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傾国狐のまつりごと-食われて始まる建国物語-  作者: つね
 第4章 神話の正体
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艦砲射撃 1

 ここで、時は少し戻る。

 ネウトの船団を退けたフィルの弩砲戦艦とメネスの軍船5隻は、そのまま上流に向かって航行を続け、まだ空が暗いうちにメンフィスを目前にしていた。


「フィル様、ただいま戻りました」

 メリシャのもとに出かけていたリネアが、ふわりと音も無く甲板に着地した。


「おかえりなさい。メリシャの様子はどうだった?」

「はい。作戦通り、ネウト軍を引き付けてくれています。メリシャは、立派に指揮を執っていますよ。…まだ少し緊張してはいるみたいでしたけど」


「そっか…」

 フィルは嬉しそうな笑みを浮かべた。


「…ですが、どうやら動員されているネウト軍の数が予想より多く、1万を超えるようです。メンフィスに残っている兵も予想より多いかもしれないから、気をつけた方が良い、とメリシャから伝言です」


「そう…一応、このことはホルエムにも伝えておいた方が良いわね」

「はい。それでは、ホルエム様にも伝えてきます」

「うん、お願い」


 再び飛び立つリネアを見送ったフィルは、左舷側の川岸に沿って広がるメンフィスの町に目を向けた。


 今は深夜。夜明けまではまだしばらく時間があり、誰もが寝静まる時間ではあるが、これほどの都市で、建ち並ぶ家々に明かりの一つも灯っていないのは、おかしく感じる。

 連合軍と対峙するネウト軍の兵力が予想よりもかなり多い…メリシャからの伝言を反芻する。しかし、この町の様子からすれば、メンフィスに予想より多くの兵が残っているとは思われない。


 多くの兵が町にいて防備を固めているのなら、城壁や港に不寝番の兵がいて、明かりを灯しているはず。しかし、船上から見える限り、王城にわずかな明かりが灯っているだけだ。むしろ、メンフィスの防衛を放棄して、動員できる兵力を根こそぎ出陣させたように見える。


 状況に不明な部分はあるが、作戦を中止する程の理由はない。夜明けを期して行うメネス王城の強襲作戦はこのまま予定通り決行する。


 メリシャたちが引き付けているネウト軍の兵力が想定よりも多いのであれば、なおさら迅速に事を進めて、ネウト軍の退路を断つ必要がある。そのためにも、この戦艦にはもう一働きしてもらわなくてはならない。フィルは後ろを振り返り、甲板上に並ぶ5基のバリスタに目を向けた。

 先程のバリスタと火矢を使った敵軍船への攻撃は、実際に行われることは稀であったものの、フィルが知っている帝国海軍の戦術のひとつであった。しかし、これからやろうとしてるのは、大河に浮かんだ弩砲戦艦からの陸上の城塞に対する直接砲撃だ。フィルも初めての試みである。


 『攻城弩砲』という名のとおり、バリスタは本来攻城用の兵器だ。バリスタが陸上にあろうと水上にあろうと、その射程内に目標の『城』があるなら同じではないか…という発想である。艦の位置は、岸から約50メートル。王城までは約300メートル。バリスタの射程ならば十分に届く。ホルエムたちが王城に到着するまでの間に、ここから先制攻撃を行うのだ。


 ほどなくしてリネアが戻ってくると、フィルは後ろについてきている5隻の軍船、ホルエム率いる突入部隊に灯火を振って、作戦開始の合図をさせた。小さな明かりがユラユラと振り返され、突入部隊は向きを変えて王城に繋がる水路へと入っていった。

 ホルエムたちとはここから別行動だ。突入部隊が全て水路に消えたのを見届け、フィルは船員たちに帆を畳んで錨を下ろすよう指示した。


 竜人姿のリネアは打合せ通り、メンフィスの様子を俯瞰できる、地上50メートルほどの空中を飛んでいる。ここから弾着位置を確認し、フィルに伝えるのだ。


「さて…やろうか」

 フィルは、少しづつ明るくなり始めた東の空を背にしたメネス王城のシルエットを見つめ、小さくつぶやいた。

次回予定「艦砲射撃 2」

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