表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
傾国狐のまつりごと-食われて始まる建国物語-  作者: つね
 第5章 神話の終焉
428/489

アペプの封印 3

「オシリス殿、次はこの上ですね?」

 リネアは、背の上で顔色を悪くしているオシリスに問いかけた。


「え…あ、あぁ。その通りだ」

「では、行きます」

 もう少し…もう少しで地上に戻れる。フィルを助けられる…もはやリネアにはその一念しかない。ティフォンは水煙の柱の頂上に向かって急上昇を始めた。その背の上では、再びオシリスが悲鳴を上げていた。


 ほどなくして、ティフォンは水煙の柱の頂上が視界にとらえた。このまま突っ込んだらまた上下を反転されてしまう。徐々に速度を落として、空中に静止した。


「…も、もう着いたのか」

 ややぐったりした様子のオシリスが、周囲を見回しながら言った。


「リネア様、この上に問題の防壁があるのですね」

「はい。見てください。ここまで上ってきた死者の魂が、あのように弾かれて下へと戻されています」


 ティフォンの頭が向いた先では、以前と同じように死者の魂である淡い光球が、見えない壁にはじき返されるように下へと落ちていった。


「あの魂も、放っておいたらアペプの餌になるんでしょう?さっさと冥府の封印を解いた方がよさそうね」

「はい。オシリス殿、お願いします」

 うむ、と力強く頷いたオシリスだったが、次の彼の言葉に、全員が唖然とした。


「相わかった。ではリネア殿、バステトに封印を解くよう呼びかけてくれ」


「はい?」

 さすがのリネアも、一瞬、オシリスの言った意味を理解できなかった。

「私が、テト様に呼びかける…のですか?」


 だがオシリスは、当たり前だろう、と言った様子で言葉を続けた。

「だから、冥府の関門の開放は、地上に残ったバステトがその役割を担っているのだ。中から関門を開く事ができては、関門の意味があるまい?」


 理屈としてはわからないでもない。だが、納得できるはずもない。もう少し、本当にもう少しでフィルの所に戻れるはずだったのに。リネアは落胆のあまり声も出なかった。

 当然ながら、リネアはテトに呼びかけるすべなど知らない。


「オシリス、どうにかできんのか。冥府の封印はお前が構築したのだろう?」

 見かねてセトが言うが、怒りの篭もった妲己の視線に気付くこともなく、オシリスは胸を張って答える。


「だからこそ完璧で、破れぬのだ。さっきも言ったがアペプを地上に出す訳にはいかん。だから決して内側からは解けぬように構築し、外にいるバステトだけが関門を開けるようにした」


「それならそうと、最初から言いなさい!」

 遂に我慢できなくなった妲己が、後ろからオシリスを殴りつけた。

 悪気は無いにしても、リネアを絶望に突き落としたのだから、一発殴らないことには気が済まない。

 

「痛いではないか!」

「うるさいわね。本当なら首をはねてやりたいところよ」


「まったく、吾輩が何をしたというのだ……ん?まさか、バステトと話ができぬのか?」

「オシリスよ。神同士の我らができぬことを、リネア様や妲己殿が出来るはずなかろう…」

 呆れたようにセトが言い、ようやくオシリスも今の状況が手詰まりだと理解した。


「むぅ…なんたることだ…」

「それは妾たちの台詞よ」

 はぁ、とため息をついた妲己は、優しくティフォンの首筋を撫でる。


(ふたりとも、ここは少し様子を見ようではないか。おそらく、地上ではフィルやメリシャも冥府への入り口を開こうとしているはずじゃ)

 リネアと妲己の脳裏に玉藻の声が響いた。


(玉藻、そうは言っても、それより前にアペプが復活してしまったら、大変な事になるわよ)

(さりとて麿たちではどうにもならん)

 淡々と言う玉藻に、妲己も落ち着きを取り戻す。


(それは…そうね。わかった…)

(心配するな。あのフィルがリネアを助けに来ないはずはなかろう。メリシャやテトにどんな無茶をさせているか、その方が心配なくらいじゃ)

(はい、玉藻様…)

 冗談めかして言ってはみたものの、玉藻にも待つ以外の方法が思い付かない。返事をしたリネアの声も暗かった。


 …フィル、貴女の大事なリネアはここにいるのよ…早く迎えに来なさい……妲己は天を仰いで無言で念じる。


(妲己?!)

 突然、妲己の脳裏にフィルの声が響いた。

次回予定「冥府開放 1」

2023年年内の更新は、今回が最後となります。

今年もご愛読ありがとうございました。


次回は2024年1月1日、元旦の更新です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