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傾国狐のまつりごと-食われて始まる建国物語-  作者: つね
 第5章 神話の終焉
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女王を継ぐ娘 1

 メリシャは、椅子に深く腰掛けて軽く目を閉じていた。

 …眠ってはいない。その証拠に、膝の上で組まれた両手の指は、落ち着きなく動いていた。


 メリシャの前には、長椅子に腰掛け、横たわるテトに膝枕しているネフェルがいる。


 フィルとパエラがテトの中に入って、まださほどの時間はたっていない。だが、メリシャはじりじりと胸を締め付ける不安に耐えていた。


 …フィルとパエラは、帰って来るのだろうか。


 妲己とリネア、玉藻が行方不明の今、もしフィルとパエラまでいなくなってしまったら、メリシャは本当にひとりぼっちになる。今まで、一緒にいるのが当たり前だった全員が、今は誰もいない。


 幼い日、病に冒された母サリアが自ら命を絶ち、メリシャはたった一人で深い森を彷徨い、フィルたち出会うまで生き存えた。

 あれから500年たって、記憶は少しおぼろげだが、あの時の悲しさ、辛さ、寂しさ、そして…怖さは、はっきり憶えている…あんな思いは二度としたくなかった。


「お願いだから、無事に帰ってきて…」

 ポツリと懇願するように言葉が漏れた。


 …その直後、メリシャの願いは通じる。

 突然、テトの中から投げ出されるようにフィルとパエラが空中に現れた。


 帰ってきたのは、どうやらふたりにとっても意図するところではなかったようで、やや驚いた表情で辺りを見回していた。

 パエラの糸を辿って、記憶が漂う空間の出口へと戻ってきたフィルとパエラは、気がつくと、そのままテトの外へと放り出されていたのだった。


 しかし、メリシャとって、そんなことはどうでもよかった。


「フィル、パエラ、おかえりなさい」

 メリシャはホッとした笑みを浮かべて駆け寄る。テトの記憶を見た成果より何より、ふたりが帰って来てくれたことにメリシャは安堵した。

  

「「ただいま」」

 フィルとパエラは声を揃えて、メリシャの側に降り立った。


「わたしもパエラも、大丈夫だよ」

 フィルは言った。少し潤んだ瞳を見れば、メリシャがとても心配していたことはすぐにわかった。霊体の身では抱き締めてあげられないのが残念だが、とにかく自分たちは無事だと伝える。


「良かった」

 メリシャは、嬉しそうに頷いた。

 

「う…うーん…?」

 無事を喜び合う3人の後ろで、小さく唸りながらテトが身を起こした。


「テト様、平気?」

「ネフェル…うぅ、気持ち悪いにゃ」

 ネフェルがテトの背を優しくさすってやる。


「テト、協力してくれてありがとう。色々わかってきたよ」

「それはよかったにゃ…フィルたちのおかげか、テトも色々思い出してきたにゃ…」

 礼を言ったフィルに、テトは自分の額に手を当てながら言った。


 フィルたちがあの門番役を退けたせいなのか、思い出せなかった記憶が、テトの中で解放されていた。ただ、順序も何も関係なく一気に流れ込んできた記憶のせいで、頭は痛く気分は最悪であった。


「フィル、今日はテト様を休ませたい」

「うん。そうして。…テトには十分協力してもらったから、ゆっくり寝かせてあげるといいよ」

 フィルが頷くと、ネフェルは小さなテトの身体を抱き上げて、隣の自分たちの部屋へと向かった。


「テト、大丈夫かな」

 ネフェルの背中を目で追いながら、メリシャがつぶやく。


「たぶん、しばらくゆっくり休めば大丈夫だと思うよ…たぶん、パエラが記憶を隠していた門番を倒してくれたから、記憶が戻ったんだと思う」

「門番…そんなのいたんだ…でも、フィルじゃなくてパエラが戦ったの?」


「えぇ…」 

 フィルは顔をしかめる。返事は一言だけで、それ以上話そうとしない。

 余程話したくないことがあったのだとメリシャは察したが、逆に何があったのか興味が湧いた。

次回予定「女王を継ぐ娘 2」

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