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傾国狐のまつりごと-食われて始まる建国物語-  作者: つね
最終章 後日譚
486/489

そして、現代へ 4

最終章毎日更新中!

完結まで、残り4話。

 種族や地域の交流とは、何も相手の全てを受け入れなくては成り立たないものではないのだ。


 受け入れられる部分だけで出来る対応をすればいい。結果、一定の距離が残ったとしても、それはそれで仕方ない。


 相手の全てを受け入れない代わりに、自分達の全てを相手が受け入れるよう強制してはならない。

 そして、どこまで受け入れるかはそれぞれの種族に任せる。

 それが、フィルの説いた「寛容」であった。


 そうして国内の秩序を調えると同時に、フィルは種族間や地域間の交流と交易を奨励し、交易を拡大し商品と資金が国内を巡ることで、種族や地域に経済的な利益がもたらされることを示して見せた。


 そして、価値観の相違から当初は距離をとっていた種族同士も、互いが一定の譲歩をして交流を持つことで経済的な恩恵を得られることを悟り、やがて自ら歩み寄っていった。


 もうひとつ、フィルが尽力したのは文字と言語の統一である。


 種族や個人の交流で最初のハードルとなるのは、意思の疎通である。そこでフィルは、言語と文字を統一することで、意思疎通が容易となれば、交流のハードルも下がると考えたのだ。


 その点で、まだ言語や文字が未発達な時代からやり直しができたのは幸運だった。

 フィル達の使う帝国の言語と文字をスタンダードなものとして普及させることができたのだから。


 建国から君臨し続ける女王フィルと女王妃リネアの下、数百年の時をかけてサエイレム王国は発展と拡大を続けた。


 王国から侵略したことは一度としてなく、自ら王国の傘下へと参じた者は自治州として受け入れ、全盛期にはテテュス海に当時の文明圏の大半をその版図とするほどであった。


 その後、フィルは君臨すれども統治せずの姿勢を示して調停役に徹するようになり、各地の自治州の裁量を拡大、サエイレム王国は、自治州を束ねた連邦国家から国家間連合というべきものへと姿を変えていく。


 そしてフィルたちはひっそりと歴史の表舞台からフェードアウトしていったのである。


 サエイレム王国が滅亡したという記録がなく、その終焉がどうであったのか、歴史的な謎となっているのはこのせいだ。


 サエイレム王国の流れを汲むこの仕組みは、現代においても国家間の国際協調の基盤となっている。 

 そうした概念的な意味でサエイレム王国は、今も存続していると言えるのかもしれない。


 …その偉大なる女王は、今や市井に溶け込み、大好きな料理を抱えて上機嫌に家路を急いでいるのであるが。


「ただいまー」

 フィルとリネアが帰ってみると、メリシャが留守番していた自宅の人口が増えていた。


「あら、お帰りなさい。お邪魔してるわよ」

「久しいの。息災であったか?」

「フィルさま、リネアちゃん、おかえりー」

 ダイニングテーブルで向かい合い、パエラも交えて談笑しているのは、妲己と玉藻である。


 今、ふたりはフィルとリネアから離れ、それぞれの故郷で暮らしている。


 サエイレム王国が成立した後、ふたりは東方の故郷に戻り、後の悲劇を生まぬよう、フィルと同様に国の成り立ちから歴史を変えた。


 それぞれの国のトップに立ったふたりは、西方のサエイレム王国と交流を結び、それによって大陸を東西を結ぶ大交易路が成立した。

 特に東方から輸出された代表的な産物である絹織物にちなみ、この交易路は『シルクロード』と呼ばれている。


 フィルとリネアの中に住んでいた霊体であるふたりが、どうしてそんなことができたのか。それは、フィルが九尾の分体をふたりの依り代として提供したからだ。


 ヒクソスでの騒動の折、フィルは、テトが自らの分体を作り出していたことをヒントに、フィルは九尾の力の源である九つの尻尾を分体として切り離す術を編み出していた。


 その分体を妲己や玉藻の魂の依り代とすることで、ふたりは実体の身体を持ち、フィル達から離れて自由に動けるようになったというわけだ。


 今はふたりともフィル達と同様に楽隠居しつつ世界を見守っている。そして、たまにこうして遊びに来るのだ。


「いらっしゃい、ふたりとも。そろそろ来るんじゃないかと思ってたわ」


「うむ、林檎の実る季節じゃからな」

「おいしい林檎のお菓子を御馳走してくれるんでしょ?」

 実体を持ったことでさらに色香の増した妲己が、ふふっと微笑む。分体なのに本体よりも豊かな胸を、フィルは恨めしそうに見つめた。

次回予定「そして、現代へ 5」

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