海24
玄関へ田中さんを見送ったあと俺達は互いの顔を見つめ合う。
「誰だろう?」
「お隣さん?私達、うるさくしたかな?」
「でも隣から物音が聞こえなかったよ?玄関の外で子供達が騒いでいても何も聞こえなかったからそれはないんじゃないの」
ミキミ達はのんきにそんなことを言い合う。
俺の予想は隣さんが文句を言いきたとかそんな平和的なクレームで誰かが来たのではなく、スーパーアルティメット団の連中が何らかの理由で俺を呼びに来たのだろう。
外で俺達を連れ回した男達からの報告でこの謎空間にいることはわかっているだろうし、イレギュラーな事態だし俺がいるなら頼み事を一つや二つしてくるだろう。
ようやくゆっくりと休めると思ったのにな。
俺は視界を玄関先へ飛ばした。
「はい、先ほど来て、部屋にいますが」
「では中にお邪魔しても大丈夫でしょうか?」
視界の先には二人のグラサンをかけた黒スーツの男達が田中さんに質問を投げかけている様子があった。
怪しさマックスなこの二人はスーパーアルティメット団のメンバーだろう。何故に某少年探偵の悪の組織みたいな服装なのか知らないが。
「私も含め、中にいる子達は全員浴衣なのですが」
「我々は女性がどんな服装をしているかなんて別に構いません。そちらも構いませんね?」
「はい、どうぞ」
田中さんは押しに弱いのかすでに夜の時間帯なのに急に押しかけてきた男達を部屋に上がらせた。
男達のどちらかが精神を操る系の能力を持っていてもおかしくないけど、男達が能力を使った様子はなかった。
田中さんは男達をリビングまで連れてきた。
「マヒルちゃんに用事があるようみたいなの」
田中さんが腑に落ちないような表情でそんなことを言う。田中さんでも中に招き入れたのは気が進まなかったようだ。
「君がマヒルさんですね?我々と一緒に来てください」
「はい、わかりました」
ここでだだをこねても望まない状況になりそうなのでこの場合は仕方がない。俺は諦めた感じで男達に従うと。
「マヒルちゃんが行くなら私も行く」
「私も行く。マヒルがどこに行くのか気になるし」
とミキミが言い始めて俺の腕を抱き込んで、タマコもそれに便乗し始めた。
状況がややこしくなり始めたところで黒服が口を開いた。
「同行者は認めていませんので、他の方々はここでお待ちください。何かあればご連絡しますので、皆様はこんな状況でお疲れでしょう。今夜はゆっくり休んでください」
片方の男はにっこりと丁寧について行くと聞かないミキミやタマコを拒否した。
あれだけじゃ、ミキミもタマコも納得しない。
「そうですか。マヒルちゃんが戻ってくるまで待ってる。マヒルちゃんもちゃんと戻ってきてね」
「どこに行くかわからないけど、戻ってきたら聞かせてね」
ごねると思っていたミキミとタマコがなんとあっさりと引いていった。
どんなマジックをしたのか黒服の片方を見たら、ミキミ達から見えない位置でサムズアップをしていた。
アイちゃんが隠しているような人を操る系の能力か。ミキミ達の尊い犠牲のおかげで注意すべき人が知れた。俺も操られないように注意しないとな。
それと俺もいろいろあってお疲れなんですけど、ゆっくり休みたいのにな。
俺は男達に連れられて正方形型の建物に連れてこられてきた。
内装は特に特徴もなくロビーからエレベータに乗せられて30階へと通された。エレベータの中は階層を入力する感じだった。一瞬パスワードでも入力するとでも思ってパネルを操作する男の手元を見ていると3と0のボタンを押すだけで終わった。
建物の高さから見てどう考えても30階はないと思うけどさっきまでいたマンションの異常性を見た後じゃ驚きもない。
30階は慌ただしく人が行きかう場所だった。山積みの書類やパソコンに向かって何やら文章を作成している人物。なんというか会社の事務所と言うべき空間に感じた。スマホが使えない今、そもそもネットにつながるのか?使っているから繋がっているだろう。
その中を移動している途中、視界でいろいろ見学させてもらった。
人々の会話を聞く限り、この慌ただしさの原因は今起きている俺達がいた海の街の異常性のせいだと分かった。
今起きているこの事態はイレギュラーな組織であるスーパーアルティメット団でもイレギュラーな事態らしく。過去に起きた神隠しなどのオカルトチックな内容が書かれた資料が壁に張り出されていたりと忙しながらも究明対応に勤しんでいる。
俺達は慌ただしい人達の間を通り過ぎて奥の部屋に入った。
「やあ、マヒルちゃん」
いかにも社長室と言わんばかりの部屋には少しやつれたような西村がいた。
スーパーアルティメット団の他のメンバーがいるからコイツがいても不思議じゃないけど会いたくなかった。




