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傾国狐のまつりごと-食われて始まる建国物語-  作者: つね
 第5章 神話の終焉
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テトの中へ 1

 表面上は笑顔を見せつつも、内心ではメリシャも不安だった。


 前回、オシリス神殿に入る前に未来視を使った時は、生まれて初めて未来が『見』えないという経験をした。

 今思えば、アセトの魔術で妨害されていたのかもしれないが、もしそうでないのなら、自分は未来視の力を失ってしまったのではないか…。


 リネアと妲己を冥府から助ける手掛かりは、今のところ未来視に頼るしか方法が思い付かない。だから…お願いだから『見』えてほしい。


「では、始めます」

 いつもなら、未来視を使う時はリネアに膝枕をしてもらうのだが、そのリネアはいない。寂しさと不安を感じつつ、メリシャは深く椅子に腰掛けて未来視を発動した。


 メリシャの全身に出現した百の目が開く。それぞれの目が見た未来が、次々とメリシャの脳裏に映し出された。


 『見』えた事にメリシャはまず安堵する。だが、その『見』えた光景は思いも寄らぬものだった。


 そのどれもにあったのは、巨大な蛇が大河を割って現れ、激しく暴れ回る姿。大河の水を大波に変えて地上を押し流し、地を抉り、町を破壊する。


 その蛇に立ち向かうのは、赤褐色と青銅色の2体の竜、そして、金色の大妖狐、テトと思しき姿と、緑色の顔をした青年の姿もあった…あれは、オシリス神だろうか…


 別の未来では、立ち向かう者は誰もおらず、巨大な蛇が地上を思うままに蹂躙していた。メンフィスと思しき都市は廃墟となり、王城も無残に崩壊していた。


 また別の未来では、金色の大妖狐が、ただ一頭で巨大な蛇に立ち向かっていた。だが、形勢は不利らしく、その身体はすでに傷だらけ。悲しみと怒りに彩られた目を蛇に向け、その喉元に食らいついて差し違えようとしていた。


「メリシャ…?」

 百の目がゆっくりと閉じていくのを見て、フィルは声をかけた。


 未来視を発動したメリシャの表情は、辛そうに歪んでいた。

 きっと、良くないものを見たのだ…それがもし、リネアの身に関わることだったら…フィルは不安に苛まれていた。


「リネアは…?!」

 目を覚ましたメリシャに、フィルは思わず訊いた。本当ならまずメリシャを心配すべきなのだが、それでも訊かずにはいられなかった。


「とても大きな蛇が、暴れてた」

「え…?」

 期待したのとは全く違う答えに、フィルは思わず声を漏らす。


「どの未来でもそうだった。だから、これはきっと確実に起こるんだと思う」

 メリシャは、未来視で『見』た光景をありのままに話し始めた。


 しかし、メリシャにもあの巨大な蛇の正体はわからない。そして、なぜ現れ、なぜ暴れているのかも。

 未来の中には、フィルやリネアが神獣の姿で蛇と戦っているものもあった。その未来ならば、リネアや妲己を冥府から救えているのだと思うが、肝心の救出方法はよくわからなかった。

 巨大な蛇の出現という大きな災いの前に、他の事象が霞んでしまっているのだ。


「アペプ…」

 ポツリとつぶやくようにテトが言った。


「テト様、何か知ってるの?」

「…わからないにゃ。でも、なんとなく浮かんだのにゃ…」

 ネフェルに訊かれたテトは、うーんと唸って首を傾げる。本当に、どうしてアペプの名を口にしたのかわからない様子だった。


 しばし、重苦しい沈黙がその場を支配する。

 メリシャの未来視でも、リネアと妲己を救出する方法を見ることはできなかった。メリシャ自身も期待していただけに、大きく落胆した。


「ねぇ、パエラ」

「なに?フィルさま」

「わたしたち、霊体ってことはテトの中にも入れるのかな?」


 難しい顔でしばし考えていたフィルが、隣のパエラに小声で話しかけた。

次回予定「テトの中へ 2」

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