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傾国狐のまつりごと-食われて始まる建国物語-  作者: つね
 第4章 神話の正体
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弩砲戦艦 3

戦う前から敵の兵力をできる限り減らす方法とは。

「こちらの強み…ですか?」

 ハトラは、やや首を傾げながら聞き返した。


 メネス軍の兵力は、王国軍の主力だった約4千。ヒクソス軍も増強した王直轄の国軍約4千、これらが連合した計8千である。

 対するネウト軍の総兵力は定かではないが、メンフィスの南の地域を領土とする州候たちがネウト側で参戦すれば、通常1万から2万の兵力を動員できるだろう。


 しかし、今は冬季の終わり。

 比較的温暖な気候と毎年夏季に起こる大河イテルの洪水のため、この地では農産物の栽培は冬季から夏季のはじめにかけて行われる。先年の大河の洪水の後に畑を整備して作付けし、育てた作物を今年の洪水が来る前に収穫するのだ。


 今回のネウト戦に当たり、この時期の出陣を提案したのはヒクソス側だった。ヒクソス軍の助力を得たいメネス側としては、了承はしたものの、彼らにとってこの時期の出陣は違和感があるものだった。

 先年のメネス戦役でもそうだったように、この地での戦争は、農閑期となる大河イテルの洪水に合わせて行われる事が多い。人口の多くを占める農民の仕事が無くなり、兵士としての徴用がしやすいからだ。


 だが、今は農民にとっては繁忙期。本来ならば互いに戦争を避ける時期である。


「ネウト軍が一番兵力を集めにくいのは、この時期じゃない?」

「なるほど、そういうことか…」

 納得したように声を漏らしたのはアイヘブだった。


「将軍、どういう意味でしょうか?」

「宰相殿も、先年のヒクソス戦で、予定より戦が長引いたことで、我らが農民を帰還させなくてはならない事態となったのはご存知と思うが?」

「えぇ」


「同じように、収穫期に農民を徴用することは難しい。無理に徴用すれば収穫量が落ち、国にとっては大きな痛手になる。だから、この時期の戦を避けるのがこれまでの常識だった。だが今回に限って、それは我らに関係ない。敵だけが一方的に兵力不足に苦しむことになる」


「ハトラ、今回出陣するのは、メネス軍もヒクソス軍も全てが職業兵だ。農民を徴用してはいないから、収穫期も関係ない。だが、旧来の兵制を敷く州候たちはどうかな?」

「なるほど」

 ホルエムの補足にハトラも納得する。


 州候たちは、それほど大勢の職業兵を持っていない。メンフィスに駐留する南部の軍も似たようなものだろう。常備軍の維持にはとにかく金がかかる。かつての帝国だってそうだった。精強な常備軍を持っていたエルフォリア家のほうが珍しいのだ。

 戦が起こるとなれば、農民を徴用して必要な兵力を揃えるのが当たり前。メンフィス奪取のために動員されていた南部の兵たちも、かなりの数が故郷に戻っているはずだ。


「今回の戦では、まずメンフィスを取り返すことに全力を尽くす。メンフィスさえ奪還すれば、戦場に出ているネウト軍は帰る場所を失って孤立することなるから、降伏もさせやすくなるでしょう。指揮官たちはアセトの影響を受けているかもしれないけど、降伏すれば命は助けると宣伝して、末端から崩していけばいい」


「なるほど、そうして犠牲を減らすわけだな」

「えぇ。アセトに魅了されている州候たちも、アセトをメンフィスから追い出せば、元のようにメネス側に味方してくれるでしょう。それで下メネスの範囲の領土は取り返せる。そこまでを当面の目標にしたいんだけど、それでいい?」

 メリシャの言葉に、ヒクソスとメネス双方の全員が頷いた。


「ホルエム、これは本来、ホルエムが言わなきゃいけないんだからね?」

「…う」

 ぼそりと言ったフィルに、ホルエムが小さく呻き、ハトラが申し訳なさそうにメリシャに頭を下げる。その後、会議は具体の作戦に関する話に移り、両軍の動きや連携の方法を確認して解散となった。


 メリシャとフィルが、ヒクソス一行のために用意された部屋に戻ると、大刀を手にしたフルリが門番よろしく部屋の前に立っていた。


「ただいま」

「お帰りなせぇやし。会議はいかがだったでやすか?」

「うん、特に問題なかったよ…リネアとシェシは中にいる?」

「へい、どうぞ」

  

 部屋に入ると、シェシがリネアに革の軽鎧を着付けてもらっているところだった。

次回予定「弩砲戦艦 4」

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