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海44

 鉛筆が見当たらない。

 四次元空間内を探してもどこにも見当たらなかった。最後に鉛筆を使ったのをよく思出せない。

 書くものが無ければ祝福の願書を使うことができない。


「どこかに落としたかな?ミキミ達からシャーペンでも借りよう」


 祝福の願書を四次元空間にしまわず、ベッドの上に置いて再びリビングへ向かった。

 海に行くのに勉強道具とか持ってきてそうなミキミにペンを借りようと部屋から出たところの廊下の隅でタマコがスマホの片手に挙動不審な行動をしているのを見かけた。声をかけるのは負けた気がしたのでスルーして階段を下りた。

 あれはきっと不思議空間の中でスマホに電波が届くかどうか試しているんだな。一晩電波が届かない状況が我慢できなくなっているのだろう。俺もソシャゲのログインができなくて今日の分ログインボーナスが勿体ない感があるからソワソワしている。

 タマコの場合もSNSとかヘルメスさんの書き込みができないからソワソワしているのだろう。

 電波が届かなくておかしな行動に出るのはよくわかるが、深夜の内にしている試しているのかと思っていたが、昨晩は疲れて寝てしまったのだろう。


「ねぇ?シャーペン持っている?ボールペンでもいいんだけど?」

「シャーペン?マヒルちゃん急にどうしたの?」

「寝に行ったんじゃないの?」


 リビングではそれぞれ暇を潰していた三人が声をかけた瞬間に俺を見た。

 ミキミとルカはお話していたらしく、声をかけたことで少し驚いた顔をしていた。田中さんは持参したと思われる本を読んでいて声をかけることなく俺達のやり取りを見守っている。


「急に書くものが必要になって、何かないかな?」

「急に必要って何に使うのよ?ペンなんて持ってきてないわ。ミキミちゃんは?」

「うん。ある。中学生の時に使っていた筆箱が鞄の中に入っているよ。ちょっと待っててね」


 ミキミは少し嬉しそうに立ち上がって筆箱を取りに行った。


「それでペンを何に使うのよ?」

「変なことに使わないよ。ペンを使うのは一つしかないじゃないか。何かを書くために使うんだよ」

「ほんとに?」


 何故か疑われるのかは知らないけど。

 祝福の願書に文字を書くために使うんだ。それが自分の願いを書くなんて一般人が聞いたら正気を疑われるから奇書に願いを書くなんて信じられないことをルカに言う訳にはいかないけど。

 ルカに疑われる問答を数回繰り替えして数分経った。

 もうそろそろミキミが筆箱を持って戻ってきてもおかしくないはずなのにミキミが戻ってこない。

 まさかと思って俺が先ほどいた部屋に視界を飛ばした。

 視界に映るのはタマコとミキミが祝福の願書の説明文を読む姿だった。


「ヤバい!見られた」

「ちょっとマヒルちゃん。今何を見られたって?待ちなさいよ」


 俺は駆け足で階段を上り、ミキミ達から読んでいた祝福の願書を取り上げた。

 すぐに戻ると思って置いたままにしてしまったのがいけなかった。


「まだ読んでいるのに」


 恨めしそうにタマコが睨みつけられた。


「マヒルちゃんその祝福の願書ってなんなの?少し読んだのだけど、それに書いたお願いが叶うって見たことが無い文字で書いてあったけど、なんで私、見たことが無い文字が読めるの?それは本当に何なの?もしかして書くものが欲しいって、マヒルちゃん、もしかしてお願いをそれに書くからペンを欲しがったの?」

「こんなものを隠していたなんてなんで言ってくれなかったの?」


 祝福の願書に書かれている内容のせいかそれとも書かれた文字が読めることに対してかミキミはプチパニックになり、俺が書くものを欲しがった理由を言い当てられた。

 少し不機嫌なタマコは心底傷ついた風に言い放つ。あたかも私達友達だよねと言っているようだ。

 友達ならばそれに願い事を書かせてくれるよねと目で訴えている。


「マヒルちゃんその大きい本は何?」


 俺を追いかけて部屋まで来たルカにも祝福の願書を見られてしまった。

 こうなったら諦めて三人に薄情するしかない。


「この本は願いが叶う本。祝福の願書さ。昨日僕はこれに願いを書いたところ本当に願いが叶ったよ」


 俺は三人に昨日書いた願いが書いてあるページを見せた。見せたところで他人の願いなんて読めないだろう。


「うん?なにこれ?」

「なんて書いたの?これ日本語のように見えるけどなんて書いてあるのか読めないよ」

「マヒルは字が汚いの?字は綺麗に書いた方がいい」


 俺が書いた部分を見て三人は眉を歪ませる。


「この本は他人が書いた願いは他の人には読めないようになっている。それに」


 眉を歪ませた三人の前でページを破る。


「せっかく書いた願いを破ちゃったの?破ちゃったら書いた願いはどうなるの?」

「さあ、でも破いたページはすぐに戻るよ」


 ページを破ったことで驚きの声をあげるミキミに俺は静かに答えた。

 願いが書かれたページを破るのは初めてだけど、もし願いが消えたらまた四次元空間を作り出せる願いなんてもう一度書けばいい。一度書いた願いは破棄はできないって説明に書かれていたし、そのまま元に戻るだろう。

 数秒もしない内に破いたページは元の通りに戻った。俺が書いた願いもそのまま書かれたままだ。


「御覧の通り破いても元通りになるよ。書いた願いは破棄はできないのも壊れないのも最初のページの説明に書かれているけどね」


 三人はポカーンとした表情で祝福の願書を見ていた。

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