超能力者達の組織12
エレベータを見送った後、俺は迫りくる怪物達を無視してハイドモードを解除した。自由委員会の人から奪った服もすべて脱ぎ捨てた。
ヘルメスさんの姿ではなくマヒルとしてここから抜け出す必要がある。自分の意志でここに来たようなもので、ヨルノやミキミ達に心配させないために行方不明になるわけにはいかない。この間誘拐されかけたわけだし。
女の姿になって、着ていた服をテレポートで取り寄せて着替えた。そして今いる階より二階上にテレポートしてエレベータが通り過ぎる前にすぐにボタンパネルを連打しながら押した。
ドアが開くと同時に滑り込むようにエレベータ内へ侵入した。俺の姿をギョッとした顔をした教命部+西村が見られた。
必死に逃げてきましたよって演出するために顔を赤くして額に脂汗を出して息切れしている。今頃、ヘルメスさんは肉の塊の怪物達を食い止めているって思ってくれるだろう。これでへルネスさんと俺は別人と思ってくれるだろう。
「よかった。マヒルちゃん無事で」
「そんなことより早く出して!気持ち悪いのが来るから閉めて!」
俺の荒げる声に教命部の人達がエレベータのドアを閉めてくれた。そしてエレベータは上に向かった。
「逃げきれた。もうダメかと思った」
「マヒルちゃん大丈夫?」
「大丈夫じゃないよ。僕を連れていこうとした人から必死に逃げ出せたけどそこからが大変だったよ。なんのあれは。焼く前のハンバーグみたいのってあれ生きているの?ゲームのクリーチャーでももっと生き物らしい動きを見せるのに」
心配そうに手を差し出したのは西村だ。その手をはねのけて肉の塊の怪物の愚痴をこぼした。
制御室を探しながら肉の塊の怪物の相手は本当に大変だった。このまま眠りたいほどだ。
「もうここまでくれば大丈夫ですよ。このエレベータは地上に向かっているのですから。ああ、ヘルメスさんのお陰で私達は地上に戻れるのですから一人残った彼に祈りを捧げましょう」
何やらネネの様子がおかしい。手を組んで頬を染めて祈っている。キショイ怪物がわんさかいる場所から無傷に逃げられたんだ神に祈りたくなるか。教命部って宗教的な組織みたいだし、ほっといた方がいいだろう。
その隣でお坊さんのタケゾウが両手を胸の前で合わせて南無南無と合掌しているし、変な行動ではないだろう。
てか、まるでヘルメスさんが肉の塊の怪物にやられたみたいな雰囲気が出ている。マヒルとして外に出る必要があったから残っただけで怪物達を止める為に残ったわけではない。
俺一人だけだったらあの場面で逃げることは簡単だったけど、ウイルスのワクチンの為に残ったと言える。すべては自分の為だ。
「もうすぐ地上だよ」
エレベータの階を現すモニターパネルにはB1表示から1に変わった。
怪物達の相手にしていたから気にならなかったけど、地上はどうなっているのだろうか。全世界にウイルスが蔓延しているはずだけど、映画みたいに人が死にまくっているわけではないだろう。
てか、西村達、男性陣はウイルスに感染していないのだろうか?お昼の時点で世界中の男性が20億人死んでいるレベルの感染力なのに、おかしい。能力者は感染しないのかと思ったけどウイルスを持ってきた自由委員会の人は死んだって言っていたし、何かしらのトリックがあるに違いない。
「今更なんだけど、西村達って男の人なのにウイルスに感染してないの?」
「ん?ああ、私は大金を払って一時的に死ななようにしているんだ。ワクチンを打たないと私もウイルスで死んでしまうだよ」
一時的に死なないようにしている?へーそんな能力を持っている人がいるのか。効果は有限みたいでただ制限時間までウイルスを何とかしないと死んでいまうみたいだ。
こんどは教命部の男達に視線を向けると。
「うち等はお守りで感染しないっすよ」
レオが言う。
宗教染みた回答が帰って来たな。ゲームで言うところのアイテムにエンチャントしたみたいに誰かの能力にかかったお守りでも持っているのか。効果が切れたら、ウイルスで死ぬのは変わらないようだ。
詳しいことは企業秘密みたいでそれ以上は何も言わなかった。
教命部とスーパーアルティメット団は同じの能力者とはいえ別の組織だし、仲間の情報を漏らすことは嫌だろう。
エレベータが止まり、ドアが開く。ドアの向こうは暗い廊下が続いていた。
「レオ、ウイ。前に出て警戒」
「ウっス!」
「はい!」
ネネの指示でレオとウイが前に出る陣形で廊下を進んだ。ここにも肉の怪物がいるかもしれないと警戒をしているが、ここには何もいない。
視界で周辺を調べてみたが、ここは倉庫のような建物の奥の隠し通路だと分かった。
「む?行き止まりっす」
「ここまで行き止まりだったぞ?引きかえしてもエレベータしかない」
「壊してみる?壁は薄いよ」
「そうですね。時間がありませんので壊しましょう」
教命部は意外と脳筋らしく。隠し扉がある壁に局面するや否や隠し扉を破壊した。
人命がかかっているわけだからこんなところで悩んでいる暇があったら、薄い壁を破壊した方がいいと考えただろう。
そして俺達は倉庫の外に出た。




