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セバスと無人島

 草木をかき分けて出てきた案山子、セバスに驚いた。あの廃墟の街のような場所に置いて行ったはずなのに俺の前に現れたのか?てか、どうやって俺を見つけたんだ。


「げ、セバス。どうやって僕の場所が?」

「はい!お嬢様と出会えたのは単なる偶然です。少し森の奥へ行った場所に扉があるのです。そこから出てきまして、人里へ目指してました。今丁度人影を見つけたところそれがお嬢様でした。ああ、なんという幸運でしょうか。我らの大恩人のお嬢様と出会えるなんて」


 俺と再会できて心底喜んでいるセバスとは裏腹に俺はコイツからどうやって逃げるか考えていた。

 今テレポートで逃げ切れたとしてもたぶんセバスは簡単に諦めてはくれないだろう。人前でセバスに見つかるよりも手元に置いておいた方がいい。四次元空間に入れるとか、無人島に放置とか、スーパーアルティメット団に預けるとか。今あげた三択が最も俺にとって都合がいいだろう。

 今は誰かに見つかる前に移動した方がいい。今いる場所の近くに村があるから人に見つかる前にテレポートをしよう。


「セバス移動しよう」

「移動ですか?まさかお嬢様が住む場所に案内してくれるのでしょうか?」

「住みかと言うよりも僕が通っている場所なんだけど、まいいや。行くよ」


 セバスと共に無人島へテレポートをした。


「ここは?目の前に大きな湖?先ほどの場所とは違いますね。ここがお嬢様が住む場所ですか?」


 セバスは目の前に広がる海を見ながら質問を俺に投げる。


「住んではいないけどよく遊びにくる場所だ。目の前にあるのは湖じゃなくて海だ」


 無人島なら誰にも見つからないだろう。安心した俺は質問に答えてやる。


「これが噂に聞く海ですか?!」


 オーバーリアクションで目の前にあるのが海だと分かると一本しかない足で海の中に入り確かめ始めた。

 波がセバスを拒むように砂浜へ押し戻そうとセバスの腰に当り、逃げるように戻っていく。それを幾回か繰り返して振り返る。


「海始めて見ました。とても心地のいい場所ですね。今までいた場所とは違います。ここは明るくて風が暖かい。太陽が綺麗です。ここはとても穏やかな場所ですね」

「そうか。気に言ってくれてよかった。じゃあ僕はまた来るよ」


 俺はセバスを無人島へ放置することに決めてテレポートで帰った。

 とりあえず明日も無人島に来て、様子を見よう。

 セバスは見た目はただの案山子でも人格があり、自由に移動ができる案山子だ。無人島を歩き回るくらいはできるだろうが、本島から離れた無人島から出ることはできないだろう。一人で寂しい思いをすればあの廃墟の街へ帰りたいと懇願するだろう。

 今は様子見で手元に置いておくだけだ。俺のお気に入りの無人島が少し賑やかになっただけだ。さほど変わらないだろう。


 次の日、テレポートで無人島に来た。


「お嬢様!お戻りになられましたか。私、お嬢様の為に家を建ててました。まだ見苦しい現状ですが、見てください」


 セバスに手を引かれて連れてこられた場所には無骨ながらも壁ができていた。

 この壁ってこの島に置いていたコンテナの一部じゃんか。セバスはどうやってコンテナを解体したの。あれ金属だよ。


「あった資材を使ってお嬢様にふさわしいお住まいを頑張って建てています。もう少しで完成しそうですのでお待ちください」


 嬉しそうに言うセバスに俺は。


「ああ、まあ、頑張って」


 頑張って家のような物を建てようとするセバスにそんなことしか言えなかった。

 廃墟の街にあった民家の平屋を参考に無人島にあるもので再現して建てようとしているのだろう。


「はい!お嬢様が気に入るお住まいを必ずや建てて見せます。そう言えばもう一人のお嬢様はどうしたのでしょうか?お姿が見えませんが?」

「ん?タマコのことか。この場所からかなり離れたところに住んでいるから会えないだけだ。その内会えるだろう」


 嘘は言っていない。今いる無人島から住んでいる町はかなり離れているから嘘をついているわけではない。一番近い陸地からも離れているから島の周りは海ばかりで地平線先も陸地は見えない。たまに船を見かけるだけで面白みも無い場所だ。


「そうですか」


 寂しそうに言うセバスの身体は小さく見えた。

 それから毎日無人島に訪れた。顔を出すたびに家っぽい物がだんだんと変な方向へ行っている。人が住む家と言うよりもユーモアあふれるデザインのアート作品になっていく。セバスも初日こそは生き生きと建てていたが、日にちが過ぎていくたびに元気がなくなっていった。思うように建てられないからだろう。建築の知識が皆無な案山子じゃあまともに建物なんて建てられないだろう。


「お嬢様申し訳ありません。思った通りにお住まいを立てられませんでした。私はなんて役にたてないのでしょうか」

「はあ、今度は一緒に建てるか」

「よろしいのですか?」


 嘆くセバスを見てため息が出た。いろいろと思うところはあるが、セバスの頑張る姿を見て俺の中の何かが動いた。

 その日から毎日数時間、セバスと一緒に建築することになった。

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