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遠足9

 外の様子を確認するためにノソノソと横たわったバスから這い出た俺は辺り見渡した。

 横たわる6台のバスが非常識な光景を醸しだしており、二台ほど土砂に埋もれていた。

 バスの回りは森に覆われており近くに農村があるようには見えず、バスが落ちた道路は土砂に埋もれているせいでどこから落ちたかわからない。

 雨はまだ冷たく降り続けていた。そんな雨は頭部から出血した血を洗い流せるほど強く振り続けている。天然のシャワーだ。

 そのおかげで着ていたブレザーやスカートが血と泥で汚れている。着替えて暖かいシャワーを浴びたい気分だ。


「そこの君ー!」


 非常識な光景に呆然と立っていると眼鏡をかけた少年が駆け寄ってきた。


「一組は怪我人はどれくらいいるのか?」

「わからない。僕も今起きたばかりでこれはどういう状況なの!」

「こんな状況で困惑する気持ちはわかるが今、落ち着いて聞いてくれ。全車両が土砂崩れに巻き込まれたんだ。俺達は怪我していない人を集めて土砂に埋もれた三組と四組のバスを掘り出しているところだ。心の整理が必要だろう。君は少し休んで置くと言い。俺は一組のバスの中に入って君のクラスメイトを起こしてくるよ」


 彼はそんなことを言い、俺が這い出てきたバスの中に入っていった。

 彼を見送った後に土砂に埋もれた三組と四組が乗っていたバスの下へ足を運んだ。

 土砂の除去作業は他のクラスのガタイのいい男子生徒や男性教師が頑張っていた。まともな道具がないこの状況で除去作業をやるのは、頑張っても丸二日ぐらいかかるだろう。

 ここは陰ながら手伝ってやろうではないか。

 念力で二つのバスの上にかぶさった土砂を除去した。土砂の上で除去作業をしていた男子生徒が何名か転倒させてしまったが地面はぬかるんでいるから大きな怪我はしないだろう。


「うわわ、今何が起こった」

「なんなんだ!泥が勝手に動いたぞ」

「そんなことよりバスの中にいる生徒を救出するぞ。おい!大丈夫か!意識がある者いるか!」


 念力で土砂を除去したら、変なパニックを起こしてしまった。そんな状況でも冷静な教師の指示で三組と四組の救出されていくのを大きな木の下に雨宿りしながら見ている。


「マヒルちゃん、あなた大丈夫?怪我とかしてない?」


 ルカが俺の隣に腰を下ろした。

 顔色が悪そうなルカは目立った怪我はなさそうで隣でバスから救出される生徒を見守っている。


「ルカか。君は大丈夫そうだね。僕は大丈夫」

「大丈夫じゃないわよ。本当最近ついてないわ」


 確かに、ゴールデンウィークは散々な目にあった。ゴールデンウィークから一週間もただずにこんな事故に遭うなんて不幸と言っていいだろう。

 雨が降り続ける空を見上げた。鈍い色の空は俺達の不幸な出来事を悲しんでいるように見えた。


「だけどミキミとタマコは大丈夫かな?」

「タマコはケロッとした顔でまたヘルメスさんのことを話しだしそうだけど、ミキミちゃんは心配よね」


 ルカと話し込んでいるとミキミとタマコが救出された。


「マヒルちゃん!ミキミちゃんとタマコが出てきたよ!行こう!」


 助け出されたミキミとタマコに駆け寄った。


「マヒルちゃーん。怖かったよ。えーん。マヒルちゃん血がついているよ!。どこか怪我したの?」


 ミキミが俺の胸にダイブしてきて顔を胸に埋めてくる。苦しいが我慢しよう。

 慰めるようにミキミの頭を撫でて好きにさせるが、服についた血に気づいたようで心配そうに見つめる。

 それを誤魔化すようにさらにミキミの頭を強く撫でる。


「ああ、僕は大丈夫だ。ミキミは怪我が無くてよかった。タマコも無事で」

「私はヘルメスさんと再会するまで死ねないわ。それとさっきの男子から聞いたんだけど土砂が勝手に動いたって聞いたんだけどもしかしてヘルメスさんが私達が助けてくれたの?」

「はは、タマコはこんな状況でもブレないな。こんなことになっちゃった。救助っていつ来るのかな?」


 さっきまで土砂に埋もれていたのにタマコは相も変わらずなこと言う。そんなタマコに苦笑をするルカは救援がくることを心配していた。

 スマホは圏外で助けを呼ぶことはできない状況だ。そもそも俺のスマホは土砂に飲まれた時にどこかに行ってしまったらしくいつの間にかなくなっていた。

 結構、課金したソシャゲの為にも見つけ出さなくちゃな。

 他の生徒も雨の中、空高くスマホを掲げて電波が届くところを探しているが、絶望的に繋がらないみたいだ。


 ようやく雨がやんだが、日が暮れ始めて夜になった。

 食料や水を徴収されて、俺を含む女子は一か所に集められた。

 各クラスの生徒達の顔は不安の中、すぐれないようで、着ている服は雨と泥で濡れたり、デロデロに汚れているからか、家に帰りたいと騒ぎ出す生徒が後を絶たない。

 この状況で不満を漏らさない人なんていない。しかもまだ怪我をしている生徒や教師もいるようで深夜、みんなが寝静まった時に治療をしよう。


 晩飯はクッキーひとかけらを支給されて物足りなかった。

 限りのある微かな食料を百人以上のいる人数を平等に分け与える理由は理解しているが、いつ来るかわからない救助を待つのは、果たしてここにいる生徒や教師はいつまで耐えられるのだろうか。


 夜の見張りは男子生徒や男性教師がするらしい。なんの為かはあんまり話を聞いていなかったからわからないが、ここにいる間は女子のままでいた方がよさそうだ。


「ミキミをお願い」

「マヒルちゃんどこ行くの」

「ちょっろトイレに行ってくる」


 俺の方を枕代わりにして眠るミキミをルカに預けて、人の目が届かない森の奥へ行って無人島にテレポートした。

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