マンション2
リンちゃんに手を引かれて連れられた場所は、脱衣所だった。このまま風呂にでも入るつもりだろうか。
今日会ったばかりの初対面の相手にここまで懐いていると言うか、ここまで信用して大丈夫なのだろうか。この子はお菓子を貰ったらホイホイと知らない人について行きそうで少し心配である。
リンちゃんはここに来るまでにすれ違う人達に挨拶をしていた。顔見知りばかりだからだろうけど。すれ違う人全員に一人ずつ俺を紹介するのはやめてほしい。
軽く挨拶を返す人もいれば、人懐こい笑顔で新入りかい?と言葉を返す人もいた。俺はずっと黙ったままで答えたのは全部リンちゃんだけども。
「マヒルちゃんも早く脱いで!」
「待って!お願いって何なの?」
生まれたままの姿と化したリンちゃんはまだ服を着ている俺のを見て、服を脱ぐように促した。このままだとリンちゃんに脱がされてしまう。
ひとまず落ち着いてもらおうと手で制しして距離を取る。
これまで女性の裸なんて死ぬほど見てきた。自身の身体も含めて。
老若問わず見てきた俺は今更小学生の裸を見て狼狽するほどではない。現在女の姿でも自身の身体も見せるのもなんとも思わない。だが、今はブラも着けていないし、男物の下着をはいているのだ。ワンチャン、布のトランクスだから不信に思われないと思うけど。風呂に入るとは思わなかったから準備してこなかった。
男ではと思われたくない。疑われる懸念材料は少ない方がいい。
ふと、ドアが開く気配がした。
振り向くと誰かが脱衣所に入ってきた。
入ってきたのは壁だった。いや、巨体な人だった。
「リッカちゃんだ!ひさしぶりー」
「うん、リンちゃん。久しぶり。その子が噂の新しい子なのね」
「そうなの。マヒルちゃんって言うの。これからお風呂に入るの!」
リッカちゃんと呼ばれた巨体にリンちゃんが駆け寄った。巨体はそれに答えるように弱々しくリンちゃんの頭を撫でた。
身体が大きくてごついから男だと思ったが、名前とリンちゃんの反応を察するに女の人のようだ。能力は怪力かなんかだろうか。
「二人が入るなら後にするね」
「えーリッカちゃんも入ろうよ」
気を使っているのかリッカと呼ばれた女の人は脱衣所から出ようとしていたが、リンちゃんに手を掴まれて引き留められて、困った顔をした。
リンちゃんがリッカの相手にしている間に二人の横を通り抜けて脱出を図る。ドアはリッカのおかげでずっと開けっ放しでいるから出ることは簡単そうだが、迂闊にハイドモードは使えない。二つ目の能力を持っていると思われたくない。
てか、リンちゃんが裸なのだから閉めてやればいいのに、通りがかった男の人にリンちゃんの裸見られるぞ。
息を殺してリンちゃんの死角を意識して言い合う二人の横を通る。
うまく横を通り抜けて脱衣所から一歩踏み出すと同時、胸に軽い衝撃がした。
「ちょっと、デカパイ気をつけなさいよ。って私の胸の方が大きかったわ」
「僕の胸は言われるほどそこまで大きくないのだけど、アイちゃん。元の大きさに戻してあげようか?」
「ごめんなさい。少し調子に乗ってました」
脱衣所に入ろうとしていたアイちゃんとぶつかったようだ。今言ったのはボケなのか、一人漫才を少しイラつきを覚えた。アイちゃんを巨乳にしたのは俺だから巨乳にしたからこうなったのなら元の大きさに戻してやろうかな。いや以前よりも小さくしてやろうかと脅したら目元に涙を浮かべて土下座で謝られた。
俺の胸の大きさはヨルノとミキミの間の大きさにしている。今以上に大きくできるけど胸が大きくしたら動くのに胸の重さが邪魔で動きにくくなって、男に戻ったら数分間歩くのがぎこちなくなる。
「ところでマヒルちゃんはどこ行くのよ?リンちゃんがここに連れてきたと言うことはお風呂に入るのでしょ?」
「いや、リッカっていう女の人がずっとドアを開けっぱなししているから、閉めて欲しくてそれで」
「そう、閉めなくちゃね」
土下座から立ち上がったアイちゃんはパタリとドアを閉じた。
逃げ道を塞がれた俺は諦めて服を脱いだ。
リッカもリンちゃんに説得されて一緒に入ることになったようだ。ついでとばかりにアイちゃんも入るようだ。
巨体な女も人口ロリ巨乳も生まれたままの姿になった。
「マヒルちゃんってすごく身体綺麗よね?お腹のくびれもあるし、やっぱり能力のおかげ?いいな。私も人の心を聞くことができる能力じゃなくてマヒルちゃんみたいな身体の部位を弄れる能力がよかったわ。体型とか気にしなくていいわね」
「僕の身体は能力でほとんど形づくっているけど、お腹回りとかは運動を頑張っているよ。肉体を改造できるからってそれはただ足しているだけだよ。使えなければ意味がないから運動も頑張らないとダメになっちゃうよ」
今の姿は能力のおかげで美脚とか腹回り、胸とかを形にしているけど。裏ではちゃんと運動を頑張っている。
目的は体型維持ではない。
脳や神経を動きに合わせて慣れさせる必要があるからだ。いくら能力で筋肉モリモリマッチョマンになってもいざっという時に身体が動かなければ意味がない。
昨日、アキラから逃げきれたのも普段の運動のおかげだ。能力を活用して体を動かして走ることも飛ぶことも普段の運動していたこそスムーズに行動できた。
運動をしていなかったら逃げきれていたとは思うけど能力が複数あるってバレていたかもしれない。
「そう言うことね。筋肉をつけただけで使わなければだんだん衰えていくみたいな感じなのね。ほぼ欠点が無いわね。魅力的で羨ましい能力だわ」
アイちゃんは俺の顔を羨ましいそうに眺めた。
「マヒルちゃんにはお願い事があります」
リンちゃんは無邪気にそう言った。




