最終章 アイルとエリーン
危機は去ったあと、アイルの一番の悩みは·····
最終章 アイルとエリーン
使節団とウォルターひきいるレイス隊、そしてジンス達はゴルドと共にエルオゼア国に向けて発つことになった。
ロザリム国王は野営用に頑丈なテントと補給部隊も用意してくれ、いまだに多くいるデビルの脅威から何の心配もなく旅をする事が出来るようにしてくれた。
出発準備が整った。 アイルとエリーンはもちろん、国王自ら見送りに出ていた。
ジンスとヨング、そしてウォルターがアイルの前に来てひざまずいた。
「レイス殿、エリーン様。 本当にありがとうございました。 我が王も、いや、この世の全ての者がお二人に救われました」
アイルは珍しく照れ臭そうにしている。 今までマスクをしていたから気づかなかったのか。 そんなアイルを嬉しそうにエリーンが見上げる。
「いいえ、皆さんのおかげです。 あの時来ていただいたお陰で助かりました······あぁそうだ、ウォルターさん」
ウォルター達は、今回の帰還の旅には鎧は必要ないので平服を着ている。
「はっ! レイス隊隊長ウォルター、ここに」
なんだか堅苦しい男。 しかし、レイス隊って······
「今まで言えなかったのですが、あの時、エリーンを護ってくれてありがとうございました。 おかげで思う存分戦えました」
ウォルターは感動している表情でアイルを見上げてから、再び頭を下げた。
「そのようなもったいないお言葉! 恐悦至極にございます!!」
やっぱり堅苦しい男。
若いヨングは顔を輝かせてアイルに一歩近づいた。
「アイルさん、あっ、レイス様。 いつか必ずエルオゼア国にいらしてくださいね。 お待ちしております」
「はい、必ず。 みなさん、ゴルドをお願いします」
ゴルドがアイル達には興味がなさそうにサッサと乗り込んでいった馬車を、少し寂しい気持ちで見つめた。
「「「お任せください」」」
3人は一礼をしてから隊列に戻った。
ナパルもトルデーン国まで同行する。
「アイル、先に行くが、必ず後から来てくれよ」
「はい、必ず。 あっ! あの時、国王様への進言、ありがとうございました」
「いいってことよ。 おかげであちらさんの被害も少なくて、事後処理がうまくいったと王様も喜んでいたじゃないか」
「はい」
ナパルはアイルの肩をポンポンと叩いてからエリーンの方を向く。
「リンちゃん···じゃなかった。 エリーン王女様もお元気で」
「はい、ありがとうございます。 ナパルさんもお元気で。 皆さんにもよろしくお伝えください」
「うん、もしよければ遊びに来てくれ···ください」
ちょっとアワアワしてそう言ってから、アイルの耳元でささやく。
「おまえ、リンちゃんと夫婦ってのはウソだろ?」
「······はい······」
「だよな······うまくいくといいな。 お前も王族なら可能性はあるんじゃないか?」
「·········」
すべてが終わり、アイルの今の悩みはそこだった。
エリーンと別れなければならない。
エリーンとは別れたくない。 いや、別れることなどできないが、相手は一国の王女だ。
アイルは手をグッと握り締める。
その時、コホンと後ろにいたロザリム国王が咳払いをした。
「エリーンもとりあえず鍵の役目も必要なくなったことだし、そろそろお婿さん探しをしないといけないなぁ·········レイス君などはどうだ? ラサードの息子なら申し分ないと思うのだが?······まぁ、可愛い娘の選ぶ人なら誰でもいいけど······」
国王はちょっと悪戯っぽい顔で二人を見る。
エリーンは美しいグリーンの目を見張り父親であるロザリム国王を見てから、アイルと見つめ合った。 アイルも驚きで目を見張っている。
エリーンはロザリム国王に抱きついた。
「お父様! 愛してる!!」
アイルもロザリム国王に向かって深く頭を下げた。
「やったな! アイル!!」
「「わぁ~~~~っ!!」」
「「おめでとうございます!!」」
周りで歓声が起きた。
エリーンは父親から離れると、アイルに抱きついた。
アイルもエリーンを強く抱きしめた。
その後、アイルとエリーンは「婚約の儀」のみを早々に行った。
アイルの希望で内輪だけで簡単に済ませてもらい、そのあとすぐに2人はデビル退治の旅に出ることにしたのだ。
エリーンは囚われている間に、バーザル魔導士から結界魔法を習い、取得していた。
唯一のバーザル魔導士の善行(?)といえる。
いまだにデビルが狙うエリーンを囮にするといえば聞こえが悪いが、エリーン曰く、
「アイルさんは私の結界の中でゆっくりしていてくれればいいわよ! デビルは私が全部やっつけるから!」だそうだ。
エリーンに危険が及ばないのでアイルも安心してデビルに向かえるし、アイルの対デビルの力も、ほとんど無敵になっているので何も心配する要因がないのだった。
アイルがマスクをつけていた理由を聞いたロザリム国王は、新たにシンプルながら立派なマスクを作ってくれたので、アイルは常にそのマスクを着けている。
二人はデビルを退治しながら今までお世話になった人達の所にお礼を兼ねてまわった。
そして、[マスクドエンジェル]と[グリーンアイエンジェル]がデビルから世界を救ったという[エンジェルズ]という物語まででき、後世まで語り継がれていった。
END ?
