小さな女の子に誘拐された
今日は土曜日だ。
つまり学校はお休みだ。
昨日は学校でいろいろあった。あんなに学校内を走り回ったのは小学校以来だ。
ミキミ達とコンビニで待ち合わせしたら、そっちの趣味はないのに筋肉ゴリゴリのマッチョから目が離せなくなった。あの人はきっと能力者だ。
その後は同じく魅入られていたミキミ達を正気に戻して近くのカフェに行ってお茶をした。
今日はやりたいことを思う存分やるぞ。
十時過ぎまで寝ていた俺はスマホ片手にリビングへ行くと我が妹ヨルノが宿題をしていた。
「おはよう」
「お兄ちゃんおはよう。お父さん達は今日も仕事だよ。冷蔵庫にご飯があるから温めて食べてだって」
俺に気づいたヨルノはそう告げて再び視線を宿題に向けた。
「ふーん」
キッチンに足を運び言われたまま冷蔵庫を覗くと今朝作ったであろう焼きそばがサランラップに包まれてあった。
焼きそばを電子レンジにぶち込んで温めて平らげた。
自室に戻り部屋着からジーンズとティーシャツにパーカーへと着替えて再びリビングに降りる。
「どっか行くの?」
「ああ、ちょっと散歩に行ってくる」
ヨルノに出かけることを伝えて出る。
スマホ見るにまだ誰からにも連絡がないから今日は一人の時間をゆっくりと楽しもう。
ヨルノはリビングで宿題と格闘しているのを確認して玄関先で女の姿になってハイドモードで出かける。
家から離れた人気のない場所でハイドモード解除した。
数十分ぐらい歩いていたら急に足が動かなくなった。あたかも靴がアスファルトに縫い付けられているみたいだ。
足元を見たら足の甲からニョキニョキって指が生えて、何かを握っているように閉じている。
「なんだこれは!」
驚いて尻もちをついた。倒れても足は地面から離れない上に横にずらすことも動かすこともできない。完全にぴったりとくっついている。
その原因は足の甲の生えている指が原因だろう。
「やあ、マヒルちゃん。昨日みたいに逃げられないよ」
声がした方へ視線を向けるとそこには生首があった。いいや、正しくは地面から頭だけを出したアキラだった。足の甲から生えている指はアキラの物で通り抜ける能力で足を通り抜けて掴んでいるような状態なのだろう。
これがアキラの能力なのか。
まあ、この状態でも逃げられる手段はいくらでもある。
例えばテレポートをすれば逃げられるだろう。
と思っていたら、目の前にふわりと小さな女の子が現れた。
尻もちをついた俺の顔を触ったと思えば目の前の景色が変わった。そこは車の中だった。
今の感覚はテレポートだ。
俺は今テレポートを使っていないはずだが、目の前に現れた女の子が使ったのか?
「なんだ?いったいなんなんだ?」
「君には一緒に来てもらうよん」
俺の問いかけに答えたのは昨日コンビニで見かけた雰囲気イケメンのマッチョだった。雰囲気イケメンは言いにくいからマッチョでいいや。
そして、ニョキって車の下からヒラヒラと手が生えてきた。マッチョが生えてきた手をファイトーいっぱーつって感じで掴み引き上げた。
その手はアキラの物で、引き上げられたアキラは俺を見てホッとした表情で顔をほころばせた。
いつの間にか俺の膝の上に車を乗せた女の子が座っていた。
「任務かんりょー」
「リンちゃんお疲れー。マヒルちゃんも車に乗せられちゃ逃げられないよね?」
俺の目の前でアキラと俺を乗せたリンちゃんと呼ばれた幼女がハイタッチをする。
なんで俺が乗せられたのはわからないけど、しばらく様子を見よう。女子高生を拉致するのは犯罪的だが、車に乗せたのは小学生くらいの女の子だしな。
ただ車に乗せられただけでここから余裕で逃げられる手段はパッと思いつくのに三つほど方法がある。
この四人は俺に危害を加えそうには見えない。俺をどこに連れて行くか見ものだな。ヤバいって感じたら速攻で逃げよう。
視界で車を見たら、案の定昨日のハイエースだった。運転席には昨日も運転していたぼさぼさ頭の男だ。
俺を拉致した形で車に乗せたのに目隠しや拘束はせずにそのままにしている。リンちゃんとマッチョはお菓子を勧められるしまつだ。
まるで友達の車で旅行でもしているようだ。
勧められたお菓子をほうばりながら車で四時間ほど走らせてついた場所は東京の高級マンションの駐車場だった。
車が走っている間、アキラやリンちゃんは寝ていた。
ほんとに旅行をしているって感じだ。見ている俺も気が抜けるよ。
「ここから降りてね」
車から降りた俺は案内されるまま高級マンションに入った。そのままエレベータに乗った。エレベータはぐんぐんと上がる。
チンとエレベータが止まるとマッチョがパネルを操作してパスワードを入力していく。
「ニッシー。スーパーアルティメット団はダサいっすよ」
「あはは、小さい子が格好いいからこれでいいって言うから」
エレベータの扉が開いて最初に目に入ったのは長テーブルを前に二人の青年がコカコーラを片手に談笑していた。それとついでばかりに胸の大きい女の子が全身鏡の前でいろいろなポーズをとっていた。
ポーズをとっていた女の子はアイちゃんだった。
「なんで小さい子って聞いて私を見るのよ。私はこう見えて高三なのよ。貴女より年上よ。胸もこんなに大きく」
「胸は僕がこの間大きくしたからじゃ」
「うるさいわね。叩くわよ?」
三下口調の少年と西村とのやり取りを聞いて、なんとなくアイちゃんの方を見た。
アイちゃんと目が合って胸を自慢するかのように両手で持ち上げた。俺は答えるように軽口で答えた。
アイちゃんって年上だったのか。小学生だと思っていたのに。




