やっぱりはちみつとバナナは合う
――袋を開けた瞬間。
ゴリラの黒々とした立派な鼻に、はちみつ特有のさまざまな花の香りが混ざった匂い、南国を感じさせる香ばしいココナッツ匂い、最上級の好物で甘いバナナの匂いという3つの強烈な匂いが刺さり、思わずハチミツがコーティングされたバナナチップスを1枚口に運ぶ。
すると、ゴリラはピタリと動きを止めた。
「ウッ、ホ……」
その様子を心配そうに見つめる熊主任。
「ど、どうでしょうか?」
「ウホ……」
熊主任の問い掛けにゴリラは声にならないような声で返事をする。
――だが、次の瞬間。
雄叫びを超えた、魂の叫びをあげた。
久しぶりの全力ドラミング付きだった。
「ウホウホー!」
周囲にその雄叫びとドラミングが響き渡る。
これがゴリラの住まう都会であれば、熊主任が落ち着きを取り戻させるために、バナナや、バナナに由来する何かを放り込む。
しかし、ここは人通りの多い都会ではなく、自然豊かな田舎町。
嬉しそうにドラミングするゴリラを前に、熊主任は優しく微笑んでいた。
「ふふっ、そんなに美味しかったのですね! もちろん、バナナチップスやココナッツもあってこそでしょうけど、一生産者として嬉しい限りです」
「ウホ」
自身を見て微笑む熊主任に対して、ゴリラも笑みを浮かべる。
そして袋をシャカシャカと振り、はちみつのコーティングされたバナナチップス取りやすいような位置にズラして、熊主任へと差し出した。
「私も頂いていいんですか?」
「ウホウホ」
ゴリラは遠慮する熊主任へ満面の笑みで応じる。
「で、では! 頂きます」
差し出された袋から、はちみつを纏ったバナナチップスを取り出し、口へと運ぶ。
熊主任は無言のまま咀嚼し続ける。
咀嚼が終わりゴクンと喉を鳴らすと、また袋に手を伸ばした。
「ウ、ウホ?」
ゴリラは何も言わない熊主任の顔を覗き込むと、無言でチップスを噛み締め、その顔は平静を装っているようで、どこか震えていた。
「……しいです」
そして、息を「スゥ」と吸い込んだかと思えば、突然大声を上げた。
「なんですかぁぁー! これぇぇー! とても美味しいんですけどぉぉー!」
その姿はまるで先程美味しさのあまり雄叫びを上げたゴリラのようだ。
いつもはもの静かな熊主任が大声を上げたことにより、ゴリラは動揺が隠せないでいた。
「ウ、ウホウホ?!」
キョロキョロと太い首を動かし周囲の様子を伺っている。
「ふふっ、大丈夫ですよ! ついつい美味しくて、私らしくない反応をしてしまいました」
「ウホー!」
「間違いないです! これはバナナはちみつよりいけますね! それにこのコーヒーとも合う!」
手がはちみつでベタつこうが、美味しさに勝るものなしとばかりに頬張っては、コーヒーをゴクゴク飲んでいる。
そんな熊主任の姿に思わず、ゴリラは笑みがこぼれた。
「ウホウホ」
「いえ、こちらこそですよ! またこれで新たなはちみつとバナナの可能性を見出せましたしね」
「ウホウホ?」
「もちろん! 嬉しいですよ。改めてこんな所まで来ていただきありがとうございます!」
「ウホー!」
「ふふっ、ではさっさと残りの作業を片付けてしまいましょうか!」
「ウホウホ!」
こうして、ゴリラと熊主任は協力してはちみつの採取を進めていった。
☆☆☆
この後、自然豊かな土地の平屋からは、はちみつづくしとバナナ料理に舌鼓を打つゴリラの声と控えめながらも楽しそうに笑う人間達の声が響いていましたとさ。
ウホウホ




