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観覧車

 俺達は電車に乗ってある場所に向かっていた。

 ある場所と言うのは俺にはわからない。ミキミの家から出てからタマコが教えてくれなのだ。

 答えを聞いたら、ヘルメスさんの話をしようと言うので、タマコのヘルメスさん語らいを聞くくらいなら聞かない方がマシだと言うことで聞いてない。

 まあ、電車に乗ったタマコは勝手にヘルメスさん語らいを始めた。

 俺達以外の乗客がいなくてよかった。他の乗客の皆さんにタマコによるヘルメスさん語らいを聞かせるのはあまりにもかわいそうすぎる。

 ちなみに昨日着ていた服はミキミが洗濯してしまったからミキミから服を借りた。

 てか、ルカとタマコはシンプルな服装なのに俺だけフリフリのワンピースなのよ?まだ五月だから太ももが寒い。


「ねえ?タマコ電車に乗って私達はどこに向かっているの?ヒントでいいから教えてよ」

「それはついてからのお楽しみさ。そうだね。ヒントを言うなら買い物ができてアトラクションにも乗れる場所かな」


 ルカがどこに向かっているのか気になりすぎてタマコに再度聞いてみるが、答えてはくれない。

 着いてからのお楽しみということにしとこう。

 俺は電車の窓から外を眺めた。立ち並ぶ建物の奥に円の建物が見えた。

 その建物は円の縁に小さな小部屋をいくつもぶら下げて水車のようにゆっくり回る。幾人もの恋人達がデートでこぞって乗り込み、そして夜になると光るイルミネーションと化す。その名も観覧車。

 リア充達のためのアトラクション、それが観覧車。


 そういえば、人生で一回しか観覧車に乗ったこと無かったな。

 両親共に高所恐怖症であんまり遊園地に連れてってもらえなかったけど小学生時代に親の目を盗んで妹と二人で観覧車に乗った。

 外の眺めを見るだけのアトラクションだったから当時はがっかりした。妹ははシャギまくってゴンドラをグラグラと揺らしていた。

 両親が高所恐怖症なのがよく分かった。凄く高いところで揺らされると凄く怖かった。

 あの時のことは懐かしく思う。


「マヒルちゃんどうしたの?」

「いや、ただ懐かしさに浸っていただけだ。ほら遠くに観覧車が見えるだろ?」


 懐かしい気持ちに浸っているとミキミが寄ってきた。

 俺は奥に見える観覧車を指した。


「うん、見えるね」

「あれではないけど遊園地の観覧車で妹と乗ったことを思い出してね」

「ヨルノちゃんと?」

「ああ、小学生の時の話だけどな。家の両親は高いところがダメで遊園地に連れてってもらえなったんだ。それで妹が遊園地に連れてほしいと駄々をこねて、行くことになった。その時が初めて遊園地に行ったんだ」


 初めて行った遊園地のアトラクションはどれも楽しかった。メリーゴーランドやコーヒーカップなど高い場所に上らないアトラクションばかりだったが、楽しかった。観覧車だけは解せなかった。

 あの時以降は遊園地に連れてってもらえなった分、動物園や水族館、プールなど高いところに上らない場所なら数えきれないほど連れてってもらった。

 まあ、超能力に目覚めてから高層ビルの屋上や東京タワーの天辺などいろんな場所に行ったけど。


「二人とも次で降りるみたいだよ」


 ルカに声を掛けられた。ミキミと窓の外を見ながら話していたら、目的地についたようだ。

 電車から降りた場所は高層ビルが立ち並ぶいかにも都会と言った場所だ。市から出たら目と鼻の先に山や森が見えるけど。東北の都会なんてそんなもんさ。


「タマコ着いたけどこれからどこ行くのよ?」

「ん?もうすぐさ、あ、でもバスが来るには時間があるな。待っている間暇だからちょっと見て回ろう」


 ルカの話をはぐらかしたタマコがスマホを見て歩き出した。俺達三人はタマコを追いかける。

 まったく自由な奴だな。俺も人のことは言えないが。

 駅前でクレープを食べたり、ぐるりと駅の中を見回ったりして時間を潰した。


「もうそろそろバスの時間だ。行こう。バスに乗ったら着くよ」


 バスが来る時間になり、停留所でバスに乗ってタマコが言う目的地へ向かった。

 バスに揺られて四十分で目的地に到着した。

 目的地は電車で見えた観覧車があった場所だった。

 観覧車の隣には大きなショッピングモールが並んでいた。ここはモールで買い物ができて観覧車にも乗れるアミューズメント施設のようだ。


「ここがタマコが私達を連れて来たかった場所?」

「うん。行くとこがないなら行ってみようかなって思って。それにみんなで乗って見たかったから」


 タマコは言う。


「みんなであれに乗ろう」


 ニッコリと可愛らしく言った。


「しょうがないわね。タマコが乗りたいって言うなら乗ってあげるわ」

「タマコちゃん最初からそう言ってくれればいいのに」


 ミキミ達は観覧車に乗ろうとしている人達の列に並ぶ。


「マヒルちゃーん早く来なさい。もしかして高いところダメだった?」

「高いところは大丈夫」


 俺はミキミ達と列に並んだ。その時嫌な予感がするような光景を見た。

 ふと、観覧車のスタッフと思われる係員二人が物陰で揉めているのが見えた。

 気になったので視界を言い争いをしている二人まで飛ばした。


『今年になってからメンテナンスを一回もしてないんだ』

『業者が急にキャンセルになったんだしょうがないだろう。別の業者に頼むにもうちには資金が底を尽きたんだ』

『だからってなんで観覧車を停止しないんだ』


 嫌な予感がするが、何とか大丈夫だろう。

 俺は楽観していた。

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