次日のタマコ
自分の席に座ると特にやることが無いことに気づいた。
クラスメイトに話し相手になるような仲がいい友達もいることが無く。かといって時間を潰す物はスマホ以外持ってきていない。要するに暇である。
今日来ているクラスメイトの二人はお互いを空気のように扱い、いない存在としている。教室の中は静かで聞こえる音は本を捲る音しか聞こえない。騒がしいと思ったら隣のクラスで何やら騒いでいるぐらいで落ち着いた時間が流れている。たまにはこういう学校もいいかもしれない。
こうしてぼ~としているとなんだか無意味に海を眺めている気分になる。気分的には同じだ。
穏やかな気持ちでボーと外を眺めている。
どうせ先生も学校に来ていないから今日の授業はすべて自習のはずだ。こんな時間が午後まで続くのか。毎日はキツイけど月一ぐらいなら大歓迎だ。
「マヒルちゃんいる?」
俺の穏やかな時間は我が幼馴染の手によって簡単に壊された。読書を楽しんでいたクラスメイト達はお互いを見つめて最後に俺を見た。さっさと行けよっと言いたげな目で訴えている。
すみませんね。穏やかな読書の時間を壊してしまってすみませんね。呼ばれたから行きますよ。そんな目で見るなよ。
「ミキミ何?」
教室を出て俺を呼んだ本人と向き合う。教室の中で話すと我がクラスメイト達の迷惑になってまた睨まれるからである。
「マヒル。やっほー」
「ホームルームの時間いなかった?遅刻?」
ミキミの後ろにはタマコとルカもいた。
いつものメンバーになったわけだが、そろったからと言って何かするわけでもない。状況は何も変わっていない。ぼ~と時間を過ぎるのを待つからただクチャべって時間を潰す明けになっただけだ。
さっきまでの時間はよかった。体感一分しか味わえていなかったけど静かで穏やかな時間だった。
「まーね。さっき来たとこ。先生すら来ていないんだし、出席確認とってないから遅刻したとかわからないんじゃないの?」
「そうだね。私さっき職員室に行ったけど先生もほとんど休んでるみたいだったよ」
「うちのクラスの担任も休んだみたいだけど、来ている子の中で代表として出席簿を出したよ?学年主任は来ているんじゃないの?」
これが学年主任もお休みになられているですよこれが。出席確認云々は今の状況じゃあ無意味なことで管理する先生がいないから気にしても意味がない。
そこら辺のことは今日来ている生徒はわかっていると思うけど。
「そんなことよりこれから何するの?」
「今日学校がこんな状況なら仮病で休んでもよかったな」
それはそうだ。事件が無かったことになったとはいえ、残った心の傷と言うべき記憶のせいで多くの生徒は今日休んでしまった。ミキミ達も昨日の記憶は残っているはずで今日は多くの生徒が休むことはわかりきっていたはず。
それに便乗して休むことだってできた。なのに俺が来てしまったのはいつものルーティンとして家を出たわけだ。特に何かに期待して登校したわけではない。
「タマコちゃんダメだよ。ずる休みしちゃ。せっかく入学したんだから病気でもないのに休んじゃ。休んだら会えないんだよ?」
真面目なミキミは頭が固いことを言ってタマコを注意する。
「冗談だよ。私もみんなと会えるから学校に来ているからね。そうだよね?マヒル」
何故に俺に同意を求めるのか?タマコワールドはいつも謎だ。
それからミキミ達のクラスに移動して何気ない話をした。ただ不可解なことにタマコがいつものヘルメスさん語りをはなさないのだ。いつも四人揃ったら、ダラダラとヘルメスさんのことを語るのに今日に限っては一言もヘルメスさんのことを話さないのだ。何故か俺を見つめてきて俺の話しをするのだ。今日のタマコは何かがおかしい。話題が俺になっているからミキミが食いついて二人で無限に俺の話しで盛り上がっている。俺は凄く恥ずかしい。なんで俺についての話題にそんなに盛り上がるんだよ。
これもタマコに俺がヘルメスさんだってバレたのが原因なのか?別の目線から見たらヘルメスさん語りになるのか?
不可解な現象にルカも気づいているようで戸惑いが見えるが、俺についての話しに混ざっている。
「マヒルちゃんそういえば昨日の放課後どこにいたの?」
「ん-?ああ、昨日?タマコと二人でカラオケにいたけど?そのあとタマコの家にあげてもらって」
気恥ずかしさに聞き流していたからミキミから投げられた言葉に少し遅れた。
昨日の放課後はいつも通り無人島にいて空を眺めて、そのまま家に帰ったことは言えないから、ミキミもそんなことは求めていない。ニュアンス的にきっと事件が起きていた時はどこにいたのって聞きたいのだろう。だから包み隠さずにそのまま答えた。
「ああ、マヒルが帰った後に別の意味でお父さんに凄く心配されたけど、昨日はありがとう。マヒル。お礼を言うの忘れてた」
お父さんの怪我を治したことを対してお礼を言っているのだろう。タマコの家の周りを片づけたから家から出なければ安全だったはずだ。
「別にいいよ。昨日のことは何もかもなくなったから」
祝福の願書に願ったから昨日の出来事は無くなったわけで誰も危険な目に合わなかった。誰も死ぬことは無かった。それだけでいい。
「マヒルちゃん達はタマコちゃんの家に非難したんだ。私とルカちゃんは学校に残っていたから凄く怖かったんだよ。人がいっぱい死んでね」
そうだった。ミキミとルカは事件が起きた時間帯は学校にいたんだった。人の死を身近で体験したのにトラウマにならずに学校に来るとか凄いな。これほどの図太さがあれば何があっても多分だ丈夫そうだ。




