海27
突如現れた少女はズカズカと粗々しく更衣室へと侵入して握手を求めてきた。
差し出された手を俺は戸惑いながらも握った。
「えっと?君は?」
入ってきた少女に対して困惑を覚えずつつ最初に浮かんだ疑問を少女へ問いかけた。
「初対面で始めましてだね!私はサナエだよ。よろしくね!」
「初めましてマヒルと言います」
元気潑溂と事項紹介をした少女はかわいらしくポーズをした。元気いっぱいの名乗り上げのプレシャーに負けて引き気味に名乗った俺は少女から一歩分離れた。
「うん。君のことは知っているよ。リッカやリンから聞いているから大丈夫だよ」
何が大丈夫なのかわからないが、サナエと言う少女は俺のことをリンちゃん達から聞いていたらしい。
純粋無垢なリンちゃんや臆病なリッカと面識があって仲よくしているならある程度ぐらい信用してもいいだろう。
ここまでグイグイ来る子は距離を置きたいけど。
「話は聞いているわ!着替えに来たのでしょう」
「ええ。西村にここに行けと案内されたので。でも着替えられる物がないので困っていまして」
サナエの元気な圧力にやられた俺はここに来た経緯を言葉少なめに説明した。この更衣室には俺が着替えられる服は無いし、サナエも服を持っているようには見えない。サナエの能力が四次元空間を作り出して物の出し入れできるものでなければ。
「今から私が用意してあげるよ」
そう言うと彼女の手からフリフリのロングスカートが生成された。
これが彼女の能力らしい。
「私はね。空気を思った想像した通りの形を作り出す力だよ。生きた物は作り出せないけどね」
自身の能力の説明をしながら鉄の延べ棒やパズルみたいなおもちゃなどを次々と生成させていく。
10個ぐらい作ったところで気のせいかもしれないが、少し空気が薄くなったような気がする。
なんとなく俺がこれから着る服はわかった気がする。この子に作らせるのだな。そしてこういうタイプは人の意見を聞かずに自分が着せたい物を相手に着させるのだ。西村のマンションでスーパーアルティメット団のメンバーにコスプレをさせられた俺の経験がそう警告している。
この際だから浴衣よりも動きやすい服装なら何でもいいや。
たぶん俺の意見を聞かないと思うけど、こういう服がいいかをダメもとで言って見てみよう。
「デザインはなんでもいいですけど、できれば上下ジャージと下着をよろしくお願いします」
「うん、いいよ」
やっぱり駄目だよな。こういう子は人の意見を聞かずにって、いいのかよ!
「え?いいの?」
「普段の私ならマヒルちゃんみたいなかわいい子には可愛い服を着させたいのだけど、西村っちには外の調査の班に同行させるから趣味に走るなって言われているから、できるだけマヒルちゃんの意見を聞くよ。ジャージは黒でいい?そえと下着のサイズは何?」
「ジャージのデザインはお任せするし、ブラのサイズは能力で体の方を調整させられるからBカップでもCカップでもいいよ」
「噂で聞いていたけど身体を操れる能力って羨ましいくらい便利だよね。特に胸の大きさを調整できることが」
雑談をしながらも、サナエは服を生成していく。
作ってもらった服は黒い無地のジャージとスポーツブラと靴下のセットを渡された。すぐさまその服に着替えた。
ジャージの色が黒なのはきっと宿に現れた影の怪物に見つからないようにするためのカモフラージュとしての色なのだろう。ハイドモードで見つからないようにできるから白だろうが、赤だろうが関係ないけど。
「ありがとう」
「じゃあ、バイバイ。気をつけていくんだよ。後今年の夏私達のサークルコミケに参加するから手伝ってね」
更衣室から立ち去るサナエに感謝の言葉を言うと彼女は手を振ってそんなことを口にした。
これは借りだからコミケを手伝えと言っているのだろう。
サナエは俺の返答を聞かずに出ていったから今言った手伝いをバックレてもいいだろう。今行おうとしているの調査は俺個人の意思ではなく、スーパーアルティメット団のメンバーとして西村の命令で行くのだから。
サナエが出ていくと同時に別の人が更衣室に入ってきた。先ほど俺をここに案内してくれたお姉さんだ。
「皆さんが集まっていますのでこちらに来てください」
事務的に言われてお姉さんの後をついて行った。




