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傾国狐のまつりごと-食われて始まる建国物語-  作者: つね
 第3章 メネス戦役
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停戦交渉 2

停戦の申し出に困惑するメネス軍の陣地にやってきたのは…?

「それもあるけど、たぶん停戦には応じるんじゃないかな。一応根回しはしたし、農民からの徴用兵を動員できる期間が終わるから、戦力は大きく減るでしょうし…アイヘブ将軍もそこまで愚物じゃないと思う。ただ…問題は、その後だよ」

「講和交渉の内容ってこと?」


「そう。こちらも一方的に攻められて、さすがに賠償も求めず、元通りの関係をってわけにはいかない。けど、それをウナス王が認めるかどうか……ウナス王の許可がなければ、ホルエムも勝手に軍を撤退させることはできないと思うし…」

 フィルは軽くため息をつく。


「わたしが煽っておいて何だけど、メネスの財政が厳しいのは、ウナス王の建築事業に莫大な費用が掛かっているせいでもあるんだよ。ヒクソスへの侵攻も、財政を建て直して建築事業をやりたいがために賛成したみたいだし」


「それなのに、賠償金払えなんて言ったら、後先考えずに怒りだしそうだね…」

「えぇ。もうちょっと分別のある王だと思ってたんたげど、見誤ったわ…」

 苦笑するメリシャに、フィルは面倒くさそうな表情を浮べる。


「…演技ではなく、本当に寝首を掻いてきた方が良かったでしょうか…?」

「そ、そんなことないよ。下手に殺すと、国が混乱して話もできなくなっちゃうからね!」

 さらりと真顔で言うリネアに、フィルは少し慌てた。リネアにはそんな物騒なことは言わないで欲しいと切に思う。


「とりあえず、ホルエムがこっちに来るはずだから、停戦まで持ち込んだらホルエムと相談ね。わたし達もメネスの内情をそこまで詳しく知ってるわけじゃないし…」

 フィルは、そう言って手にしたパンをちぎって口に運んだ。


 メネス軍が駐屯する砦に動きがあったのは、それから3日後。それも砦からの進軍ではなく、反対側での動きだった。

 ホルエムが率いる援軍がメンフィスから到着し、入れ替わるように農民からの徴用兵が任を解かれてメネスへと帰還したのである。


 全体としてメネス軍の兵力は5千ほどに減少したが、ホルエムが連れて来た援軍はメンフィスの防備のために残っていた近衛兵まで含む精鋭軍で、戦力としてはむしろ強力。


 その代わり、今のメンフィスはほぼ無防備となっているのだが、それでも今はヒクソス軍への対処が優先と考えたのか、ファラオもケレスも援軍の派遣に異を唱えなかった。

 そして、その援軍にはホルエムの他、交渉役としてファラオ側近のハトラも派遣されていた。


 さらに2日がたち、停戦に同意するか否か、フィルが指定した回答の期限がやってきた。それまで閉ざされていた砦の門は、その日の早朝から開放されていた。


 ヒクソス軍は、守る必要がない森側に城壁や門を設けていなかったのだが、砦を占拠したメネス軍はヒクソス軍に対する防備のために、急いで森と砦を隔てる柵と門を増設した。

 元々あった三方の城壁よりだいぶ見劣りする出来ではあるが、先鋒部隊が全滅したという恐怖もあったのか、メネス軍は人数に物を言わせてわずか1日で造り上げてしまった。


 …ヒクソス側は、もとより砦を攻める気などなかったのだから、完全な無駄作業ではあるのだが…

 

 開かれた門の少し奥に会談場所となる天幕が設置され、そこにアイヘブ将軍と共にホルエム、ハトラがいた。周囲はホルエムが連れて来た護衛の近衛兵が固めている。


 ヒクソスへの返答については、ホルエムが砦に到着してすぐ、アイヘブ将軍や幕僚たちとの会議が行われ、停戦に応じることで結論は出ていた。

 ホルエム率いる援軍が到着したとは言え、ヒクソス軍を短期間で屈服させるのは難しい。アイヘブ自身もそう判断していたから、停戦を受け入れるというホルエムの意見に賛同した。


 先鋒部隊の全滅ばかりでなく、作戦の要であった別動隊によるアヴァリス奇襲が失敗したとあっては、このまま侵攻を強行するのは、無駄な損害を増やすだけの愚策。

 その現状認識において、アイヘブとホルエムの見解は一致していた。


 ただ、問題はメネス王国内部で侵攻失敗の責任を誰が負うのかという点である。

 …戦争中であるにも関わらず、リネアと玉藻がハトラとの会談を行ったのは、まさにこの点について話し合うためであった。


 リネアが帰った後、ハトラはアイヘブを自分たちの陣営に引き入れることにした。停戦とその後の講和にあたり、軍内部の抑えのためにはアイヘブの影響力が必要だからだ。


 ホルエム、ケレス、アイヘブ、三陣営のうち二つが手を組めば、俄然有利になるのは自明。

 周辺国への拡張政策を嫌うホルエムの考えは、軍部の意向とは相容れない部分もあるが、このままでは侵攻失敗の責任を負わされるとあっては、アイヘブも立ち位置を考えなくてはならない。

 ハトラはそこに付け込むことにしたのである。


 結果として、アイヘブはホルエム側に付いて停戦と講和に協力する代わりに、侵攻失敗の責任に関しては、そもそも侵攻を発案したケレスの責任を問うよう、ホルエムからファラオに進言するということになった。

次回予定「停戦交渉 2」

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