海36
「こちらに来てください」
会議室を出て俺は呼びにきた女の子の後ろについて、もとい案内で病院のような廊下が続く区画に来ていた。
ここに来て思ったことは俺はここいる患者を治療するために呼ばれたのだろう。
例えば、先ほど調査から戻ってきて怪我をした状態の人がいるのだろう。ようするに会議にでれなかった人を治療すればミキミ達がいる部屋に戻れるのだろう。
確か会議にいなかった人は十人前後だろう。それなら数分前で終わる。
しかもスーパーアルティメット団は能力者の組織だから俺以外にも治癒系の能力者も複数人はいるだろうから速攻で終わるはず、その後はゆっくりと眠れる。
無限に続く廊下はここを乗り切れば休むことができると思えば凄く短く感じられた。
「ここに入ってください」
着いた部屋は電子ロック付きのドアに閉ざされていた。どう見ても関係者以外入れないようになっている。視界で部屋の中を見ようとして空間的に閉ざされているみたいで見ることができなかった。
これは入ることができないなと思っていると、案内の子が電子ロックの端末を操作して厳重に閉ざされたドアを開けてくれた。俺を案内しているからドアのパスワードを知っていて当然だった。
案内の子に促されるまま、部屋の中へ入たら、ドアを閉じられた。出ることができなくなった。空間的に閉じられた空間でテレポートを使えるかどうかはわからないけど。
ドアを閉められたから部屋の中は真っ暗で何も見えない。ここに怪我人がいるとは思えない。
暗い中を足を動かして歩いて行く。一応まっすぐ歩いているつもりだが、だんだん右よりに歩いているように思えてきたので左側を意識して歩く。
すると扉みたいな形の光が遠目に見えてきた。
そこに向かって歩いてみる。気づけばいつの間にか扉を潜っていた。うーん、謎空間はよくわからん。
目の前には台の上に乗った肉のような塊とそれを調べている科学者っぽい人達がいた。
「おいおい、入ってきちゃダメじゃないか?さっさと出てってくれ」
「え?はい。わかりました」
俺の存在に気づいた白衣を着た女性が羽虫でも払うように手でシッシと振って俺をこの謎空間から追い出そうと促して来たので、俺は軽く返事をして嬉々として回り右をして来た道を戻ろうとした。
怪我人を治療すると思って来たが、この部屋では変な肉の塊を調べているようで、俺が来たのは何かの間違いであってほしい。
「ちょっと待ってくださいよ。副室長。ここは関係者以外入れないのに簡単に帰さないでくださいよ。その子は噂の新入りですよ!ほら、体を自由に操作できる能力の子です」
何らかの器具を持った俺と同じくらいの少年が俺と白衣の女性のやり取りに申し立てて、俺の顔を見るや否やすぐに俺がスーパーアルティメット団の新入りだと気づいて、白衣の女性に説明した。
「ああ。私がさっき呼んで来いっと言ったヤツか!悪い悪い。てっきり迷い込んだ子かと思ったよ」
「迷子の子でもそう簡単に帰さないでください。ここに入れる人は限られていますが、空間系や機械系の能力者は簡単に入れると思うので侵入者を捕縛しないとダメっていつも言っているじゃないですか?」
そんなザルなセキュリティーはいろいろと問題あると思う。
俺をここに呼んだのは白衣の女性か。こんなに疲れている時に呼びやがって、やらされる内容によっては醜い姿に変えさせてやる。
俺を呼んだのは副室長と呼ばれているこの人みたいだし、何のために呼ばれたのか聞いてみるか。
「僕はここで何をすればいいの?誰かが怪我を治せばいいの?」
「いや、ここには誰も怪我人なんていないぞ?君を呼んだのはそこの台に乗った生き物を喋れるようにしてもらいたいんだ」
「これを?」
白衣の女性は台の上に乗った肉の塊を指しながら俺を呼んだ経緯を短く説明した。
この肉の塊については気持ち悪くて知りたくない。知ったらまた変なことを頼まれそうで嫌だし。
これが何なのか知らされる前に要望通り喋れるようにする。手始めに人型のようにしたがったが、どこの部分が頭部なのかわからない。視界で肉の塊の中を覗いても脳に至る臓器が見当たらない。それどころか肉体を生かす機能を持つ心臓や血を作る骨が見当たらないのに触れてみると鼓動のような気配を感じる。これは確かに生きているようだ。生暖かいし、プニプニと柔らかい感触がある。
「これ脳が見当たらない。これちゃんと意志があるの?」
「さあ?あるかどうかを調べる為に喋れるように君に頼んでいるんだよ?」
意識とかがあるかどうかを聞きたかったのによくわからない返答が返ってきた。
これも調査中ということなのだろうか?白衣の女性や周りにいる人達は肉の塊を観察するばかりだ。俺が何をやろうが、構わないのだろう。
喋れる機能がご所望なら、そして無いのなら作ればいい。
試しに口を作ってみた。ただ作ってみただけだ。唇の奥には歯や舌があるだけで奥に食道に繋がる器官がない。もちろん肺が無いから呼吸器の機能はない。
口しかない肉の塊がそこにあるだけで言葉を発しない。只々不気味な物が更に不気味になっただけだ。
これに喉や口を動かす筋肉を追加すれば話すことができる気配が無い。これはただの肉の塊に過ぎなかった。
「口を作ってみたよ。これでいい?」
「良いわけないだろう?ただ口を追加すれば話すことができると思うか?」
「それじゃあ、ただ見ていないで具体的な指示をしてほしい」
俺も口を追加しただけでしゃべり出すとは思っていない。しかしどうやったら話し出せるのかはわからない。わかるのはこれを手伝わないとこの部屋から出れないことだけだ。
白衣の女性とその助手達に指示を仰いだ。




