海9
近くのトイレの個室に入り祝福の願書とやらの最初の1ページをひらいて読んでみる。
やはり見たことのない文字で書かれているが、理解できる。この不思議な文字は四角の中に点や棒線で45文字に構成される文字で組み合わせで単語として意味になるようだ。世界中を飛び回った俺であるが、人生で初めて見る文字だ。初めて見るはずなのに理解できるっていうのはおかしな話だが、読めるなら何も考えないでおこう。
最初に書かれているページはこの本の説明が書かれていた。
1・この祝福の願書は破壊不可。
2・執筆者の想像を基準に叶うが、書いた願いは破棄はできない。
3・この本に書かれた願いは制限なく必ず叶う。ただ、別の願いと矛盾・被った場合は優先されるのは早く書かれた方。別の祝福の願書で書いた願いも同様。
4・別の人が書いた願いは読めない。そして別の人の願いを書いた文字を黒く塗りつぶしても願いは継続される。
5・生物の蘇生は執筆者の想像する個体が蘇生される。
6・曖昧な願いは予期せぬ事態を引き起こすので的確に書くこと。
7・祝福の願書の願いでの祝福の願書を複製・作成は不可。
といった感じで箇条書きで説明が50個以上の説明が書かれていた。俺は説明書とかはほぼ読まないのでページの十分の一ぐらいのルールを読んだのは俺にとってじっくり読んだ方である。パッと見て疑問に思うような物は書かれていなかった。
何個か矛盾しているルールがあるが、この本を信じるなら本に書いた願い事は必ず叶うらしい。とても信じられないが、最初のページに書かれていることが本当ならこの本をめぐって戦争が起きそうだ。もしかすると俺の知らない場所で壮絶な争いが起きていたかもしれない。俺の前に落ちてきたのか理由は不明だ。
胡散臭い代物であるが、試しに書いてみることにした。
と言ってもパッと思いつく願い事なんてすぐに出てこない。今すぐ大金が欲しいってわけでもない、今すぐほしい物もない。幸せになりたいという願いは何を基準に何を思って幸せになるのか曖昧だから何が起こるかわからない。俺にとって不都合なことが起こるわけではない気がする。
大抵のことは自身の能力ですべて完結できるから叶えたい願いなんてない。
そうか、能力だ。
パッと浮かんだ願いを書こうとしたが、肝心な書くペンがない。これじゃ願いを書くことができない。
視界で書く物を探している間、パラパラとページをめくる。視界で探していれば誰かが落としたボールペンでも見つかるだろう。こんなことなら普段使っていない筆箱を持ってくるんだった。
説明が書かれたページの次のページから願いを書いていくらしく。いろんな文字で何かが書かれている。その中に明らかに日本語や英語で書かれている願いがあるのだが、理解できない。というよりも脳が読むのを拒否しているかのように読むことができない。長い時間を書かれた願いをいていると頭が痛くなる。
あきらかな日本語の文字が読めないのは俺の脳に障害がないのなら、説明に書かれていた通りに他の人の書いた願いは読むことができないということだろう。明らかに日本語に見えるのに読めないのは不思議だ。
ペンが見つかるまで暇なので1ページだけ破いてみることにした。破っても願いが叶わなくなるとかのペナルティーとかないよね。破壊不可と書かれていたらそれが本当に
1ページに手を添えて掴んで思いっきり破く。ビリビリと誰もいないトイレ内に破いた音が響く。床へ紙切れとなったページを足元に落とす。
破壊不可と書かれていたのに破壊できちゃったよ。鉄の板みたいに固いかと思ったけど破っている感じは普通の紙と同じだった。
「え?嘘だろう?」
目を疑った。
破り取られたページに目を落とすとそこのページが元通りになっていた。確かにこのページを破ったはずなのに元通りになっている。破り捨てたページに書かれていた文字も読めないけどそのページに書かれていた文字もある。本当に元通りになっている。
足元に破り捨てたページの紙切れもいつの間にかなくなっている。トイレ内をくまなく探したがない。
改めて個室に戻ってまたページを破る。今度は破ったページがどうなるか確認するために観察する。
破り終えてから1秒も経たないうちに破り取られたページは元々そこに存在していなかったように消えて、破られた方のページも元々破られていなかったように元通りになっていた。
破壊不可というよりも、再生しているように思われる。いや、破られた現象を元々なかったことになっているのか?確かに俺は破った記憶を持っているのに、時間的にページを破るという数秒の行動を消しているのか。
これ以上の本を傷つけることはやめておこう。だんだん本当にペナルティーがあるのではないかと思ってしまう。もう少し余裕のある時に説明を詳しく読もう。
海の家に置いてあった鉛筆があったのでそれをテレポートで取り寄せた。
いざ、祝福の願書の白紙のページに自分の願いを書いてみる。




