海30
俺達が派遣された場所は山道の中腹にある寺だ。その寺は亡くなった子供や動物を供養するための物らしいが、他の建物と同じく人の手が入っていないからかここまでの来る途中に設置してある地蔵は破損しているし、境内の石碑やら仏の銅像が苔や錆が付いていた。まさにホラー映画に出てきそうな寺な感じだ。
薄暗い寺の中は雨漏りがしているし、屋根が崩れており室内にも関わらず、曇に覆われた空を拝むことができた。外に出ればいくらでも見られるけど。
相も変わらず雨は降り続けている。支給品の雨具のおかげで濡れることなくここまで来れた。
今頃ミキミ達はベッドの上で眠っていることだろう。
「こんな場所に何かあるのか?」
「何かあるかを調べる為に来ているのでしょ?何もなければそう報告していればいい。誰か古文に詳しい人いる?」
「てかさ雨はいつ降りやむんだ?鬱陶しくてたまらんわ」
「外ばかり眺めていないでこっちの柱をどかすのを手伝ってよ」
眼鏡君ことシンは瓦礫と化した木材をどかしながら、気の強そうなアヤに問いかけていた。アヤは偶然見つけた大昔の書物を手元で広げて読んでいたが、書かれている物が古いのか読めないでいるようだ。
色あせていてボロボロだが、雨風にさらされている場所で読める程度に保管されているのは凄いと思う。
外を警戒しているのかイチローがぶち抜かれている壁から顔を出して空を眺めている。それを嗜めるようにひ弱で中性的なヨウが邪魔な瓦礫を外に出していた。
そんな罰当たりなことをしている彼らだが、現在起きている異変の解決もとい、この街から脱出する目的で行動している。
土足で境内の中を闊歩している俺も人のことは言えない。
視界で周囲の安全を確認つつ、何か異常な物がないか探してみるが、特に何も見つからない。
境内は数年前に火事があったような痕跡を見つけたが、今起きている異変に関わっているようには思えない。他に何かあるかと思うが散らばっている瓦礫も昨日今日でできたものではない。長い間放置された感じだ。
瓦礫の山をかきわけながら視界で探索していると異様な部屋を見つけた。
四人がいる広い部屋から離れて見つけた部屋へ移動する。移動した先の部屋には妙なリアル的な数千体の日本人形が丁寧に飾られていた。部屋に入った瞬間二千を超える瞳の視線に晒されて恐怖を覚えた。興味本位でこの部屋に入ってみたが、見つけなかった方がよかった。
人形達は入ってきた俺を反応することなくただじっと見つけている。まるで侵入者を監視しているような空気感だ。
「新入り!一人でどこ行くんだ!なんなんだこの部屋は?」
「おーい、新入りを見つけたかって、ええ?」
「これは不気味」
俺が消えたことに気づいたらしいアヤが人形の部屋へとやってきて部屋の異様な雰囲気に困惑を表した。
アヤの後を追うようにヨウやイチローが入ってきた。
「この部屋おかしくない?」
「ああ、何故この部屋だけ小奇麗なんだろうな?」
ヨウとイチローがこの部屋の異質さに気づいたようだ。
大量の日本人形も十分異質なのだが、この部屋だけが奇麗なのだ。他の部屋は風で飛ばされたであろう落ち葉やゴミなどで散らかっているにもかかわらず、埃っぽいものの他の部屋みたいにゴミとかは散らかっていない。長い間閉め切られたからゴミが入り込まなかっただけかもしれない。
でもそれにしては綺麗すぎる気がする。
おや、人形が少し動いたような気がするな。まあ、気のせいか。某アニメ映画のようにおもちゃが一人で動くわけないか。人形が独りでに動いたら本当にホラーだ。思いたくない。
「気味が悪いから早くここから出ようここにいたくないわ」
「何もなかったから僕も出るね」
「おう、俺らはしばらくここにいるわ」
あまりの不気味さにアヤがすぐさま退出した。大量の人形が置かれた部屋を見たかっただけだったから退出する理由を適当にでっちあげて俺も続けて出た。
ヨウとイチローは異質な違和感が好奇心に触れたのかしばらくあの部屋を調査するそうだ。
瓦礫の部屋に戻るとシンが黙々と瓦礫を片づけていた。イチロー達は瓦礫の片づけ作業に飽きたようでシンに押し付けてあの部屋の調査を始めたのだろう。
シンはそんな二人に文句を一つも漏らさずに一人で黙って作業に徹している。あまりにも一人の作業が可哀そうだったので本当に真面目に手伝うことにした。視界で周囲を警戒しながらだけど。
瓦礫を念力混じりの腕力でどかしている間、周囲を見ていた視界で小さな黒い影のような物がちょこまかと動く複数の影を発見したが、ネズミだと思って放置した。
自分の住処に人間が急に来てパニックでも起こしているのだろう。
綺麗とは言い切れないが、何とか片づけられた。いつの間にかアヤの姿が無くなっていた。視界で探したらヨウやイチローがいる部屋の近くの部屋にいた。瓦礫の撤去と言う名の力仕事は女性には厳しかったから別の場所で調査していたのだろう。俺も身体は女だけど念力と身体を変化させると言う名のチート能力があるから撤去作業は苦にはならない。
「みんな!聞いてくれ!」
「人形が!」
人形があった部屋で調査をしていたイチローとヨウがせっかく片づけた瓦礫を畳の上に散らかしながら大慌てで来た。二人の騒ぎに何事かと聞きつけたアヤも二人の後からひょこっと顔を出した。
「人形が何体かなくなっているんだ」
二人はハモりながらそんなことを口にした。




