遠足3
「いったい何だったんだ。あの男は」
近くの岩に腰を下ろして海を眺めた。向こうでは雨が降って天気が悪かったが、無人島の天気は晴れていた。遠くには厚い雨雲が見えるけども。
さっきの青年があまりにもしつこかったため、トイレに逃げ込んで無人島にテレポートをしたが、この後どうするか考えないとな。
バスに置いて行かれてこれから好きに過ごすとはいえ、バスが向こうについたら点呼は必ず行うだろう。
バスに乗り込む前に出席確認を取ったから点呼をしないことを願うが、ミキミ達が俺がいないことに気づいたら先生に聞いて俺をどこかに置いて来たことが発覚して警察沙汰にまで発展してしまったら嫌すぎる。
「しょうがない。空からバスの後を追うか」
自由時間になったら好きに過ごすか。
先ほどテレポートしたトイレの近くにテレポートをした。
俺に言い寄ってきた青年はバイクに跨り、電話をしている。電話相手に逃げられたよって言ってい。俺をどこかに連れていくつもりだったようだ。
逃げて正解だった。
空を飛んでバスを探す。
バスが行ってからさほど時間が経っていないから道を目に追っていると列をなして走るバス群を発見した。
バスに乗っている乗客にバレないように並行して上空を飛ぶ。
道の途中の村と街の人達や他の車に乗る人達から気づかれないようにするのは本当に大変だったが遊園地に到着した。
到着した遊園地に違和感を覚えつつもバスの陰にテレポートをする。
生徒が出てくるのに合わせて陰から出てきた。
あれ、制服が違うな。って別の学校のバスやないかい!
バスを間違えた。だから遊園地の名前を見て違和感を感じたのか。遊園地も違うか。
この際だからここの遊園地で遊ぼうかな。でもあっちで警察沙汰の可能性を拭わないと後々面倒なことになる。
ただ問題が発生した。目的地である遊園地の場所が分からない。
そうなればポケットに入っているスマホで調べればいいじゃないかとなるが、名前も忘れてしまった。
この際だからミキミに聞くしかないか。
『俺達が行く遊園地の名前ってなんだっけ?』
『○○ランドパークだよ。マヒルちゃんも楽しみなんだね。もうすぐ着くから一緒に回ろうね』
メッセージを送ったら速攻でミキミから返信が来た。
まだバスは着いていないようだ。まだ間に合うはずだ。
スマホで目的地の場所を調べて、すぐにテレポートしてバスが到着するのを駐車場の自動販売機の隣で待つ。
待っていると駐車場にバイクが入ってきた。そのバイクは『ニンジャ250』だった。
まさかと思って自動販売機の後ろに隠れた。
青年はヘルメットを外してあたりをキョロキョロと見回している。誰かを探しているように見える。
なんでいるの!あの人って俺のストーカーなのかよ。ヘルメスさん語らい中のタマコ並みに怖いわ。
まだ気づかれないから今の内に無人島にテレポートをして、女子モードになって女子の制服に着替えた。
男の顔だとバレているから女子になればバレないよね。
自動販売機の陰にテレポートしてバスが来るまで隠れる。
それから数分しない内にバス群が到着したが、青年が俺が隠れる自動販売機にまっすぐ近づいてきた。
自動販売機の前で立ち止まった。彼は自動販売機で買い物をする雰囲気ではない。視線もジュースを何買うか自動販売機のパネルに向けるのではなく自動販売機の裏を覗くように重心を横にずらして俺の様子を窺っている。
俺が隠れているのはバレているようだ。
「そんなところに隠れてどうしたんだい?」
青年は話しかけてきた。
「お兄さん誰?話しかけないでくれる」
長めに伸ばした前髪で目元隠して、猫背でのそのそと自動販売機の陰から出てきた。
思っていた人物と違っていたからかポカーンと口を開く青年を冷たくあしらってバスに駆け寄っていくが、手首を掴まれた。
「待って、君って○○パーキングエリアにいた?それとゴールデンウィークで観覧車に乗っていた?」
「それどこよ?いい加減離してくれる?しつこいと声を上げるわよ?」
「ごめんごめん。人違いだったようだ」
ヒステリック気味にイライラしている風に青年にあたる。
「それとこれあげる。私そこに住んでいるから何か困ったことがあったら来てね。それと君みたいな子のたまり場になっているから友達が欲しいならね」
青年から渡されたのはノートの端を破ったメモだった。それには東京都から始まる住所が書いてあった。
興味がないからクシャクシャに握りつぶしてポケットに入れた。
俺みたいな子のたまり場になっているから友達が欲しいなら来てか、友達が欲しい奴ならそんな怪し過ぎるが、甘い言葉にほいほいと言葉に乗ってこの住所の場所に訪れるのだろうか。
あんな怪しさ満点の男について行くバカはそんなにいないだろう。友達なんて必要ないし。
今日は付きまとわれることはないだろう。
しつこい人は追い払ったから、後はみんながいるバスに行くか。
☆
「あんな光を放つ子が二人もいるなんて、いや光り方があまりにも瓜二つだ。あの子は確か観覧車で見かけた子だ。やっぱりパーキングエリアにいた子と同一人物か」
青年はマヒルの後ろ姿を見送って、ぼそぼそと呟いた。




