遠足6
「ここまでくれば大丈夫だよね?あの人はいないよね」
「たぶん」
「あーあ、もう少し話してみたかったのに」
残念そうなタマコをよそに俺とミキミが近くに青年がいないことを確認するために周りを見渡す。
青年の姿は見えない。うまく巻いたようだ。
いや、自分の用事を自ら蹴って電話がかかってきたからそっちの方へ行ったかもしれないが、あのストーカー野郎がまだ遊園地にいる可能性もあるので見つからないようにしよう。
タマコがストーカー野郎を見つけたら行くかもしれないけど。
「だけどさっきの人結構イケメンじゃなかった?」
「カッコよかったけど私達の後を無言でついてくる人だよ?普通に怖いよ」
ルカが青年のことをイケメンと言うが、俺的には顔が整っているが普通だと思う。だが、ミキミもカッコいいと言うけど黙ってついてくるのが怖いと言って俺の手を握ってくる。
もしかしたら自分家に空き巣が入って家を荒らされたことで不審者にトラウマを抱いているかもしれない。ミキミとって今年のゴールデンウィークは災難だったと言える。
ちなみに俺の手はミキミが握る手の反対の手にはタマコの手を握っている。そしてタマコの反対の手をルカが握っている。なぜに手を握っているのかは手を離すとタマコが青年の下に行こうとしてしまうからだ。
だから俺とルカでタマコを連行しているのだ。
端から見たら仲良し四人グループが手を繋いで遊園地を楽しんでいるように見えるだろう。
この状態を作り出したタマコはスマホを弄れないとボヤいているけど。
「さっきの人のことは忘れて、あそこにソフトクリームを売っているよ!買いに行こうよ」
「わわっ、待って引っ張んないでよ」
青年のことを忘れようとしているのか、丁度行きついた場所にソフトクリームやクレープ、かき氷などが売られている売店を発見したミキミが俺の手を引く。
なんで俺の手を引くんだよ。タマコやルカだっているのにな。
ミキミが手を引くもんだから芋づる式でタマコとルカも引かれることとなる。
ソフトクリームを買った。
俺が買ったのはチョコだ。タマコはバニラでルカはストロベリーを買っていた。ミキミは変わり種のゴマのソフトクリームを買っていた。
ソフトクリーム屋の近くのベンチで四人並んで食べる。
「次はどこ行く?」
「時間もまだあるみたいだし、」
ソフトクリームを片手にルカがパンフレットを器用にスカートのポケットから出して広げてみせる。
ある程度遊園地内を回ったし、アトラクションも高いところに上る物以外はある程度遊んだ。遊んでいないアトラクションは釣りやアーチェリーなどくらいだ。
後はゲームセンターコーナーぐらいしかない。
そのコーナーにあるのは一昔前のアケードゲームらしい。
「マヒルちゃんってゲーム好きだったよね?残りの時間はゲームセンターコーナーで遊ぼう。みんないいよね?」
ニッコリと俺の顔を見てミキミが笑う。
ゲームは好きだけど、寝るのを惜しむほどは、やっているな。新作のテレビゲームは徹夜するほど好きだけど。あくまで一人でチマチマレベル上げをしたりするアクションRPGのゲームや暇つぶしがてらにするソシャゲーがほとんどで外に出てまでゲームをするほど好きではない。
だから暇つぶしにゲームセンターに行く程度で、置いてあるアケード系のゲームはあまりやらない。
「私はいいよ」
「暇になっちゃったしね。行こう。遊園地にゲームセンターがあるまんて珍しいよね」
俺達四人はソフトクリームを食べきってゲームセンターコーナーへと向かった。
ゲームセンターコーナーに置いてあるゲームはすべて専用のメダルでプレイするようで入口に「お金で遊べませんので機体にお金を入れないでください」と注意書きが書いてあった。
「最初は何やる?」
「あっちにクレームゲームがあるよ。見にいってみよう」
「本当だ」
ルカとミキミがクレーンゲームを見つけて駆けていく。ルカが離れていくのを確認したタマコがゲームセンターコーナーから出ようとしていた。
すぐさまタマコの手を掴む。
「タマコ待って、さっきのお兄さんのところへ行く気じゃないよね?」
「マヒル、離して。あの人にまだ聞きたいことがあるの」
「あの人は頭がおかしいって、女子四人の後を付け回す男だぞ。ただの変な人だってやめときなって。お願いだから」
タマコを必死に止める。
タマコの意志はとても固く、行くのをやめない。
「わかった。今度、ヘルメスさんに会わせてやるから行かないで」
口からポロっとそんなことを言ってしまった。
「それ本当!」
クルっと回ってタマコがキスできるほど詰め寄ってきた。
タマコは鼻息が荒く、顔にあたる。
「どうやってヘルメスさんに会えるの!何時!どこで!どうやって!」
「待って待って。ストップストップ。そんな勢いよく質問されたら答えられないよ」
捲し立てるように質問をするタマコを抑える。
「まず僕はある憶測を立てた。これはまだ確証を得てない憶測だから会えるかどうかはわからないから恨まないでよ?」
学者気分でタマコに語る。
前置きを聞いてコクコクと頷くタマコをチラリと見て続ける。
「ヘルメスさんはある条件下で出現しているようなんだ。その条件は内緒なんで言えないのだけど、その条件を満たしている場所を予想して合わしてあげるからさっきの人のところに行かないで」
俺はタマコに嘘をついて止まらせた。
ヘルメスさんは条件で出現していない。俺の気分次第で北に行ったり、南に行ったり、外国に行ったりしてランダムだ。
ただこんなことを言ってしまった以上はヘルメスさんの姿でタマコと一度会うしかないだろう。
なんだか言ってしまったが、大変なことが起こりそうだ。
「マヒル、それ約束だよ!」
あまりにもヘルメスさんに会えるのが嬉しのかルンルン気分でミキミ達が遊ぶクレーンゲームへ行くタマコの笑顔が眩しく見えた。




