女子会とお泊り会
夏よ。爽快な暑さの夏よ。私にアイディアを与えたまえ!!!
田中さんの話を聞いているうちにミキミの家に到着した。
「ここがミキミちゃんのお家?」
「大きい」
「みんな入って、田中さん、これと一緒に紅茶をお願い」
「これはケーキ?わかったわ。ミキミちゃんの部屋に運びますね」
ミキミは田中さんにケーキを渡して、ミキミの部屋へ向かった。俺達もミキミの後について行く。それと固まっているルカとタマコを正気に戻して。
ミキミが住んでいるところって高級住宅街だから、ミキミの家の周りも豪邸がある。近くに俺の家もあるのだが、俺の家は高級住宅街の隅だから大きさも普通だ。ミキミと家と自分の家を比べてなんだか虚しい気持ちになった。
「ねえねえ。ミキミちゃんのご両親ってどんな仕事しているの?」
「ルカ止せって」
「タマコちゃん大丈夫だよ。お父さんは普通の会社に勤めているだけだよ。お母さんはパソコンでチョコチョコやっていたら儲けたって感じだよ。マヒルちゃんそうだよね」
「なんで聞くの?ミキミの家の家庭の事情なんて分からない。なにせミキミのお父さんは何の仕事をしているかわからない。けど小学校の時、ミキミのお母さんはFXと投資で大成功したじゃないか」
よそ様の家庭の事情なんてどうでもいい。ミキミの両親は長い間家に帰ってきていないみたいだけど、どこで何をしているかわからない。よそ様の事情に首を突っ込むなんてそんなめんどくさいことしたくはないしさ。
この時期、ゴールデンウイークなのに仕事なんて忙しいのだろうか。俺の父親も夜遅くまで仕事でいないけど。ゴールデンウイークに仕事だなんてって嘆いていたよ。
それでミキミが寂しい思いをしているのは知っている。だから田中さんはミキミが寂しくならないように砕けた態度でミキミに接している。ミキミにとって田中さんは姉であり、母親のような存在なのだ。
「二年以上お父さんとお母さんにあってないから何をしているか忘れちゃった」
「ミキミちゃんごめんね。変なことを聞いて」
ルカはミキミの家庭の事情に察して謝った。
「ミキミちゃんいつもの茶葉でいい?」
「田中さんありがとう。うん、いつもの奴で大丈夫」
静まりかえった空気を壊すようにタイミングが良く、おぼんを抱えた田中さんが部屋に入ってきた。
テーブルに紅茶とケーキをを乗せた皿を並べ終わると田中さんは言う。
「ミキミちゃん、今日は夕方に帰っちゃうね」
「うん、大丈夫。今日はマヒルちゃんがいるから寂しくない」
「え!」
ミキミの家に泊まることになっているの?そんな話聞いていない。
仮に男と女だぞ。今の俺は女の身体になっているけども。
「マヒルちゃんダメ?夜は寂しいの」
ミキミが目をウルウルさせて懇願するが、これを断れる人間はいないはずだ。
しょうがない。
「わかった。泊まるからそんな顔をやめてくれ、家族に電話してくる」
ミキミの部屋に出る。
スマホで父親と母親に今夜は友達の家に泊まると送った。そして妹のヨルノに電話を掛ける。
「ヨルノか?今日も友達の家に泊まってくる」
『またお泊り、ってお兄ちゃん?声おかしくない?』
やべ、女のままだったから声が高いままだった。声だけでも戻せばよかった。
ヨルノにとって今の電話は兄のスマホから兄と名乗る女に友達の家に泊まると言う奇天烈な電話だったに違いない。電話の相手は俺の彼女の声と思ったかもしれない。
「じゃあな、友達が呼んでいるからきるわ」
『ちょっとお兄ちゃ』
電話を切り、スマホをしまった。
俺は中三の秋ぐらいから外泊を週一ぐらいのペースでしている。最初の方は友達の家で高校の受験勉強で泊まってくると言って無人島で寝泊まりしていた。今では家族も俺の外泊に慣れて何も言ってこなくなった。
「マヒルちゃんが泊まるなら私達もいい?」
「うん、大丈夫。みんなが泊まるのは大歓迎だよ。いっぱいお話ししよう」
「ヘルメスさんについて途中半端なことしか語れなかった。夜にその続きをしたい」
「ヘルメスさんのことはいつでも語れるでしょ?お泊り会は女の子らしく恋バナやファッションのしようよ」
一方、俺が電話をかけている間、ルカとタマコもミキミの家に泊まることにしたらしい。
「あらあら。ミキミちゃんたらあんなに嬉しそうに」
嬉しそうなミキミを見てニコニコしながら田中さんが出ていった。




