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傾国狐のまつりごと-食われて始まる建国物語-  作者: つね
 第3章 メネス戦役
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人食いの森 2

ヒクソス軍の攻撃に、大混乱に陥ったメネス軍は…

 部隊の先頭に近くにいたゼブルは、部隊の最後尾を襲ったバリスタによる射撃を見ていない。後方から逃げてきた兵を掴まえ、突然森の中から槍が飛んできて、何人もの兵を一撃で串刺しにした、とは聞いたものの、詳しい状況が全くわからない。


 敵への攻撃として、手にした槍を投擲することは珍しくない。だが、それが何人もの人間を一度に貫くような威力を持っているわけがない。もしかすると、ヒクソスの砦で、戦象たちが倒されたのと同じ攻撃ではないか…ふと思い至ったものの、だからと言ってそれがどんな攻撃なのか見当もつかない。


 そして、バリスタによる攻撃が、あえて過剰な威力の武器で攻撃することで、恐怖と混乱を引き起こし、メネス軍を狩場に追い込むための策であったことなど、ゼブルには想像すらできなかった。


「敵だ!」

 今度は前方から叫び声が上がった。

 行く先には、大人の身長ほどもある大盾が、街道の幅全てを塞ぐように横に並び、その隙間からは、長い槍の穂先がずらりと突き出している。

 盾に隠れて敵兵の姿は全く見えないが、こちらに切っ先を向けている以上、ヒクソスの軍勢だろう。


 ヒクソスがあんな大盾や長槍を使って戦うことなど、今までになかった。メネス軍にだってあんな部隊は存在しない。いつの間にか築かれていた砦や、メネスのものより長射程の弓といい、ヒクソスの戦い方は、今までとは確実に違う。…ここに至って、ゼブルはヒクソス軍の変化にようやく気付いた。


 メネス軍の行く手を塞いでいたのは、直轄軍団の重装歩兵隊であった。1列10人が道幅一杯に大盾を並べて壁を作っている。そして、重装歩兵の隊列は1列だけではない。大盾を構えた最前列の兵の頭上に2列目の兵が大盾を差し掛け、3列目の兵が2列目の兵の頭上に、4列目の兵が3列目の頭上に、それぞれ大盾を差し掛け、まるで殻に閉じこもる亀のように、がっちりと防御している。


 ザッと足音がして、大盾の隊列が槍を突き出したまま前進を始める。まるで動く城壁が進んでくるかのようだ。近づいて剣を振るおうとしても、長く突き出した長槍の穂先に阻まれ、近づくこともできない。矢を射かけても大盾に弾かれた。


 バステト神殿でメリシャが巫女たちに与えた即席の槍は長さ3mほどだったが、重装歩兵たちが装備している長槍は長さ5mにもなる。当然重さもあり、振り回せるものではないが、腰だめに構えて前進するだけで敵の接近を防ぎ、上から振り下ろして叩くだけで大きな威力を発揮する。


 メネス軍はヒクソスの重装歩兵隊に前を塞がれ、立往生してしまう。だが、混乱したまま後方から押し寄せてくる兵たちは、お構いなしに前にいる者を押しやった。散発的とは言え、後ろからヒクソスの弓兵による攻撃は続いているのだ。彼らは彼らで早く逃げねば射抜かれてしまうと、必死に前を進もうとする。


「待て!押すな!…ぎゃっ!」

 味方に押し出された数人の兵が、槍衾の餌食となった。後ろには必死の形相で押し寄せる味方。前には槍を連ねたヒクソス軍。…間に挟まれた者たちは、必死に人波に逆らって後ろに逃げようとするが、そこにまた樹上から放たれた矢が降り注く。メネス軍は完全に進退窮まり、それが混乱に拍車をかけた。


「森の中へ逃げろ!」

 咄嗟にゼブルは声を上げた。それを聞いたゼブルの近くにいた兵が、ようやく気が付いたように次々に森の中へと駆け込んでいく。それを見た他の兵も次々のその後を追っていく。

 ゼブル自身も馬から飛び降りた。騎乗したままでは森に入れない。屈辱だが馬を捨てて森に逃げ込む。がさりと下草を踏んで森に分け入ったゼブルは、奥へとしばらく進み、木の影に隠れた。

次回予定「人食いの森 3」

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