学校
「今週の土曜か。めんどくさいな。断るのもタマコのあんな顔見たら断りにくいしな。腹をくくってデートに行くしかないか」
タマコとの約束を憂鬱に思いつつも教室が別だからと理由でミキミ達と別れた。
人がいない場所を探して、無人島へテレポートして俺の本来の制服である男子の制服に着替えた。
とある理由で一週間ほど無人島で干して放置していたから制服が凄く磯臭い。消臭剤を振りかけてもこの磯臭さは中々落ちないぞ。しょうがないからこのまま行くしかない。
ホームルームギリギリで教室に駆け込んだ。
急いで駆け込んだにも関わらず我がクラスメイト達は俺に注目もせずに友達と会話をしたり、読書に励んでいた。
いつも通りと言えばいつも通りだが、この一週間の間でいくつかの能力が一段階パワーアップしたのだ。そのおかげでクラスメイト達にはどんなに騒いでも見向きもされないし、体がぶつかっても相手は何も気づかれない。今後これをハイド状態って呼ぼう。
自分の意志一つで幽霊にみたいになれるようになった。そして特定の相手に姿を見せたり声を聞かせたりできる。
スパイごっこで遊ぶことができるし、お化けごっこもできたが、また俺のせいでとある町でガチでお化けが出ると噂が発った。
「お前ら、席につけ」
「せんせーい。外のマスコミどうにかしてくださいよ。学校の中に入ってくるのも邪魔でしょうがないですよ」
やつれた担任が教室に入ってきた。
バスの一件はいろいろ大変だったようだ。そんな状態の先生を気にせず、我がクラスメイト達は校門の一角を占領する記者達をどうにかしてくれと訴えた。
「すまない。そこまで対応できないんだ。保護者会に、教育委員会に、その他もろもろから問い合わせが止まないんだ。あー、先生も精神科で入院しそうだよ。その分お前らはいいよな。一週間休めて」
「先生、ホームルームを始めてください」
「ホームルーム?そうだった。すまんすまん。この時間だけは電話対応からやっと離れられるからな。ちゃんとやらないとな」
ブツブツと一人ごとをつぶやき始めた担任だけ聞こえるように能力で調整して声をかけた。
先生は相当疲れているようだ。俺から何かしてあげることはないけど。
今日は何もなく授業が終わった。
変わったことは同級生の三分の一ほどが休んでいた。全員の怪我を治したのに仮病でも使ったのだろうか。確かに全員退院したのは確認したが、三分の一が休んでいるのは精神的な理由で休んでいたが、嘘だろう。
あんな事件に巻き込まれただけで休むのはおかしいだろう。ゴールデンウィークで強盗や事故に遭ったミキミだって来ているのにな。
これがゆとり世代か。俺も同じ理由で休めばよかったぜ。それはミキミが心配して、家に押し入ってきそうだ。
放課後になった。
「お前ら、部活はやらずにまっすぐに帰れよ。あーこれから保護者会に提出する資料を作らないといけないのか。昼休みに始末書と報告書を書き終わったのに」
騒動が治まるまで部活動はやれないらしい。帰宅部の俺からしたら関係のない話だが、部活動に青春をかけるクラスメイト達には痛手な話だったらしく、落ち込む姿が見えた。
ピッコン、とスマホが鳴った。
画面を見るとミキミからのメッセージだった。内容は見なくてもわかる。一緒に帰ろうだ。ミキミのことだ。タマコやルカも一緒なのだろう。
ミキミのことだから無視したら鬼のように電話をかけてくるだろうから人のいない場所へ移動する。ハイド状態なら人の前でテレポートすれば誰も気づきはしないだろうけど、ハイド状態は完璧じゃないかもしれない。もしかすると西野の知り合いがあの男子生徒だけじゃないかもしれない。その人がハイド状態を見破れるかもしれない。
かもしれないばかりだが、備えに越したことはない。
テレポートする理由は女になって女子の制服に着替えるだけなのだが、誰かに見られないと分かっていても誰かの前で着替えるのは女湯に入るのに馴れた俺でも流石に恥ずかしい。
「よしっと、ミキミを探すか」
早着替えで女子の制服に着替えた。てか、今日一日男子制服が磯臭くて辛かった。身体に磯臭さが移っていそうだ。
銭湯に入りたい。
今度の休みで男子の制服を洗濯しないとダメだな。ハイド状態の影響なのかクラスメイト達はこんなにも磯臭いのに気にした様子はなかった。匂いすら気づかれないようだ。
スマホを見たら俺が着替えている数秒の間にミキミからのメッセージが二件入っていた。
ミキミのことだからどんなメッセージを送りつけているか予想ができるから見なくてもいいだろう。
今は一組の教室にきて俺を探していることだろう。周囲に誰もいないこととテレポートを見られていないことを確認してハイド状態を解除した。
人がいる場所でハイド状態を解除したら驚かせてしまう。
自身の身だしなみを確認して一組の教室に向かった。




