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傾国狐のまつりごと-食われて始まる建国物語-  作者: つね
 第4章 神話の正体
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カリュブの殲滅戦 2

ネウト軍を引き付けるメリシャたちのもとにやってきたのは…?

「メリシャ様、リネア様が来られました」

「軍議の途中に、お邪魔いたします」

 シェシに続いて入ってきたリネアは、竜人姿だった。

 

 アイヘブとウゼルはサッと頭を下げ、メリシャはリネアの側に駆け寄った。


「リネア、待ってたよ」

「メリシャ、皆様、別動隊の状況をお知らせに来ました」

 にこりと微笑んでリネアは言った。


 ネウト側に見つからないよう、日が落ちるのを待って、大河を航行する弩砲戦艦から飛び立ち、ここまで飛んできたのである。


「本日、別動隊はネウト軍の船団を打ち破り、全船無事にメンフィスに向けて航行中です。予定通り、明日の夜明けを期して、ホルエム様たちの部隊がメネス王城に突入します」


「「おぉ…!」」

 アイヘブとウゼルが揃って声を上げた。


「フィルが造った戦艦は役に立ったの?」

「もちろんですよ。20隻の敵船を相手に1隻で戦い、17隻を撃破しました。3隻は逃がしましたが、もう反撃はないでしょう」


「なんと…フィル殿が敵兵を討ったのですか?」

 どうやらアイヘブは、白兵戦でフィルが敵兵を倒したと思っているようだ。


「いいえ。白兵戦は起こらず、バリスタで火矢を打ち込み、炎上させたのです。フィル様は戦闘の指揮は執られましたが、ご自身では戦われませんでしたよ」


「まさか、そんなことが…」

 飛び道具で軍船を撃破するなど、この世界の水上戦の常識では想像もよらぬことだ。


 正直言うと、バリスタを搭載した戦艦のことをアイヘブはフィルが酔狂で造った玩具おもちゃ程度にしか考えていなかった。戦艦の威力に驚くアイヘブに、リネアは口元に小さく笑みを浮かべる。


「メリシャ、私はこれでフィル様のところに戻りますが、何かフィル様にお伝えすることはありますか?」

 リネアは、メリシャに尋ねた。


「今のところ、作戦どおりネウト軍はこちらに引き付けてる。けど、ネウト軍の数が予想よりだいぶ多いって伝えてほしい。もしかすると、メンフィスにも予想以上に敵兵が残ってるかもしれないから、十分気をつけて」


「わかりました。フィル様とホルエム様に伝えます」

「お願い。別動隊が王城とメンフィスを制圧するまで、ネウト軍はこちらであしらっておくよ」


「お願いします。…メリシャ、皆が強いのは知っていますが、戦は戦です。何が起こるかわかりません。気を付けてください」


「ありがとう。リネアこそ、メンフィスにはアセトがいるかもしれない。フィルと一緒なら大丈夫だとは思うけど、気を付けてね」

「はい。では…」

 リネアはメリシャに微笑むと、竜の翼を広げて夜空へと飛び去っていった。


 そして翌日。メリシャはこれまで防戦一方だった戦いを攻勢に切り替えた。


 敵の数が予想より多いことから、少しくらい押したところで総崩れになって逃げ出すようなことはないだろうと考えたからだ。もちろん、犠牲が多く出るような無理押しをするつもりはなく、ネウト軍の様子を探るのが目的だ。


 それに、連合軍の将兵たちも敵を目の前に防戦一方では鬱憤が溜まるというもの。そろそろ一度発散させておいた方が良い。アイヘブとウゼルも、張り切って自軍の兵たちに指示を出していた。


 連合軍がこの場所に陣を敷いたのは、概ね平坦な地形のカリュブ平原の中で、唯一の小高い丘があったからだ。高さはせいぜい20メートルほどだが、平原全体を俯瞰することができる。


 その丘の麓に、連合軍のほぼ全軍が並んでいた。

 ヒクソス軍の重装歩兵を中央正面に配置し、両翼にメネス軍の軽歩兵、その後方からヒクソス・メネス混成の弓兵隊が援護、メネス軍の騎兵と戦車が遊撃として機会を見て側面から仕掛ける。


 丘の上のメリシャの本陣には、直轄軍団の古参兵から選抜した護衛兵50が守備につき、前線との伝令を務める斥候兵数名が控えていた。

 対するネウト軍だが、メネス軍と同様、その大半は軽歩兵のように見えた。騎兵や戦車の姿は、少なくともメリシャが見ている範囲にはいない。


 リネアが伝えてくれた予定どおりなら、すでにホルエムたちはメネスの王城に攻め込んでいるはずだが、ネウト軍に特に動きがないところを見ると、その知らせはまだ届いていないようだ。

「カリュブの殲滅戦 3」

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