「サタン様!! 大変です!!」
小悪魔がサタンの城に慌てて飛んできた。
ここは魔界。 人間界とは隔絶された世界。 悪魔たちは何とかして人間界に入り込み、人間どもを蹂躙できる日を楽しみにしている。
「どうした?」
「サ···サタン様······と······」
サタンの怒りが恐ろしくて、先を言えない。 小悪魔はブルブル震えだした。
「なんだ? 早く言え!」
「そ···それが······」
サタンはイライラし始めた。 自分の座る椅子のひじ掛けをダンと叩く。
「さっさと言え!!」
小悪魔は、ビクッとして体を硬直させる。
「扉が······」
「扉がどうした? もしかして扉が開いたのか!!」
サタンは嬉々として聞き返した。
「いいえ···」声が震える「扉が消えました」
「扉が何だと?」
サタンは自分の耳を疑った。
「扉が跡形もなく消えました!!」
サタンの顔が凄い形相にみるみる変わっていく。
「消えただとぉ~~~っ!!!」
「ヒエェェェェ~~~~~······」
サタンの覇気で小悪魔は吹き飛び、跡形もなく消え去った。
サタンは急いで城から飛び上がり、扉がある場所に向かった。 大悪魔達もサタンに続く。
扉がある場所には小悪魔達が群がっている。
「どぉけぇ~~~~っ!!」
サタンの覇気で小悪魔たちが吹き飛んで消滅していき、高い山の中腹辺りの扉があるその場まで道ができた。
サタン達は扉がある場所に降りた。 いや、あったはずの場所に降りた。
何もない。
ただの岩肌があるだけだった。
「ここ······だよな?」
サタンが覗き込む。
「······はい······」
ついてきた大悪魔が答える。
「本当に、ここか?」
「確かにここでございます」
サタンは怒りで震えだした。 体からモヤモヤと黒いオーラが広がる。
大悪魔達は慌ててサタンの傍から逃げだした。
「ベルゼブブゥゥゥ!! バルベリトォォォォォ!!!」
サタンのオーラが爆発し、辺り一帯が吹き飛んだ。
今度こそ END
長い間ありがとうございましたm(_ _)m
思ったより短かったですが、楽しんでいただけましたでしょうか?
この後、番外編を書きましたのでそちらも楽しんでいただけると幸いです。
そして、イメージ通りの素敵なイラストを描いて下さったベアごんさん! 本当にありがとうございましたm(_ _)m
また、新しい小説を思案中ですので、たまに「杏子」で検索してみて下さい(*⌒∇⌒*)
ユニオンビースト~霊獣と共に生きる者達~
3部作(続編とその続編)続けて書いています。
私は個人的に2作目が好きです( 〃▽〃)
そちらからでも読んでみて下さい。
あと、荒井新と魔法の急須~全然違うけどアラジンと魔法のランプの実写版を記念して~
ホッコリ笑える短編もあります。
よろしければそちらも一度開いてみて下さい。
(*^_^*)
また、お会いできる日を楽しみにしています。
本当にありがとうございましたm(_ _)m
杏子でした




