぱりした」


 それから三十分ぐらい経過した。

 リンちゃんに身体を洗われたり、リッカの頭を洗ってあげたりした。

 何故、その流れになったか俺には理解できなかった。ただリンちゃんが言うには「マヒルちゃんを洗ってあげるからリッカちゃんを洗ってあげて、後でいいことをしてあげるから」と。

 何故かこの後起こることは嫌な予感がするのは気のせいじゃないはずだ。

 アイちゃんは小さい身体を利用して湯船を浸かっていた。最後にはリンちゃんにに目をつけられて全身を洗われていたけど。


「あれ?ここに置いてあった服は」


 風呂に入る前に脱いだはずの服が見当たらない。入る前ちゃんと籠に入れていたのに、籠には何もなかった。

 盗まれた?と思って周囲を探した。

 アイちゃんもリッカも自分の服がなくなっているのに気づいて、服を探している。


「え?リッカもマヒルちゃんも服がないの?」

「ああ、この籠に入れたはずなのに見当たらないの」

「わ、私もないの」

「私の服がだけならともかく二人の服がないってことはアイツじゃないか」


 どうやらここには女物の服を盗む輩がいるようだ。

 服の一つや二つ盗まれても特に何も気にしない。気にしないけど無人島にいるときも、数えきれないほど浜辺に脱ぎ捨てた服や下着が波に攫われて流された俺だが、誰かがいる場所で服一式すべて盗まれるのは流石に困る。

 困った。アイちゃん達がいる前で迂闊にテレポートを使うわけにはいかないし、どうしたものか。

 素っ裸で廊下に出ようかと考えたが、流石に止められるか。


「ぬっふっふっふ」

「リンちゃん?」

「洗濯機が動いているよ?まさか!」


 服を探す俺達三人と戸惑いを一つも見せないリンちゃんがいた。

 リンちゃんの後ろにガタゴトと動く洗濯機が見えた。

 俺はリンちゃんを押しのけて洗濯機の中を覗いた。洗濯機の蓋は透明になっているから容易に中を覗くことができた。そこにグルグルと回る見覚えのある布があった。紛れもなくそれは俺の服だった。


「りっ、リンちゃん。もしかして私達の服洗濯機の中に入れちゃったの?」

「そうだよ」


 リッカの問いに元気よく答えるリンちゃん。

 洗濯機の蓋を開けようと取っ手を引っ張るが稼働している間はロックされているようで女の腕力じゃ開けられない。男の腕力でも開けられないけど。

 取っ手を引っ張っていると洗濯機のタイマーが目に入った。タイマーには十五分の数字が映し出されていた。そして洗濯機の隣にドラム式乾燥機が置いてある。

 洗濯機が止まるのは十五分。乾燥機で乾かすのに一時間ほどかかるだろう。


「リンちゃん?これどうするの?」

「待って、アイちゃん。考えがあるの」


 本気で怒っていそうなアイちゃんはリンちゃんを正座させて、説教に入ろうとしているが、一方のリンちゃんは思ったよりアイちゃんが怒っているのに狼狽えつつも、何か考えがあると言う。

 ふと、俺は思うに着替えを準備していない俺達にも問題があると思う。服はそんなに汚れていなかったけどリンちゃんは気を利かせて洗濯してくれたんだと思う。そうだと思いたい。全員の服を一気に洗濯機に放り込むのはどうかと思うけど。

 風呂に入る前に着替えを準備していればこんなことにはならなかったよ。


 あれ?パンツは?

 俺は風呂に入る前に履いていた男物パンツのことを思い出した。リンちゃんはまだ幼いから布のパンツだったから大人のパンツはこういう物があるんだなと思ううて何とも思わないまま洗濯機に入れたと思う。

 でもリッカはどうだろうか。アイちゃんの方はわからないが。見た目の俺よりも年上の彼女は俺のパンツを一目で男物だと見抜けるかもしれない。


 男だとバレるのを避けるために視界で洗濯機の中へと飛ばして、テレポートで自分のパンツだけをマンションの外へ捨てた。この後、パンツを捨てたことで少し問題となった。


 よし、これでバレることはないだろう。

 さてとリンちゃんの考えとやらを聞きますか。

細々と書いていくので来年もよろしくお願いします。

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