海出来事後の日常
海の件から一週間が経った。
あの街が海の底に沈んでから変わらぬ日常を過ごしている俺は学校からの帰り道、空を眺めた。いや、寄り道がてら無人島へ来ていて、砂浜に座って遠くで太陽が海に沈んでいく様子を眺めていた。
一週間たった今、思い返してみるとあの日が異常にあふれていた。人を襲う影の化け物や動く人形などの怪奇現象の数々。最後に俺が体験した海の底で泣く女性のような怪物(?)。
一生で起きる怪奇現象を体験したような気分だった。怪奇現象の最後っ屁に海から家に帰ったら日帰りで帰ったことになっていた。何を起きたのか説明できないが、確かにあの町で一晩過ごしたはずなのに朝早く家を出てその日の夕方頃に帰ってきたことになっている。そう一日時間が進んでいなかった。
あの街にいた人間は他人にうまく説明できないだろう。説明できたとして他人に正気を疑われるだけだろうけど。
街が海に沈んだ表向きの理由は地震による地殻変動で地盤が崩壊して海の底に沈んだことになっていた。そんなニュースを見た。
次の日スーパーアルティメット団のメンバーであるアキラに連絡を取ったところ、怪奇現象体験したら時間がずれるのはよくあることだと説明された。そんな簡単に説明されても納得できない気持ちとソシャゲのログボを受け取れて安心した感情で複雑な気分である。
秘密結社なスーパーアルティメット団の先輩であるアキラに言われれば、そう納得するしかない。
時間がずれていた話は一旦置いといて、怪物の話を戻す。
海の底で泣く女性から差し出された二つの塊を食べてしまった件で俺の身体は変化はない。見た目は。体臭が磯臭いとか青臭いと感じるようになった。これが気のせいだと思いたいが、二回ほど悪夢と言うか変な夢を見てしまった。身体が苔むした岩や木々に変わる夢を見た。その内身体が水に変わる夢を見そうで怖ない。
ピピとポケットに入れていたスマホが鳴った。取り出してみるとメッセージが来ていた。
誰かとメッセージを開いてみるとタマコからで「今から会える?」とスマホの画面にそんな文字列が並べられていたので、俺は「どこで?」と四つの文字をそんな感じで並べて返信した。
そしたら「○○のコンビニ」と返ってきたのでスカートについた砂を払い落として、その近くで場所にテレポートをした。
なんの用事で俺を呼びだしたのか知らないが、暇だったので行くことにしたのである。太陽が沈むのを見るのも今日で七回目で見飽きていたことだし、太陽が沈むのは好きな時に見えるから今日見逃しても構わない。
「マヒル!」
少し待っていたであろうタマコが駆け寄ってきた。別に久しぶりなわけでもないのにあたかも何年もあっていないように微笑みながら来た。てか、最近タマコの様子がおかしい。この一週間学校で顔を合わしているのに本当におかしい。
タマコはいつもおかしいが、あの日以降おかしさが拍車をかかっていた。海での出来事はスーパーアルティメット団のメンバーが一般人全員消されて普通に海で過ごした記憶に書き換えたはずだ。タマコも例外ではないから普通に海で遊んで帰った記憶に書き換えた。
俺が能力を持っていることはかき消されたから、タマコにとって俺はただの友達で普通の女の子の認識のはずだ。
「急に呼び出してどうした?」
「マヒルに確認と言うか、聞きたいことがあって呼んだ。これを聞くべきか、そのままにするべきか迷っていたの。ここではあれだから近くのカラオケボックスに行こう」
俺に聞きたいこと?なんだろうな。心当たりは、あるにはあるな。
でも記憶は書き換えたから今のタマコが覚えていないはずだけど、祝福の願書に書かれた願いだからどうなっているのか分からない。
俺はタマコに連れられるままカラオケボックスに入店して、タマコと二人っきりになる空間へと足を踏み入れた。
「マヒルって男の子だよね?」
タマコはカラオケボックスに入ったにもかかわらず、マイクを持って衝撃なことを口にした。
「な、なんのことかな?」
「声震えているよ。本当だったんだね。そしてヘルメスさんの正体だよね?」
確信づいた声音でそうつぶやいた。
記憶は書き換えたはずだ。でも祝福の願書に書いた願いは能力者でも消せないのか。タマコがどんな願いを祝福の願書に書いたのか分からないが、確信を持って聞いている。
「私もなぜそんなことを知っているのかどうやって知ったのか分からないよ。でも知っている。マヒルは私の命の恩人だって」
何故ヘルメスさんの正体を知っているのかタマコも分からないようだ。そこはちゃんと記憶が消されているようだ。ただ祝福の願書で叶えた願いである記憶は覚えているらしいが、祝福の願書については忘れているぽいな。結果だけが覚えていて、経緯を忘れている状態だろう。
命の恩人ってなんの話だろう?遠足の日のことを言っているのか?でもタマコを助けったかな?心当たりがないな。でも祝福の願書の記憶がそう言うのならそうなんだろう。
「記憶が消えてないなんてな。僕は抜けていたよ」
「え?マヒル何か知っているの?」
「世の中には知らない方がいいことがあるって言っても納得しないか」
スーパーアルティメット団が一般人の記憶を一生懸命消したのにあの日のことを説明したら意味がないだろう。いや、疑問の答えだけを言えばいいのか。
「一週間前、海に行った時タマコは願いを書いた。ただそれが叶っただけのことだ。まあ、僕はその願いが何なのか知らないけど」
「は?どういうこと?私何かに願いを書いた覚えなんてないよ」
「世の中に不思議で説明ができない物事があるってだけでタマコは忘れているだけだ。僕が言えるのはそれだけ。それと僕がヘルメスさんだと言うことは秘密だよ」
これでタマコを誤魔化せないかな?
俺がヘルメスさんという事実を知られてしまったのは痛いが、何としてもタマコの口を閉じなければ。




