海38
疲れ果てた体を倒れるように備え付けのソファーに預けた俺はミキミの小言というか、文句と言うべきか、どちらにでも聞こえる訴えを聞き流していた。
「今までどこに行ってきたの?ここで何が起きているの?なんで私を置いて行っちゃうの?心配したんだからね!」
自分がどれほど心配したかとか、あの人達は何者なの?とか当然疑問に思うことや泣き落としともとれる涙を浮かべながら訴えるミキミは正直勘弁してほしいと思った。
ミキミがくどくどと口うるさいことを口にしている話を聞いているとだんだん意識が遠のいていくのが分かる。このまま意識を話して寝てしまいたい。
どうせ、ここではスマホも通じないし、町の外には出られないから暇を潰せるのは眠ることだけだ。今いる空間はスーパーアルティメット団の施設だからゲーム機ぐらいならあるかもしれないけど。今は調査とかで疲れているから早く意識を捨てて夢の世界へ旅たちたい。
「マヒルちゃん聞いているの?」
「うんうん。聞いているよ。もういいでしょ?寝かせて。疲れているんだよ。僕は」
「まだ言い足りないよ。だいたいマヒルちゃんはいつもそう」
俺の切実な願いはミキミには通じず、話はまだまだ続くようだ。
ミキミの小言は1時間以上も続いた。そして俺は身体中に流れる疲労感に負けて眠りについた。
☆
いつもと寝心地が違うベッドの違和感に不快感を感じて目が覚めたタマコは身体を起こした。隣には友達のルカが気持ちよさそうに寝息をたてていた。着ていた浴衣が緩んでほとんど半裸の状態で寝ている。掛け布団を捲れば平らな胸が拝める。
「ここはどこ?ああ、そういえば昨日。それでルカが一緒に寝ようって」
自室ではない見慣れない部屋に疑問が頭を過ぎったが、昨日起きた出来事を思いだした。
昨日自分達が来た道が雨で土砂崩れが起きた。それまではよかった。他に道はあるのだから遠回りをすれば帰れたのだが、聞いた話によるとすべての道が土砂崩れが起きて帰れなくなった。
しょうがないので自分達は町の宿屋に泊まったが、宿屋内で電気が止まり、友達のマヒルとルカが不審者に襲われたそうだ。同じく海に遊びに来ていた団体の人達に助けられたとか。そうして自分達は団体の人達に連れられて今いる不思議空間のホテルだか、マンションような建物に寝泊まりしたのだった。
でもその団体の人達はマヒルと顔見知りのようで、夜遅くにマヒルを連れていった。
その後はマヒルがどうなったのか分からない。
もう戻っているかもしれない。寝ぼけた頭でベッドから降りてリビングへ行ってみることにした。
今の時間はよくわからないけど、体感朝の時間帯だろう。もしかしたら、ミキミのお手伝いさんの田中さんが朝食の準備をしているかもしれない。
ルカが起きないように慎重にベッドから抜け出して二階からリビングへ降りてみるとなにやら話し声が聞こえた。
覗いて見るとミキミとソファーで寝ているマヒルがいた。どうやらミキミがマヒルに対して説教しているようだったが、聞いているマヒルは疲れて寝ているようだった。
寝ているマヒルに話しかけているミキミが可哀そうだったのでリビングに入ってみることにした。
「ミキミおはよう。マヒル戻ってきたんだ」
「タマコちゃんおはよう!うん。今戻ってきたの」
どうやらマヒルは今戻ってきたばかりのようだ。何をしてきたのか分からないが、ぐったりと眠るマヒルを見る限り一晩中大変だったことが分かる。マヒルの為にもこのまま寝かせて置いた方がいいだろう。
そしてマヒルが起きたらここで何が起きているのか聞いてみよう。異常な事態だからヘルメスさんが来ているかもしれない。
壁に飾っているデジタル時計を見ると六時を過ぎたあたりだった。確かマヒルが連れていかれた時間が深夜の十一時だったから寝ないで七時間もどこ行っていたか気になる。
もしかすると私に内緒でヘルメスさん会っていたのかもしれない。マヒル曰く友達らしいから。まあ、マヒルのおかげでヘルメスさんとデートできたから一回ぐらいなら私に内緒で密会は許そう。
「マヒルからどこから戻ってきたとか聞いた?行った先にヘルメスさんがいたとか?」
「まだどこ行ったのか聞いてないの。その前に私がどれだけ心配したか知ってほしくてお話していたの」
「そう。まあ、私もマヒルに聞きたいことがあるけど疲れているだろうからこのまま寝かしておこうよ」
疲れている状態で質問してもまともに答えてくれないだろうから今は寝させてあげよう。
マヒルのことよりも私達いつになったら帰れるのだろうか。十時間以上ネットに繋がっていないスマホに触れるのはもう飽きた。早くヘルメスさんの記事を読みたい。
でも最近ヘルメスさんの記事が急に減ったな。何故だろう。そして急に体売りの女という卑猥な名前がよく見かけるようになった。ヘルメスさんみたいにフルフェイスのヘルメットで素顔を隠して、なんでも治らなかった病気を治してくるとか動物の尻尾を生やしてくれるとか。とても信じられない物ばかりの記事が掲載されていた。
私はパクりなどこぞの商売女よりも人々を助ける摩訶不思議なヘルメスさんの記事を読みたいんだ。




