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海10

 願いを書き終えて祝福の願書を閉じた。

 俺が書いた願いは念じることで物を出し入れできる四次元空間を作り出すだ。特に願いなんて思いつかなかった俺はパッと思い浮かんだ国民的アニメの某ロボットの青狸のイメージが浮かんだ。そのキャラクターのお腹にはなんでも入れられる魔法のようなポケットがある。

 小さい頃にあのアニメを見てあのポケットがほしいと思っていた。ただポケットだと誰かがに盗まれるかもしれないから能力的に空間に穴をあける感じで四次元空間を開いて物を取り出しできるように説明文も書いた。


 本当に願いが叶ったどうか確かめてみる。

 四次元空間出ろーと念じてみると目の前の空間に壁に穴が開いたような中が見えない平たい黒い穴が出てきた。

 これが四次元空間なのか?アニメではサイケデリックな空間とイメージしていたが、化け物が潜んでいそうな得体のしれない恐怖を感じる穴だ。たぶんホラー映画からくるイメージのせいだと思うが、手を入れても大丈夫だろうか?

 いろんな角度から四次元空間の穴はなんと説明したらいいかと自分の語彙力の無さに怒りを覚えるが、上から見ても下から見てもそこにあるのは壁に穴が開いたような平たい穴が開いているようにしか見えない。頭がおかしくなりそうだ。

 指の一本や二本なくなってもすぐに再生できるから指先を少し入れてみる。指が黒い穴に吸い込まれるように入る。

 指先に感じるのは熱くも冷たくもない、というか触れた先に何も感じない。ザ虚無空間って感じだ。

 穴から指を抜いて、祝福の願書に願いを書くのに使った鉛筆を入れて穴を閉じてみる。数秒後に再度四次元空間の穴を開いて、穴に手を突っ込んで鉛筆を穴から取り出す。

 書いた願い通りに物を取り出せるようだ。それも一回閉じても大丈夫なようだ。

 閉じたら、二度と手元に戻らないわけではなさそうだ。これで好きな物を取り出せる。

 とりあえず、四次元空間の穴に祝福の願書を押し込んで閉じて、トイレから出た。鉛筆はまた願いを書くかもしれないからもう少し借りておこう。


「やっと戻ってきた。こんな大雨の中どこ行っていたの?マヒル待ちだったんだから」

「ごめんごめん。トイレに行っていたよ。すま、いいやなんでもない」


 田中さんの車まで戻ると泊まれる場所を探しに行った田中さんが戻っていた。泊まれる宿を地元民に聞いたそうで今からそこに行くつもりだったが、俺がいなかったからこうして車で待ってくれていたそうだ。

 それでルカにどこに行っていたことを問われたのでさっきまでいたトイレの方を指しながら答えた。トイレにいたのは確かだしね。

 スマホで知らせれてくれれば歩いて向かったのにと言葉が出かかった。スマホは使えなかったからメールもSNSも使えないから俺に知らせる方法が無い。俺を置いて向かってもよかった。どこに向かったのか視界で探せばいいんだし、と言おうと思ったが俺がいないとミキミが騒ぐし、引率として来てもらっている田中さんはそんなことは許さないだろう。

 ミキミは泣きつかれたのか眠っていた。


 車に乗り、その宿へと向かった。

 車の中は静かだった。車内に響くのは車窓に打ち付ける雨音とミキミの寝息のみで誰も喋ろうとしない。すべての道が土砂崩れで塞がれて帰れなくなった現在の状況はまるで陸の孤島みたいに閉じ込められた。そんな状況下の中みんなの気持ちは落ち込んでいるはずだ。スマホも通じないしで雰囲気的に殺人事件が起きそうな状況だけど。

 俺は祝福の願書を拾ったから次は何の願いを書くか忙しいので帰れなくなったことなんて気にしていない。正直叶えたい願いなんていくら考えても思い浮かばないけど。

 そうだ。土砂崩れなんて起きなかって書けば帰れるんじゃねえ。後でみんなのがいない場所に書こうと。

 早く一人になれないかな。


「お客様は何名様でしょうか?」

「五名でお願いします」

「ではお部屋まで案内します」


 と田中さんは宿のチェックインしてくれた。

 車の中で寝ていたミキミは先ほど起こしたが、自分が今日誘ったことをまだ引きづっているのか、ただ寝ぼけているのか俺の手をギュッと握りしめている。この分だと一人になれそうにないみたいだ。

 明日には土砂が撤去されるかもしえないと期待を込めて一泊泊まることになったのだが、会いたくなかった連中がいた。


「マヒルちゃん?」

「マヒルもここに泊るの?そっちの子達は友達?」


 リッカとアイちゃんが宿のロビーにいた。

 海にスーパーアルティメット団がいたから、俺達と同じく帰れなくなったからだろうけど、宿屋まで同じじゃくてもよくないか。

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