不思議な学校の現象17
俺の眼下には痛みで蠢く手の化け物達がいる。今の俺は念力で体を浮かせて、薄暗い空を飛んでいた。
「さてどうやって倒そうか。このままテレポートでバラバラにして街のまちこちに捨てるだけなんて芸が無いな」
手の化け物を見下ろしながらそう呟くと俺の死角から指先を失った方ではない方の手の化け物、言いにくいから指先が無くなった方を右手、ガラス片で傷だらけなのを左手と呼ぼう。左手が俺を捕まえようと襲って来た。
当然、視界で襲ってくるところは見ていたので三メートルくらい右隣にテレポートする。
すると左手は空ぶって空気を掴んだ。俺を掴み損ねたことに苛立って握ったままの拳を裏拳するかのように俺にぶつけようとしたが、その拳が痛みで蠢く右手にドスと重い音を発てて直撃した。
今度は左手の方を右手のところまでテレポートさせたのだ。
裏拳が痛かったのか左手が右手を優しく撫でるように摩っている。よく見ると裏拳が当たった部分が少し赤みがかっていた。本当に生きた人の手みたいで気持ち悪いと思った。傷口から血も出るし、叩けば皮膚が赤く腫れる。それに拳を力強く握ると手の甲に血管が浮かび上がる。血が流れ出るから血管があるのは当然だと思うけど、ポンプの役割をしている心臓が無いのにどうやって流れているのか不思議だ。
腕や胴体はこことは別の次元にあって何らかの現象で繋がっているのか?目の前の両手は本当に謎な存在だ。
たぶん両手を倒しても胴体の方を何とかしないと案山子達の長であるモクの願いある神を倒せは達成しないだろう。しかも手が二つあるのにモクは神と複数形ではなく単一系みたいなことに言っていたし両手はそれぞれ別の個体ではなく一つの生き物、案山子達が言う神の身体の一部なのだろう。両手を倒しても胴体を倒さないと意味がない。
「おやおや、イライラして仲間割れかな?そして今は仲直りのなでなでなのか?早くしないと俺はどこかに行くよ」
地上へと降り立った俺は右手を摩る左手を煽ってゲシゲシと蹴りを入れる。今、女の身体になっている俺は体重も筋肉もそんなにないから大きな手にしてみればそんなに痛くはないだろう。イライラさせるには十分だろう。
俺の言葉を聞いた両手達はゆっくりと浮かび上がる。
今度は両手で来るつもりらしい。
右手の指先はまだ血が流れ出ていて痛々しいが、怒りが頂点まで登ったようで痛みを無視して俺を捕まえる気らしい。左手はそこらへんに生えていた手頃な太さの木を引き抜いてこん棒のように振り上げた。
それで俺を潰す気でいるらしいが、俺はそう簡単に潰される気はない。
両手の魂胆は振り下ろされた木を避けたところで捕まえようと考えているようだけど、そんな幼稚は考えじゃあ、超能力を持っている俺を掴めることができない。てか、さっきテレポートで躱されたのに学習しないな。しかしこれは誘っているのか?
「マヌケが」
俺は両手達の誘いに乗ってみることにした。
俺が罵倒すると同時に左手は持った木を振り下ろす。誘い通り隣にテレポートしたら、予想通りに右手が俺を捕まえようと勢いよく襲い掛かってくるが、俺は念力で体を上の方へ引き上げる。あたかもジャンプして躱したように見えただろう。
ジャンプした俺は両手達が壊した民家の中に倉庫が混じっていたらしく、それの中であったものでいいものを見つけた。それは長くて広がった歯を持った農具で干し草など持ち上げたりといろいろ使い道のある優良な農具、フォークだ。
それをテレポートで引き寄せて右手の甲に突き刺す。もともとまとまった干し草を持ち運ぶための道具なのだが、今は食器のフォークみたいにデカい肉に突き刺したのだ。手が大きすぎるので農具用のフォークが食器のフォークに見える。手の化け物がスコップを持てばスプーンに見えるだろうけど。
丁度赤く腫れた部分に刺さったので痛みで暴れる。手の甲に刺さっているから片手では抜けないのだろうから左手が持った木を捨ててフォークを抜くべく右手に近づく。
俺はその隙を見逃さずに倉庫にあった鍬を引き寄せて、角度を考えて大きく振りかぶってスイングする。
鍬の刃の部分が左手に浅くではあるが刺さる。追加で草刈り鎌を念力で数本投げる。
鎌がドスドスと左手に刺さる。痛みを感じてか、それとも鎌と鍬を抜くためか左手は激しく振り払う素振りを見せる。
「そろそろ頃合いか」
両手達は遊び半分で案山子達を壊してきた。それは街のいたるところにある案山子達の残骸を見れば分かるし、俺になぶり殺しされるのは因果応報。どこかで見ている案山子達もいたぶられる神を見て満足するだろう。
早く始末をつけないとな。タマコも待っていることだし。
「さて。ぐああああああ」
止めとばかりにテレポートでバラバラにしおうとしたとき、背中に衝撃が走って飛ばされた。まるで車に引かれたような衝撃で肋骨や背骨が砕けて、腹部にある内臓が潰れた。
数メートルぐらい飛んだ。地面に横たわる俺は見て呟いた。
「おいおい、さっきまでいなかったよな」
俺が目にしたのは大きな両手達と同等ほどの大きさの両足だった。両手達と同じく足首より上は無い。
その両足の片方が俺を蹴ったのだ。そのおかげで俺の身体はぐちゃぐちゃになった。
すぐに体を治癒して元通りになったが、四対一の状況になった。
両足達はどこから湧いて出たのか知らないが、不公平だろう。




