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傾国狐のまつりごと-食われて始まる建国物語-  作者: つね
 第5章 神話の終焉
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アペプ復活 3

 同時にアペプは、とぐろを巻いていた巨体をくねらせ、中庭を取り囲んでいる回廊などの建物を崩し始めた。石造りの建物が、まるで粘土細工のように砕け、柱が倒れる。

 

「おのれ、予の神殿を…!」

 自らの神殿が破壊されていく様子に、テトは悔しそうに歯噛みした。


「よし、吾輩が鉄槌を下してくれる」

 オシリスが念ずると、地面から緑の若木が生え、見る見るうちに巨木へと成長していく。オシリスは死と再生を司る冥府の神であると同時に植物神という側面をもつ。肌の色が緑なのは、そのせいだ。


 アペプの鎌首と同じくらい高さにまで成長した巨木は、ブルブルと震えると、自ら根の部分で地面から引き抜いた。そして、根が足、太い枝が腕のように変化し、木の巨人となった。

 ズン、と地響きを立てて動き出した巨人はアペプに向かう。その足に引っかけられて、また神殿の一部が崩れ落ちる。

 

「予の神殿がまた壊れたではないか!」

「アペプを止められねば、もっと壊れるのだぞ!」


「時と場合を考えろ!」

 背中でわめくテトとオシリスをセトが一喝する。木の巨人と向き合うアペプの上で、アセトがぐるんと身体をひねり、セトに向けて両腕を伸ばしたからだ。そして、両手の親指と人差し指の指先を触れさせて三角形をつくると、その中にセトが入るように照準をつけた。

 アセトが不吉に口元を歪める。その瞬間、アセトの指の間から鋭く尖った氷の塊が飛び出し、セトに迫った。


「…ッ!」

 攻撃を察していたセトは急旋回して回避したが、テトとオシリスは振り落とされそうになって悲鳴を上げる。


 オシリスが生み出した木の巨人は、アペプに掴みかかろうとしたところで霧状にした強酸を吐きかけられ、苦悶に全身をよじっていた。辛うじてアペプに殴りかかった腕は、すでに酸で腐食していて、アペプに当たった途端にボロリと砕けて、何のダメージも与えられない。

 邪魔だとばかりに尻尾の先の一振りで木の巨人をへし折り、アペプはゆっくりと移動を始めた。押し退けるように神殿の建物を壊しながら、大河の水辺へと向かっていく。


「ぐ…まるで相手にならんとは…」


「不甲斐ない、予がやる!」

 テトは、手にしたシストルムを振り上げると、シャシャンと大きく音を立てた。ビューッと突風のような強い風が巻き起こり、渦を巻いてつむじ風となった。そして、見る見るうちに勢いを増し、天に伸びる竜巻と化す。

 砕かれた神殿の石材が風に煽られて舞い上がり、竜巻の中を飛び回って激しくぶつかり合っている。凶暴な空気の流れはその内部にあるあらゆる物体を衝突させ、摩擦させ、やがてそれは雷を生み出し、竜巻の表面に稲妻が走った。


 テトは、3本の竜巻を発生させると左右前方と後方からアペプを取り囲んだ

「行け!」

 テトの号令とともに、竜巻が3方向からアペプへと迫り、その巨体を呑み込んだ。荒れ狂う風と巻き込まれた石が容赦なくアペプを打ち据え、ドーン!という空気を震わす轟音とともに、落雷の閃光がアペプに突き刺さる。


 まさかテトにこれほどの攻撃力はあるとは、フィルも予想していなかった。

 人を守り、歌や踊りを愛する神、慈母のようなそれはテトの一面でしかない。この世の森羅万象あらゆる流れを司り、調えるテトの権能、天空の神としての側面も併せ持つテトは、本来強大な力を持つ古い神でもある。…その力は、果たしてアペプに通用するか…。


 竜巻に直撃されたアペプは、苦しげに身をよじらせている様に見える。しかし、攻撃するチャンスであるにも関わらず、激しい竜巻に阻まれて、フィルたちもアペプを攻撃する事ができないでいた。

 アペプは、竜巻の攻撃に晒されながら大河の水辺に向かって進み続けている。


「テト、竜巻を消して!」

 じっと状況を見ていたフィルが、不意に叫んだ。

 

「なにを言うかっ…フィルよ、血迷ったか?!」

「いいから、消して!」

 おそらく、テトの竜巻はアペプに大したダメージを与えていない。さすがに無傷ではないだろうが、逆にそれ以外の攻撃からアペプを守る格好になってしまっている。


「…むぅ、わかった」

 強い口調で言うフィルに、テトは不満げな表情をしながらも了承した。

次回予定「アペプ復活 4」

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