帰りの車と妹の様子
「今日も昨日もごめんね。嫌な思いしたよね?」
と田中さんが運転する車の中でミキミが謝罪をしてきた。
昨日の空き巣の件とつい先ほどの観覧車の事故のことを謝っているのだろうけど、どちらもミキミが謝る必要がない。
ミキミにとって運が悪かったと思う。家の中を荒らされるわ。高所恐怖症になるわで散々だろう。
「ミキミは悪くないよ。悪いのはミキミ家に入った空き巣だし、観覧車のメンテナンスをサボったスタッフだ。だから謝ることはない。みんな怪我をしてないし、昨日の件もそうだし、僕はあんな体験ができて運がいいとすら思っているよ。運がよかったって思おうよ」
「マヒルちゃん」
俺の話を聞いてミキミは感極まって目に涙を浮かべた。
そこで泣いちゃうの?今の話に泣く要素あったの?ミキミを元気つけようとしていたけど泣くレベルではないと思うけど。
情緒不安定すぎるだろう。いや、怖かったのだろう。
家に空き巣が入ってきて、観覧車に乗ったらゴンドラが落ちた。俺やルカ達に気を使ってずっと我慢してきたのだろう。
田中さんが来るまで俺の胸に顔を埋めていたし。我慢の限界が近かったのだろう。
「おいおい、泣くことないだろう」
「だって、だって、マヒルちゃん」
「涙を拭いて、高校生でしょ?」
ミキミの頬から滴り落ちようとした涙を親指で拭ってあげた。
こういう時はハンカチで拭いてやるのがいいのだろうけど今の俺にはハンカチなどのオシャレな布切れなんか持ち合わせていない。
「大丈夫か?」
「うんありがとう。でも高いところにはいけない。もうすぐ遠足で遊園地に行くのに」
そうだ。ゴールデンウィークが終わったらすぐに遠足なのだ。
うちの学校はゴールデンウィークが終わって一週間後に遠足に行く。遠足の場所が遊園地なのだ。ゴールデンウィークが終わってすぐ学校イベントで遊園地に行くのはどうだと思うけど学校側に何か考えがあって組み込んでいるのだろう。
遊園地にはコースターなどのアトラクションがあって高所恐怖症になってしまったミキミにはきついイベントになった。好きでボッチをしている俺にとっても参加したくないイベントだ。
まあ、どうにでもなるか。
「遊園地って高い乗り物とかいっぱいあるよね?どうしようマヒルちゃん」
「いや何も絶叫系のアトラクションばかりではないだろう。ゴーカートとかメリーゴーランドとかあるだろう。そういうので時間を潰せばいいだろう」
ルカ達も当分は高いところには上りたくないだろうし、三人で大人しくコーヒーカップやメリーゴーランドを楽しめばいいさ。
「ミキミちゃんお家に着いたよ。マヒルちゃんはお家まで送ろうか?」
「いえ、近くに住んでいるので大丈夫です」
「マヒルちゃん遠慮しなくていいのに。田中さんに送ってもらった方がいいよ」
田中さんの家まで送る申し出をきっぱり断った。
俺がその気を出せばコンマ一秒で家の前に着けるけど、フリフリのワンピース姿じゃ家に行けないから無人島で一旦着替えなくちゃいけない。だから俺にとって送ってもらうのは都合が悪い。
今の俺は女だし、フリフリのワンピースで出かけるのはその他の人達は何とも思われなかったが、家族にこの姿を見られたら女装癖に目覚めたのかと思われる。胸も膨らんでいるからパッドも仕込んでいると思われるから家族に変な誤解を持たれる恐れがある以上この姿を見られたくない。
「じゃあな。また学校で」
家に着いて落ち着いたミキミに別れ告げた。今夜は田中さんがいるから大丈夫だろう。
そしてゴールデンウィーク中はもう会うことはないだろう。鬼のように電話を掛けてくるかもしれないが、それも全部無視だ。
「酷いよ。まだゴールデンウィークはまだあるのに、それに着ていた服はどうするの?」
「そんなの学校で待たせばいいだろう。それか捨てても構わない」
「もったいないよ。私が選んであげた下着もちゃんと洗ったのに、田中さんが」
田中さんが俺の下着(女物)を洗ってくれているか。知っていたけど。
家事をすべて田中さんに任せているからミキミは家事があんまり得意ではない。最近の女子高生は大抵家事は両親に任せって切りで、一人暮らしじゃない限り自分で進んで家事をする女子高生は俺の回りにいない。
俺の女友達はほぼゼロに近いからその累計は独断と偏見だから当てはまらないけども。
今付けている下着からワンピースからすべてミキミから借りた(着させられた)物だ。ゴールデンウィーク後に返せばいいだろう。
俺が昨日着ていた服は潮風にあてられて少し痛んでいたから捨てても構わない。新しいのを買えばいいだろう。でもミキミはきっと返すだろう。
ミキミのことだから俺の家まで来て返しに来るかもしれない。それも両親や妹に不穏な誤解を生むかもしれない。
「わかった。明日の夕方に今着ている服を返し来るからその時に昨日着ていた服を取りに来る。じゃあな」
と言って人気がない場所まで移動して無人島へテレポートした。
着替えて家にテレポートをした。
「お兄ちゃん帰って来たんだ」
「ああ、さっきな」
「昨日、電話した人って本当にお兄ちゃんだった?」
「そうだよ?俺意外に誰がいるんだよ。って言うのは嘘で友達の姉が代わりにしてもらったんだ」
ミキミの家に泊まる際に連絡したときの電話に疑問を思っているのだろう。明らかに女の声だったから友達の姉が電話の相手だと話した。
ヨルノはそれで納得してくれるだろう。
「そう、昨日は家から追い出してごめん」
とヨルノはそういって自室に入っていった。
明らかに様子がおかしいが、昨日家から追い出されたことに拗ねて友達の家に泊まったと思ったかもしれない。
明日になれば忘れてケロッといつも通りになるだろう。




