the・ランジェリー
レジに置いてあるつり銭受け皿ってカルトンって言うんだ。
初めて知った。
田中さんの車に乗ってついたお店は大きなモールだった。
ここまでの道のりに二時間くらい費やしてここに来る必要あったのか?もう少し近場の店で買えばよかったのではないかと思うのだが、ミキミが嬉しそうにしているから気にしないでおこう。
下着の一つや二つ程度を買えばいいだろうし。
ブラとかショーツつけなくちゃいけないのかな?俺男なのにな。今は女の身体になっているけど。
「田中さん行ってきます」
「はい、ミキミちゃんあんまり無駄遣いはしないでね。何かあれば電話してもらえばすぐに行くからね」
「うん、いつもありがとうね田中さん。マヒルちゃん行こう」
「手をそんなに引かないでよ。逃げたりしないから」
田中さんは車で待ってもらって俺達二人でモールの中へ入っていった。
「二階だよね」
「何が?」
「ランジェリーショップだよ。マヒルちゃんのを買いに来たんだから」
そのままミキミにランジェリーショップに連行された。
ランジェリーショップはカラフルな下着が売られていて俺達の他に中学生ぐらいの子やOLのお姉さんがいた。
こんな場所に俺がいるなんてアウェイ感があっていたたまれない。
「マヒルちゃんって何カップあるの?」
「カップ?今まで測ったことが無いからわからないや。今度測ってくるから買うのは今度にしよう」
「ダメだよ。そうやって先伸ばすのは良くないよ。大丈夫、お店の人に言えば測ってもらえるよ。恥ずかしいなら私が頼もうか?すみませーん!胸囲を測ってもらいたいんですけど」
ミキミは俺の提案を無視して店員を呼んだ。
「はーい。少々お待ちください」
呼んで少ししたらメジャーを片手に持った店員が来た。
「どちらの方を測ればよろしいのでしょうか?」
「この子です。下着を買うのが初めてみたいで自分が何カップかわからないのでよろしくおねがいします」
「ではこちらに来てください」
定員に連れられて、服屋の試着室より少し広めの試着室に案内された。
「上をぬいでくださいね。初めてだと思うけどあんまり恥ずかしくないですからね」
それが決まり文句なのか店員は俺が脱ぐまで待つつもりのようだ。
嫌っと言っても無駄なのだろうからしょうがなく渋々脱ぐ。
「大きいですね。着瘦せするタイプですか?それと普段からノーブラだと服に擦れて痛いですよ。たるんできますし、では測りますね」
俺は店員にされるがまま胸囲を測られた。
女湯に入っているから見られるのは慣れているつもりだけど、こう触れられたり測られたりするのは別の恥ずかしさがある。
「OKです。Cカップになります。お友達に言って選んでくださいね」
胸囲の測定は一分以内に終わったが、体感五分ぐらいかかったような感じがした。
脱いだ上を着て、ミキミのところに戻った。
「ミキミ、Cカップだったよ」
店員に測ったもらった胸囲を諦め気味にミキミに伝えた。
「思ったより大きいね。私が選んであげるね」
それから俺は試着室に籠りブラだけの下着ファッションショーをした。
「でマヒルちゃんは気にいったの。あった?」
「試着した中では特にないな。可愛いすぎるのはちょっとハードルが高いと言うか。何ならあれがいいい」
ミキミが選ぶ物すべて花の刺繍があって可愛い物ばかりであった。俺に可愛い下着はハードルが高すぎる。着けるならばもっとシンプルな物をがいい。
俺の目に映ったのはスポーツブラと呼ばれるシンプルオブベストなブラだ。あれなら毎日つけていい。男の時以外でなら。
「あれは地味過ぎない?マヒルちゃんは可愛いのが似合うよ?」
「わかった。ミキミが選んだ奴の中で四つ買うからそれ以上言うな。それとスポーツブラも一つ買う。これで文句は言わせないぞ」
俺は早くランジェリーショップから抜け出したくてミキミが選んだ物の四つを適当に選んで買い物カゴの中に放り込んでスポーツブラに手を掛けたが、スポーツブラをカゴに入れなかった。
それは近くに我が妹がいたからだ。
実の兄が女装をしてランジェリーショップにいることを知られたら、通報物か運が良くても精神科に入院させられそうになりそうだからそそくさとミキミを連れてレジに向かった。
運がいいことに我が妹は俺に気づいていないようだ。ランジェリーショップに実の兄が幼馴染の女の子と一緒にいるとは夢にも思っていないだろうけど。
ミキミも我が妹と面識があるからミキミも気づかないでほしいと心で願っていた。
向こうも友達と一緒に下着を買いに来たようだ。
「スポーツブラはいいの?」
「ああ、気が変わった。早く買って帰るぞ」
買い物カゴをレジに置いて会計を済ませようとしたとき。
「マヒルちゃん待って私が払うよ。プレゼントとして」
「いいよ。このくらい自分で払うよ」
ミキミはプレゼントしてこれらの下着を買ってあげると言ったが、女の子に下着を買ってもらうのは流石の俺も遠慮した。
鞄から百万円の束を取り出して、そこから二枚抜き取ってカルトン(つり銭受け皿)に乗せた。
店員は学生が鞄から百万円の束を普通に取り出すのを見てびっくりしていたけど。俺はそんなの気にしていられない。こっちは妹が俺にいつ気づくか気が気でなかった。
店員に買った下着が入った紙袋を受け取ってミキミの手を引いて急いでランジェリーショップを後にした。
真っ直ぐ田中さんが待つ車に戻りって帰った。




