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海39

 タマコは数十分ほどミキミと他愛ないおしゃべりをした。とは言ってもタマコはヘルメスさんのことを勝手に喋って、ミキミはミキミでマヒルに膝枕をしてあげて頭を撫でながらマヒルとの思い出をマシンガンのように語っただけだが。お互いの話を聞いているのかは定かではない。


「あらみんなもう起きたのね」

「はい。おはようございます」

「田中さんおはよう。さっき戻ってきたばかりのマヒルちゃんは寝ているし、ルカちゃんはまだ寝ているみたい」

「昨日とあまり変わらないのね。このままどうなっちゃうのかしらね。私キッチンにいるわね」


 ほどなくして田中さんが起きてきた。マヒルが戻ってきたことを伝えたが、外の様子はまだわからないと伝えると田中さんはこの部屋のキッチンに向かった。たぶん朝食を作りに行ったのだろう。

 スマホを見る限り、電波は繋がていない。ここの不思議空間に電波が来ていないだけかもしれないが、昨日のいた街では通信障害が起きてスマホが外部に繋がらなかった。

 タマコは昨夜日課のネットサーフィンができずに退屈でルカの隣で不貞寝したのだ。


「おはよう。タマコ、起きるなら私も起こしてよ。昨日散々ヘルメスさんの話を聞いてあげたじゃないの。ふぁー」


 田中さんがキッチンへ行ってから数分後にはまだ夢の中なルカも起きた。

 ルカはタマコの隣に腰を下ろした。


「それでマヒルちゃんは戻ってきたの?」

「目の前でねているよ。マヒルはさっき戻ってきたみたいだよ」


 ルカはほぼ眠っている眼で目の前に座るミキミや隣にいるタマコに問いかけた。目の前でマヒルが寝ているのにも分からずに。

 寝ぼけているルカにタマコは寝ているマヒルを指して言い放った。


「そうなの。マヒルちゃんは今頃何をしているのかな?酷い目に会わされていなければいいのだけど」

「だからいるって」

「ルカちゃん。マヒルちゃんはいるよ」


 朝が弱いらしいルカはどうやら話を聞いていないようだと、ルカの意外な一面を知ったタマコとミキミだった。

 二人はこの状態だと何を言っても理解できないようなので意識が覚醒するまで放置することにした。


「朝ごはんできたわよ。あらルカちゃんも起きたのね」


 トレーを抱えた田中さんがリビングに戻ってきた。トレーに乗せた物は白米が盛られた茶碗に小鉢にいれた納豆、シンプルな味噌汁。とっても和風な朝食のメニューが運ばれてきた。

 タマコは田中さんからトレーを受け取りテキパキと五人分の朝食を並べていく。


「マヒルちゃん朝ごはんだよ」

「ルカ、田中さんが朝食を作ってくれたよ」


 ミキミは膝の上に寝させていたマヒルを起こして、朝食を並べ終えたタマコはコクコクと眠りの船をこぐルカの身体を揺らす。


「うん、ありがとう」


 まだ少し眠たそうなルカは自分の前に置かれた茶碗を取り、白米を口に運び始めた。そして咀嚼し飲み込むを繰り返して、おかず無しで白米を平らげた。次に納豆を手に取り少しずつ口へ運び、その次は味噌汁を飲み干した。

 マヒルはまだ寝たままだ。どんなに揺さぶっても起きはしなかったのでこのまま寝かせておくことにした。


 ☆


 とあるオフィスの一部屋に西村は今回の報告書に目を通していた。

 この報告書は町へ調査に行かせたスーパーアルティメット団のメンバーが報告をまとめて提出した物だ。


「今回の原因はわかったのかしら?」


 朝食を運びに来たアイちゃんが報告書が映し出された端末とにらめっこをしている西村に問いかけた。


「この異常を引き起こした原因はまだ見当もつかないよ。でもここは異常の宝庫だね。動く人形に、人を襲う影。踊る幽霊や消えた住民。いろいろあるみたいだよ。報告してもらった中に今起きている現象に関わっているかもしれないし、そうじゃないかもしれない」

「事前に調べて何もないからここを選んだじゃないの?」


 西村が今読んでいた端末をアイちゃんに渡して見せる。

 報告書にはメンバーを殺害した異常存在や無害な物まで長々と書かれていて、長文が少し苦手なアイちゃんは眩暈を押さえるように両目の間を軽く揉んだ。

 スーパーアルティメット団はここに来たのは幼いメンバーの為に小旅行のつもりで訪れた。事前に危険が無いか事前に調べた。特に異常な存在が無かったはずで幼いメンバーが楽しんで帰る予定だった。

 今となっては後の祭りだ。それに予定外にも収穫はあった。複数の異常存在を回収に成功した。


「そのつもりだったんだけど、もしかすると人為的に起こされた物かもね」


 冗談のように軽く口にした西村は次の書類を手に取った。

 それはこの不思議空間にいるメンバー以外の人達のリストだった。

 リストにはほとんどは一般の人達だが、中には数名ほど知った名前があった。教命部の人達で時と状況によっては敵対関係だった組織のメンバーの名前だ。

 教命部の人達は現在一般の人達とは別の場所で隔離して過ごしてもらっている。

 自分達と同じく町に囚われている彼らが異常現象を引き起こしたわけではないと分かっているが、なにせ外部の組織だ。知られたくない物もあるから自由にさせるのは少々困る。


 海の町は今も雨が降り続けている。

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