朝
「えちゃん。お姉ちゃん」
静かに寝ていたら誰かに起こされていた。
俺は誰かに身体を揺さぶられているようだ。その相手は声から察するにヨルノだったりする。
我が妹は何故俺を起こしているのかは検討もつかない。数秒前まで寝ていたから頭が働かない。薄っすら目を開けるとパジャマ姿のヨルノが心配そうな顔で俺を覗き込んでいる。
特に問題ないな。視界で外を見たけど、まだ外暗いじゃん。夜のままじゃんか。朝まで寝かせてくれよ。いろいろあったから大人しく部屋から出てってよ。
俺を起こそうとする妹にそんなことを心の中で願うが、超能力者ではない妹に俺の切実な願いは届かない。
「お母さん達がもうすぐ部屋に入ってくるよ。」
「!」
妹の口から爆弾のようなセリフが出た。
今の姿は女のままだったような気がするのですぐさま俺はベッドから飛び起きた。
「お母さん達は?なんだよ。いないのかよ」
妹の一言で起きた俺は状況を確認するために視界で廊下を見たが、廊下には両親の姿が見当たらなかった。両親の寝室へ視界を飛ばすと静かに寝息をたてる両親の姿をあった。と言うことはヨルノの言ったことは嘘になる。何故そんな嘘をついたのかは興味がないからまた横になる。
「寝直さないで。起きていて。見てもらいたいのがあるから」
「それなら朝でもいいだろ?まだ外暗いから明るくなったら起こしてくれ」
太陽が昇っても素直に起きるつもりはないけど。
体感的に一時間くらい寝ていたかな。寝足りない。どんな用事かは知らないけど人を深夜に起こしてはいけないよ。まったく迷惑な妹だな。
「起きないとお兄ちゃんがお姉ちゃんなことお母さん達に言っちゃうよ」
「それだけは言わないでくれ。わかった。起きているからそれだけは秘密にしといて」
妹の脅しに屈した俺は少しばかり妹が見せたがっている物を見ることにした。
たぶん大したことじゃないと思う。人を深夜に起こす程だったら、先に両親に見せているはずだし。そうだった場合は両親も部屋に来ているはずだ。
そういえば今日?昨日?銃乱射事件が起きていた。正確には祝福の願書で無かったことになっているはずだ。ただ他の人にはどう言う感じで記憶に残っているのか気になる。もしくは無かったことになっているから覚えていないのかも。そこらへんのことも含めて聞いてみよう。
枕元に置いたスマホを見ると現時刻一時を過ぎきていた。
「見せたい物を見る前に、昨日何か起きていた?」
「そうなの。見せたい物がそれなの」
ん?見せたい物がそれなのってどういうこと?ヨルノは俺に銃乱射事件にかかわることを見せたがっているってこと?それとも偶然銃を拾ったとか?それなら両親の方に行っているか。
なんだろうな。
「待って、昨日人が沢山亡くなるような事件が起きよな」
「うん。大勢の人が亡くなることが起きたよ。でも亡くなってない。昨日の出来事が丸々無くなったんだよ。いや、昨日は普通に過ごした気がするけど、確かに事件が起きていたんだよ。あれは幻だったのかなって思ったけど、友達とかメッセージとか送って確認してみたけど友達も同じ体験をしてるんだよ」
キツネにつままれたような状況になっているヨルノは力ずよく体験したと言っている。
普通に昨日の事件のことを覚えているようだ。でも昨日はいつも通りに過ごした記憶もあるようで二つの記憶が混じり合って困惑しているようだ。
「それでね。見せたい物なんだけどこれを見てよ」
ヨルノが差し出したのがスマホだった。
画面を見るとうちのリビングが映し出されていた。動画のようだ。
視点が低いな。床にセットしてあるのか。昨日、誰かが忍び込んだのか?
ヨルノが画面をタップすると動画が再生される。再生されてから数秒後誰かが入ってきた。その人物は見たことがあるピンク色な可愛いらしいフルフェイスのヘルメットを被って、四本腕のそれぞれの肘から先から二つに枝分かれている人物だった。
そいつはリビングに入ってきて数秒止まってから冷蔵庫にまっすぐ向かって、冷蔵庫からコンビニのプリンと思われる物を取り出して、空中に出現した黒い穴に放り込んだ。その後は静かに出ていくまでの姿が映し出されていた。
ただの異形な女がプリンを盗んでいった動画だった。
これ俺じゃないか。まさかあの時、ヨルノに撮られているとは思わなかった。それよりもリビングに隠れているとは気づかなかった。あの時は家の中を視界で見回りして、誰もいなかったから自分で買ったプリンを取って出かけただけだ。
記憶どころか映像も残っているのか。
記憶はそのままって書いたのに、自分以外の人も残っているし、映像も残っているわ。誰の記憶かは指定していなかったけど、ヨルノの様子を見る限りだと昨日の事件を関わっている人全員の記憶を残っていると見ていいだろう。
映像や動画も記憶に含まれるのか。他の人の記憶が残っているのは俺にとって困ることはないけど、昨日の事件は起こらなかったことになっているからいつか昨日の事件が起きるかもしれない。
でも昨日の記憶が残っているからスーパーアルティメット団とかの組織が事前に止められて怒らないだろう。




