遠足14
彼女らに身体の隅々まで洗われた俺は身体を湯船に沈めた。
「酷い目にあった」
「もう、心外だな。精一杯の気持ちで背中を洗ってあげたのに」
「やっぱり私より大きかった。それに体のラインが凄く綺麗だった。それなのに私の身体は、私以外不公平すぎる」
二人は俺を挟むように隣に腰を下ろした。
被害者の俺に謝りもせずに飄々と上から目線で気持ちよかったでしょ?と問いかけるミナとは正反対にアイちゃんは自身の胸をペタペタと触れて心底傷ついたような感じを醸し出している。
身体中まさぐられる様に洗われた俺が精神的に傷つけられたよ。しかもアイちゃんは俺の胸を中心に洗っていた。
俺の胸に触れてそんな傷つけられました感を出されると俺も傷つくよ。
身体を洗うふりをして胸をルカ以上に揉むとか異常だよ。
ルカも俺の胸に触れてひどく落ち込んでいたけども、俺も胸には人を落ち込ませる力が宿っているのか疑いたくなる。今度、女の姿で出かけるとき胸を小さくして行こう。
「それでね。これから本題に入ろうかと思うんだけど」
ミナはいったん一呼吸置いて、真剣な表情で切り出した。
本題?なんのことだ。
彼女の口から何を言い出すか身構えた。
「マヒルちゃんはヘルメスさんって知っている?」
ヘルメスさん?まさか俺がヘルメスさんだと言うことにバレたのか。でも今の俺と体型が違うから。
いいや、彼女の様子からして俺がヘルメスさんとは思っていないようだ。
「ネットを騒がせている怪人みたいな人だよね」
「貴女、ヘルメスさんに会ったことがあるわね?」
アイちゃんが鋭い眼光で的外れなことを言う。
ヘルメスさんとは一生会えないと思うけど、だって俺がヘルメスさんご本人だもの。
「僕はヘルメスさんには会ったことが無いよ。会えないよ」
「いいの。隠さなくても。アイちゃんは人の心が読めるのよ。そういう力を持っているのよ?すごいでしょ?」
マジか。今まで俺が考えていたことすべてアイちゃんには筒抜けだったのか。
てか、俺以外にも超能力いるとは思わなかった。世界は広い俺以外にも超能力者がいても不思議じゃないか。
複数の超能力者が集まったらバトルロワイヤル的なイベントが起きるのか。って漫画の読み過ぎか。
俺はアイちゃんから少し離れた。それを見たアイちゃんは今にも泣きそうな表情をした。
たかが数十センチメートルぐらい離れた程度では変わらないか。もうすでに俺の頭の中を洗いざらい読まれているから離れても仕方ない。
悲しそうな表情する彼女がもの凄く可愛そうに見えた。
「ごめん」
人が秘密を知られるのを嫌う生き物だ。他人がそんな能力を知ったら友達や家族が離れていくだろう。それに友達や家族が自分に対して悪く思っていたら、酷いことを考えていたら、彼女はそんな苦しみを背負っているのだろう。
俺は距離を取ったことを彼女に謝った。彼女から距離をとってももうすでに遅い。俺の秘密なんてちっぽけだ。
回りに超能力を隠して遊んでいる程度だ。それと俺は男だ。
今は女の姿だけど、男が女湯に忍びこんだこととなる。彼女の気分次第で変態扱いされる。
でも俺は彼女達に連れてこられた被害者だ。俺に裸を見られたとしても彼女達の自業自得だ。警察に突き出される前にテレポートで逃げるか。
「いいの。いつものことだから。でもね私は自分の意志で他人の思考が読めるけど、フワンって感じのイメージが読み取れるだけ。何を考えているかなんて完全にわからないわ。貴女から読み取ったのはヘルメスさんのヘルメットと大柄な男の人のイメージを読み取っただけ。私の能力はそこまで強くないから人が隠したい物は読み取ることができるけどただのイメージしか読み取れないからその人が何を隠したいのかわからないから安心して」
なんだ。俺がヘルメスさんだってバレたわけじゃないか。
めちゃくちゃ焦ったじゃんか。
「マヒルちゃんはどんな能力を持っているの見せて」
ミナが能力を見せろと言ってきた。
見せてもいいが、全部見えるわけにはいかない。俺が男である以上は逃走手段や相手を無力化する手段をさらすわけにはいかない。
「えー。ほんの一部だけだよ?僕も見せるんだったらそっちも見せて、あなたも超能力者なんでしょ?」
「うんそうだよ。見たいの?私の能力ってアイちゃんみたいに凄くないよ?手品みたいな感じだよ?」
「あら、私の能力も手品みたいな物よ?」
ミナは恥ずかしそうに言って、アイちゃんが自虐地味に自身の能力を言う。
「私の能力はこれなの」
ミナが指先に拳大のお湯の塊浮かべて見せた。
「水の球を作れる能力?」
本人が言った通り手品みたいな能力だ。水を作れる能力なんだろうか。なんか遭難とかした時に便利な能力だな。
「違うよ!私の能力は念力、サイコキネシスなの!このくらいの物しか浮かせられないけど。今度はマヒルちゃんの番だよ」
ボケてみたのに強めに言われてしまった。自分のショボい能力を気にしているようだ。
今度は俺の番になった。
「僕の能力はこれだ!」
自分の顔の骨格を外人風に作り替えて髪を金髪に変えて、サービスで耳をとがらせてみせた。




