番外編 二人旅
アイルとエリーンが、デビル退治の旅にでている時のエピソードです。
番外編 二人旅
俺とエリーンは今、デビル退治の旅に出ている
それぞれ馬に乗り、デビルが出現すると聞いた場所を回る。
1頭の馬でないのが少し寂しい······密着できないから······なんて······
しかし、世の中がこんなに美しいとは思わなかった。
今までは得も知れぬ不安と常に戦っていたので、心から美しさを感じることができなかった。 未だに俺の中にはバルベリトがいるが、天使となった彼に今では感謝している。
見上げると、生い茂った森の木々の間から眩しい太陽の光がキラキラと輝き、光を落とす。
気持ちいい風が時折頬をかすめ、馬の鬣をそよがせる。
耳を澄ますと色々な音が聞こえる。 葉が擦れ合う音に交じって鳥が羽ばたきさえずる。
遠くで鹿が鳴き、あれはキツネの子供か? 母キツネを呼んでキュウキュウ鳴いている。
そしてエリーンの気持ちよさそうな寝息。
······寝息?!!
横を見ると、馬の上でエリーンは居眠りをしていて、落ちそうになっている。
あわてて馬から飛び降りて落ちてくるエリーンを抱きとめた。
「もう寝る時間だな。 いい場所を探さないと······」
デビル退治のために昼間眠って夜起きるという、昼夜逆転の生活を送っている。
エリーンの結界はエリーンが眠ってしまうと消えてしまうからだ。
少し先に水の音がする。 2頭の馬の手綱を掴んで、エリーンを起こさないように抱いたまま移動する。
綺麗な小さい湖があった。
エリーンを柔らかそうな草が生える木陰に寝かせた。
「水浴びでもするか」
マスクは付けたままだが、服を脱いで下着一枚で水に入る。 冷たくて気持ちいい。 沢山の魚もいる。 朝飯のために数匹捕まえた。
水の上で仰向けに浮かんで空を見上げた。 ゆっくりと流れる雲。 時折鳥が横切る。
「気持ちいいなあ······」
その時、人の気配がした。 あわててエリーンの元に向かう。
6人の男達が気持ちよさそうに眠るエリーンに近づいてきた。
「なんだこいつ?」
突然目の前に裸で現れた俺に、男達は半笑いで驚く。
「何か用ですか?」
「ちょっとそこで寝ているお嬢ちゃんに、俺たちの相手をしてもらおうと思ってな。 お前はこのお嬢ちゃんの連れか? 悪いことは言わねえからあっちに行ってろ」
男達はヘラヘラ笑いながら俺にズイと詰めよる。
「困りましたね······」
「そりゃあ、そんな格好で困るだろうよ。 サッサとのけよ」
男が俺の肩をつつく。 その手を掴んで投げ飛ばした。
「いってぇ~~~っ!! この野郎!! やろうってのか?!」
男は立ち上がりざま剣を抜き、他の男達も剣を抜いて構えた。
その時、裸の姿がユラリと揺れたかと思うと、男達の手から剣がなくなっていて、俺の手元には6本の剣があった。
「「「あれ??」」」
その剣を上に向かって投げた。 すると、その剣は男達の後ろにザクザクザクと刺さった。
「「「わっ!」」」
男達は俺と剣を見比べ戸惑っている。
「その剣を持って、どこかへ行ってもらえませんか?」
男達は顔を見合わせる。
「まだやりますか?」
俺はちょっと男達を睨みつけてみせた。
「あ···いや······帰るか」
「お···おう」
男達は地面に刺さった自分の剣を抜いて、そそくさと帰っていった。
この旅で一番厄介なのは人間だ。 デビルは問題ないし、獣は俺の覇気だけで逃げていく。 相手が人間の場合は相手の剣を奪って、やる気を削ぐのが一番効果的だ。 今までにも何度かこういう事があった。
「ふう~」
俺が大きなため息をついて振り返ると、エリーンが自分の胸元をグッと抑えて、真っ赤になって俺を見上げていた。
「アイルさん! いくら婚約をしたと言っても、私はまだ17になったばかりですし、デビルをこの世から殲滅してしまうまで、赤ちゃんができると困ると思うのです!」
「え?······あっ!」
自分が下着一枚な事に気が付いた。
俺も顔が······いや、全身から火が出そうなほど真っ赤になり、あわてて真っ白な翼を出して自分の体を覆い隠した。
「い······いや······これは······その······」
アイルの姿がエリーンの前からフッと消えた。
「あら?······アイルさん?」
離れた所で慌てて服を着る。
未だに真っ赤な顔をした俺は魚を持って、出来る限り澄ました顔で戻った。
「み···水浴びをしている時に盗賊が来たから相手をしていただけだよ。 逃げていったからもう大丈夫だけど」
ちょっと言い訳っぽいけど、本当のことだし······
そして、手に持つ魚を持ち上げてみせた。
「魚······食べる?」
「はい」
「うん。 じゃ、焼くね」
魚を焼く俺の横にエリーンが座り、体を預けてきた。
そっとエリーンの肩に腕をまわす。
「早くデビルのいない世の中にして······赤ちゃんが欲しいわ」
「うん······エリーンに似た子供なら可愛いだろうな······」
「アイルさんに似た子供だと、もっと可愛いわよ」
顔を見合わせてニッコリと微笑み、ゆっくりと唇を重ねた。
二人の可愛い子供ができるのは、そんなに先ではなさそうですね( 〃▽〃)
番外編を思い付いてしまったので、投稿しました
(*^_^*)
ありがとうございましたm(_ _)m
「伝説のドラゴン 世界をかけた戦い」
こちらの小説もよろしくお願いしますm(_ _)m




