口封じ3
突如現れた父にタマコは固まって、思考が停止した。口を額た。
「お父さん、入るのなら先にノックしてよ!」
プリプリと怒り出した。クールな彼女がここまで怒りの感情を出すなんて珍しい気がする。
娘のあられもない姿を見てしまってお父さんも気まずそうだ。俺もいたたまれないからもう帰っていいかな?タマコの家族は今日はきっと家族会議になるだろうから早く帰ろう。
「悪いと思うが、仕方がないんだ!話は後でするから早く避難するんだ!君も」
タマコと一緒にタマコのお父さんに立ち上がらせられて、部屋の外に連れ出される。タマコは怒りが収まらないのか文句をたらたらと立ち止まり呟いている。
避難?何故、何が起こっているのだろうか?そういえばさっきから外がやけにうるさいな。
外があまりにも騒がしかったので視界を飛ばして見ると道路に数人の少年がガンハッピーよろしく、弾丸をバラ撒いていた。
は?銃刀法で一般人が銃を持つことを許されないこの国で中学生くらいと思われる少年達が銃を所持している。ただ持っているのはモデルガンと思いたいが、少年達は通行人を問答無用で撃っている。とても楽し気に撃って、殺している。一人は倒れて動かなくなった主婦にしつこく引き金を引いて穴を増やし、また一人はヘッドショットをかました金持ちそうなサラリーマンの鞄を漁って現金盗み、また一人は鞄に手を入れて一つの手榴弾を取り出して歪なフォームで山なりに投げて炸裂させていた。
家の外はまるで地獄絵図と言った感じだ。タマコのお父さんが慌ててノックをなしに娘の部屋に転がり込んだのもうなずける。
「お父さんどうなっているの!そんなに慌てて!」
普段とは違う父の反応に怒りから困惑に変わったタマコは現状を確認するために自身の父に問いかけた。
「説明したいのだがお父さんにも何が何だか分からないんだ。中学生や高校生の男の子達が銃を持っていて、最初はモデルガンって思ったんだが、それが本物だった。ああ、目の前で人が死んだ。あんな幼い子が死んだ。助けられなかった」
さっき見たのが夢であってほしいと床に崩れ落ちるタマコのお父さんも何故こんなことが起きたのか知らないみたいだ。
ただ少年達が銃を乱射しているシンプルな状況だ。きっと少年達はダークサイトとかなんかで銃を買ったのだろう。海の時みたいに影の化け物や一人で動く人形が襲ってきているのとはわけが違う。相手はただの人間で銃を奪えば攻撃手段を失う。無力化できる。ただそれだけだ。
相手が能力者ではなく、ただ銃を持った人間ならやりようはある。銃を持った相手を何回か相手をしたことがある。しかも相手は年若い中学生だ。赤子の手を捻るような物だ。
「ここは危ない。一階で隠れて」
タマコのお父さんは俺とタマコを安全と思われる一階へ連れていこうとしたとき、パリンと窓ガラスが割れる音が聞こえたと思ったら、深い緑色をした小さなパイナップルが投げ込まれた。俺は投げ込まれた物を察してタマコを押し倒した。
小さなパイナップルが炸裂した。炸裂したパイナップルは炸裂した爆発力によって自身の破片を周囲にばら撒いた。投げ込まれたのは手榴弾だ。
近距離だったため、爆風が俺の背中を焼いて、飛び散った破片が俺の背中にいくつか刺さった。ネットでは半径10メートル以内なら死亡または重症と書かれていたが、体へのダメージは思ったより少ない。能力を駆使して身体に入った破片を取り除いて完治させた。
きっと伏せたことでダメージを最小限なったに違いない。
「お、お父さん?」
俺は自分の身体を能力で治療しているとタマコの嘆きに近い呟きが俺の鼓膜を震わせた。
そちらに視線を向けると俺が庇ったことでタマコは無傷だ。ただタマコのお父さんが不味い状況になった。俺達が伏せたことで体に直接手榴弾の爆風と破片を浴びてしまったようだ。
タマコの視線の先には力なく壁に寄りかかるタマコのお父さんの姿があった。身体中痛々しく赤く染まっていたが、かろうじて息があった。いかにも重症といった感じだ。
「お父さん!お父さん!」
自身の父に駆け寄るタマコが邪魔なので隣にどかして治療を開始する。
顔は損傷が少ないな。爆発の直前に顔を庇ったのかなと場違いな感想をあげながらのんびりとタマコのお父さんの傷を治していく。数分後には無傷なタマコのお父さんが俺達の目の前に寝ていた。
その後、安全だろうタマコの家の物置部屋にタマコのお父さん運んだ。
「僕はもうそろそろ帰るね」
「待ってマヒロ」
すまない。タマコ。家族がどうなっているのか知りたいんだ。このまま帰らせてくれ。それと俺は君のお父さんに半裸の姿を見られて恥ずかしくて帰るんじゃないからね。
引き留めようとするタマコを無視してタマコ家から出ていくと玄関前に武装した少年と目が合った。偶然通りかかったのだろう少年はきょとんとした表情で少し固まった。近所がこんな状態なのにどうどうと家から出ていく少女が意外だったかもしれないな。
思い出したかのように手にしたハンドガンを突き出して引き金を引いた。




